酒と泪と女と女

こじらせ女子の末路

更新 :

私の友人達(アラフォー以降)は、女性特有のめんどくささが無い。
決断が早くロジカルで、悩みがあっても自分自身で整理することが得意な人が比較的多い。皆、例えストレスが溜まっても、「ガハハハ!と笑いながら山賊みたいに酒を浴びて終了。」というタイプなのだが、年下の友人達、特に恋愛相談に来る若いお嬢さん方は真逆。彼女達は大抵「こじらせ女子」だ。

 

可愛くてスタイルも良く、学歴も高いし仕事もデキる。そんな非の打ちどころのないお嬢さんにいったい何のお悩みが?と思い話を聞いていると、途中から雲行きはバンバン怪しくなり、彼女達の奇行の数々が露わになってくる。その度に、

 

「うわ!めんどくさっ!」

 

と、私は彼氏、もしくはデートのお相手男性の代わりに心の中でシャウトしている。

シャウトしながらも私は、彼女達の事が実はとても好きなのだと自覚している。
友人(山賊)達からは、「こじらせ女子担当」とからかわれたりしているが、多分私の方が彼女達に好意があり、彼女達はそれを察知してくれているのだと思う。

 

もし、私が男性だったら、「自己受容できている女性」ではなく「こじらせ女子」に嵌ってしまう気がする。(面倒な思考を持たない「山賊」はきっと論外だ。)
ま、今生私に好かれても何のメリットも無いし、「こじらせ」は、恋愛、結婚市場においてはデメリットばかりなので早々に卒業をお奨めし、卒業できる方法をアドバイスさせていただいている。

 

何故なら「こじらせ女子」は長く患うと完治しない病だから。
若いうちに自覚し、思考パターン+行動パターンを改めないと、「こじらせおばさん」「こじらせお婆さん」と、健やかに成長を遂げてしまうからである。

 

その生き証人が私の母だ。
彼女は現役の「こじらせ老婆、78歳」である。
子供の頃から自分の母親の事を「面倒くさい。でもどこか可愛い。」と認識していた私は、母の病の名前をずっと探していた気がする。そして、「こじらせ女子」という言葉がはやり出した時に、積年の疑問が晴れてすっきりしたのを覚えている。
子供の頃から「こじらせ女性」と暮らしていたのだから、親近感も湧くというもの。私の「こじらせ女子愛」は当然の感情なのかもしれない。

 

だが、実の子供から言わせてもらえれば、母親がこじらせているという状況は結構ハードであった。
小学校低学年の頃から、母独特の「ネガティブフィルター」を通してみる世界を否定し、

 

「違うよ、お母さん、あの人はそんなこと思っていないよ。気にしないでいいんだよ。」

 

と、言い続けなければならなかったから。

 

自己評価が低くプライドは高い母は、昔から他人とのコミュニケーションが不得手だった。不得手だと自覚しているから余計に自虐コミュニケーションに走り、毎回墓穴を掘りまくっていた。
パターンとしては、相手が話し終える前に被せるように自分の自虐ネタをまくし立て、焦りまくってその場を去る。(超失礼!)
その後に反省して悩み、結果的にはその人に会わないように、毎日行かなければならないスーパーまで倍以上の時間をかけて遠回りしていた。母にはそうやって、遠回りしなければならない道が当時からたくさんあった。今思えば重症だ。

 

私が物心着いた頃には、母は今の私と同じ年ぐらいだったと思うのだが、私は母が化粧をしているのを殆ど見たことが無かった。理由を聞けば、「化粧とは化かす事だから落ち着かない。」「女性っぽくしているなんて思われたくない。」という不思議な持論を繰り返していたのだが、その頑なさや「一体誰に対してなのか?」という対象者が解らない事も含めて、
「自分の女性性に自信が無く、甘えべたで、女性的な演出が苦手」
という「こじらせ女子」の特徴と符号していた。

 

また、私が小学生の頃、同級生よりも身体が大きかったので、クラス委員とか生徒会とか、卒業生代表なんかを任される事が多かったのだが、
「ご近所の目も気になるし、そういう目立つことは辞退してほしい。」
と母に何度か懇願されたことがある。溜息と共に当然無視したが、今振り返ってみて、私自身が小学生の娘を持つ母親になってみて、母の言動の異常さが改めてよく解る。

 

私や妹に対しては愛情深い母だったのだが、そこに世間や他人が絡むと途端に焦り始め、独特のフィルターをかざしてネガティブに走る。特に対象者が男性の場合は顕著であった。そんな母の恋愛事情はどうだったのかと子供の頃に聞いたことがあるのだが、「学校一のかっこいい男性にデートに誘われて行ったものの、10分で逃げ帰って来た。」という予想をうらぎらないこじらせっぷり。

 

彼女がラッキーだったのは、無頓着で無関心な夫(その方が気が休まるのだそう。)と高校の同級生として出会い、時代背景もあって奇跡的にそのまま結婚できたことと、子供を得たこと(他人がとにかくダメなので)である。

 

でも、それでも、結婚も出産も育児も、母を「こじらせ地獄」からは脱却させなかった。
その後、新興宗教めぐりを何年もやっていたが、どの教祖様も、どの教えも、母を助けてはくれなかった。色々と時すでに遅かったのだと思う。

 

母は現在、孫の世話という使命感に突き動かされて頑張って生きてくれてはいるが、相変わらず他人に話しかけられないように街を独特のルートで疾走している。
自虐も、過剰な自意識も現役である。
そして、昔からの口癖、「あー、人間をやめたい。」も定期的に吐いていて、
「そんなこと言わないで。おばあちゃんの事、皆大好きなんだから。」
と、娘二人に諭されている有り様である。

 

私は今、本業でもコミュニケーションを教えたり、このような恋愛指南のブログを書いたりしている訳で、何度も母を「こじらせ地獄」から救いたいと思った訳だが、78年こじらせつづけた女性のパーソナリティは相当強固で、年齢的にも「変わること」そのものが、もうしんどそうだ。

 

思考パターンを変え、行動を変える事ができるのは、やはり若いうちに越したことは無い。自分自身の実感値としても、劇的に変化できるのは30代ぐらいまでではないだろうか?

 

成績優秀で美人だった母(父談)が、ずっと生きづらそうだったから。

 

母の中にいつも、「自分なんて・・・。」と言いながら拗ねている、素直になれない小さな女の子の存在を見続けてきたから。

 

そんな母が、私には心を開いて甘えてくれたから。

 

そして大人になって、子育てを手伝ってもらうという事で今度は私が甘え倒しているから。

 

そのプロセスを踏んだから私はこんな仕事をしているんだろうな、と最近思う。
そして、特に「こじらせてる女性達」を「何とかしたい。」と突き動かされる理由も自分自身で咀嚼できた気がする。

 

それは、彼女達の心の中にいる女の子の姿、
素直になれず拗ねている、小さな小さな女の子の姿が、私には見えるからだと思う。

 

<執事よりお知らせ>
執事の古越です。今回のブログは川崎さんに「魔女の夜会」開催に当たっての、いわゆるエピソード0を綴って頂いたような気がします。その先の話は、6月23日(火)の夜会にて。19時より渋谷の秘密の会場で開催します。小さな女の子を内包している、お嬢さま方のご参加をお待ちしております。

魔女の夜会 -第三夜-
http://peatix.com/event/92042/view

 

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川崎貴子

リントス株式会社代表。経営者歴21年。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女のプロ」の異名を取る。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚。8歳年下のダンサーと2008年に再婚。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(大和書房)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(ベストセラーズ)、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、二村ヒトシとの共著に『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(講談社)等がある。

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