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【著者インタビュー】仲山進也さん「ビジネス書でマンガ『ジャイアントキリング』とコラボした理由」

書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。

 

書籍:『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――『ジャイアントキリング』の流儀』(講談社)

 

著者:仲山 進也(なかやま・しんや)さん

楽天株式会社、楽天大学学長。仲山考材株式会社、代表取締役。
慶応義塾大学卒業後、シャープ株式会社を経て、1999年に社員約20名の楽天株式会社へ移籍。同社の初代ECコンサルタント9人の1人となる。2000年に楽天大学を設立。Eコマースだけでなく、チームづくりや理念づくりまで、幅広く楽天市場出店者3万9千社の成長パートナーとして活動中。04年にJリーグ「ヴィッセル神戸」の経営に参画。07年に楽天で唯一のフェロー風正社員となり、08年には仲山考材株式会社を設立。広く、「人とチームの成長法則」の伝道に注力している。

楽天大学:http://www.rakuten.ne.jp/gold/daigaku/

ブログ:「ヒントのソムリエ 仲山考材」

楽天ブックス

 

 

───本書は、チームビルディングに関するビジネス書ですが、「モーニング」(講談社)で連載されているサッカーマンガ『ジャイアントキリング』(ツジトモ/原案・取材協力 綱本将也)を事例として展開されていくのがとても興味深く、新鮮でした。

今回、なぜ、このマンガを使った構成を考えられたのですか?

 

仲山進也さん(以下、敬称略):チームづくりを語るときに、マンガをケーススタディとして使うこと自体に、すごく大きなメリットがあるんです。

というのも、以前、日本の大学のMBAで、ケースに楽天が取り上げられているものを読ませてもらったことがあります。

書かれていることは正しいのですが、「書かれていないことで重要なことがたくさんあるな」と強く感じ、“ケーススタディの限界”を知りました。

その点、マンガだと「書かれていないことは起こっていない」ので、実はマンガのケーススタディというのは、共有しやすさでは最高の素材だと気づいたのです。

また、本書のメインテーマであるチームづくりの事例となると、やはり「どんなキャラクターのメンバーがいて、それぞれの関係性はどうなっていて…といった細かいところまでわからないと、うまく伝わりません。

そういう意味で『ジャイアントキリング』という素晴らしい「チームづくりの事例」と出会えたのは運命でした。

ちなみに、『ジャイアントキリング』との出会いは、突然やってきました。

友人から「チームづくりを語るなら必読でしょ」というメッセージとともに、段ボールで送られてきたのです。本書で詳しく書いています!

 

───仲山さんは楽天大学で学長をされていますが、お仕事の内容を簡単にご説明ください。

また、そこでのご経験がどのように今回の企画に生かされているかもお話しいただけますか?

 

仲山:私の仕事は、ネットショップ経営者・運営者を応援することです。本書の内容は、楽天大学の「チームビルディングプログラム」がベースになっています。

背景としては、ネットショップが軌道に乗ると、一人で始めた事業が気づけば5人、10人、30人、100人……とスタッフが増えて、「売り方」よりも「人の問題」に悩む経営者・店長さんが増えます。

その一方で、私は自分が所属する20人の会社が数年で数千人になるという現場にいて「あらゆる組織の成長痛を実体験したこと」が強みなので、それをうまく伝えられる方法はないかと考えていました。

5年前にチームビルディングファシリテーターの長尾彰氏と出会い、「チームづくり観」がピッタリで意気投合して、そのご縁で共同開発したのが「チームビルディングプログラム」です。

私のプロフィール上、よく「ネットショップ向けの内容でしょ?」と思われがちなのですが、ビジネス・スポーツだけでなく夫婦や家族まで含めた「すべてのチームに普遍的な成長法則」について扱っているのが特長です。

 

───本書のタイトルにある、「今いるメンバーで大金星を挙げるチーム」とは、どのようなチーム・組織のことでしょうか?

 

仲山:寄せ集めの「グループ」から、ホンモノの「チーム」になるための成長ステージを昇った組織のことです。

本書では、チームの成長法則を「フォーミング(形成期)」→「ストーミング(混乱期)」→「ノーミング(規範期)」→「トランスフォーミング(変態期)」という4段階に分けて解説しています。

この考え方自体は、ブルース・タックマンという心理学者の理論をベースにアレンジを加えたものです。

今回は、実用性を高めるために、「ストーミング(混乱期)」に重点を置いています。

というのも、日本人は、衝突や混乱を悪いことと捉えがちで、「空気を読んで、言いたいことは飲み込みつつリーダーから指示されたとおりにやる」という行動を取る傾向があります。

実は、それだと「チーム」はできていきません。

チームになるためには「ストーミング(混乱期)」を経ることが必要不可欠です。

ちなみに、『ジャイアントキリング』では、主人公の達海監督が、ことあるごとに選手たちの間に混乱を巻き起こし、そのたびにチームらしさを増していく過程が描かれています。

世の中の多くの組織は、第一段階の「フォーミング」にとどまっていて力を発揮しきれていないので、「達海のあり方・やり方」を知っておくかどうかで、日々の実践に大きな差が生まれてくるはずです。

 

───『ジャイアントキリング』やサッカーに詳しくない読者にむけて、気をつけられた点や工夫された点はありますか?

 

仲山:原作を読んでいなくてもわかるように、マンガを見開きで豊富に使い、ストーリーの解説を丁寧に共有したり、マンガの登場人物を最小限にとどめるなどの工夫をしてみました。

おかげさまで、「最初はジャイキリファン向けかと思ったけど、私にも役に立つことが多かった」といった感想をたくさんの方からいただいています。

 

───本書はどのような方に読んでほしいと思われますか?

 

仲山:本書のコンセプトとしては、「今いるメンバー」で結果を出さざるを得ない人、なのですが、個人的に特に読んでほしい像がありまして……具体的には、こんな人です。

「リーダーとは、“チームをひっぱっていくべき存在”と思っている、元スタープレイヤー。

現メンバーのパフォーマンスに満足できず、職場では不機嫌になりがち。

そのため、メンバーは萎縮してしまっている。

とはいえ、スター選手をつれてくることはできず、右腕もなかなか育たない。

結局、自分で仕事を抱えて、負荷が大きくなってきている。

自分が求めるレベルには誰もついてこられず、どうやら自分はリーダーとしてチームを引っ張るのが向いていないと思っている。

でも、本当は、ジャイアントキリングを起こせるチームをつくりたい」。

今まさに、「それ、私だ!」と思った人はすぐに読んでほしいですね(笑)

 

───本書の発売後、周囲やネット上などで、どんな反響がありましたか?

印象に残る感想や意見などがありましたら、教えてください。

 

仲山:先日、本書を読んでくださった経営者さんから「回し読みはやめて、まとめて買いました!」というメールをいただきました。

どうして回し読みをやめたのか尋ねたら、

 

(1)自分が皆と一緒にタイムリーに内容を共有したい素晴らしい内容だったので。一緒に共感できないと大金星はないなと。

(2)手元にあるといつでも読み返せるから。悩んだら読み返したいと思っています。

(3)本のあとがきに、スタッフと皆で読んでね、と確か書いてあって、その通りだと思いました。読んだ後が重要になりそう。

 

というお返事がきました。

リーダーが自分だけ勉強して知識を増やしていくと、メンバーとの意識の格差がどんどん大きくなっていって、「どうしてみんなはこんなことにも気づいてくれないのだろう」とムダに悩みが深くなったりしがちです。

チームになるには、「お互いが見えているものを近づけること」が大事なので、本を読んで「これをどうみんなに伝えようか」と悩むくらいなら、皆で読み合わせミーティングを開くのがおすすめです。

 

───ご自身の原稿内容を多くの方に理解していただくために、ご執筆の際に注意していること、気をつけていることはありますか?

 

仲山:「中学生が読んでもわかるように」ということは意識しています。

あとは、よく出版業界の方から「ビジネス書にしては内容が盛り込み過ぎ」と言われるのですが、読んでくださった方に「内容が全部つながっていて、体系的にわかったのがよかった」と思っていただけるように工夫しているつもりです。

「俯瞰」とか「体系」が好きみたいです。

 

───企画のテーマを考えるうえで、どんなことをヒントにされていますか?

 

仲山:私の場合は、いつも一緒に過ごさせていただいている経営者さんやネットショップ店長さんたちがいて、実際に会ったりFacebookでやりとりしたりしながら、日常的に「気分の移り変わり」「問題意識の移り変わり」を時流の変化として感じ取るようにしています。

 

───ブログやメルマガ、TwitterやFacebook、そしてセミナーや講演など、考えを発表する媒体や場はどんどん増えていると思いますが、書籍を出版することの意味や価値、効果などについて、仲山さんはどのようにお考えですか?

また、今後はどんなテーマでのご執筆をお考えですか?

 

仲山:書籍の場合は、やはり圧倒的にコンテンツのボリュームが大きいので、身を削る思いをしなければいけない分、できあがったことによる「流れの変化」も大きいです。

具体的に私の場合は、本を読んでくださった、自分よりもステージの高い「師匠クラス」の方々が、「仲山くん、なんか一緒にやらない?」と声をかけてくださることがとても多いです。

そこから新しいコラボプロジェクトが始まるので、仕事が楽しくてたまりません。

最近は、社内のメンバーにとどまらず、「顧客や取引先と一緒にプロジェクトチームをつくって事を成し遂げていく」ような、新しいスタイルの商売を研究しているところです。

ワクワクするような面白いビジョンを掲げて、「いいね、俺もメンバーに入れてよ」と様々な能力を持った仲間が集まってきて、そのメンバーがチームになることで新しい価値を生み出せるようになる。

そんな仕事のスタイルを構築したいと思っています。

いまのところ、チームビルディングとマーケティングが融合した“チームビルディングマーケティング”と呼んでいるのですが、そのあたりのテーマで、何かおもしろいことが書けたらいいな、と思っています。

 

───仲山さん、ありがとうございました!

 

ブログをお読みの皆さんで、本にしたら絶対売れる!!という企画・原稿をお持ちでしたら、弊社あてにご応募ください。

くわしくは企画原稿検討の要項をご覧ください。検討させていただきます。

ご意見・ご感想は(info@appleseed.co.jp)までお願いいたします。

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鬼塚忠

アップルシード・エージェンシー代表。大学在学中に英国留学し、卒業後は働きながら、4年間で世界40か国を巡る。帰国後、海外の本を日本に紹介する仕事を経て、独立。「作家のエージェント」として、多くの才能を発掘している。自身でも小説を執筆し、著書に『Little DJ』『カルテット!』『花いくさ』『風の色』等がある。

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