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【著者インタビュー】佐藤達郎さん「日本の働き方を変えたい!――ツイッターでのつぶやきが書籍化に繋がった」

書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。

 

書籍:『社畜もフリーもイヤな僕たちが目指す第三の働き方』(あさ出版)

社畜もフリーもイヤな僕たちが目指す第三の働き方
佐藤 達郎
あさ出版
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著者:佐藤 達郎さん

一橋大学卒業後、1981年にアサツーディ・ケイに入社。コピーライターからクリエイティブ・ディレクターに。 その後、クリエイティブ計画局長、クリエイティブ戦略本部長として約200名のクリエイティブ部門の人事・組織・研修・ビジョン策定を担当。 2009年に博報堂DYメディアパートナーズに転職し、エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターとして勤務。2011年4月より多摩美術大学教授に。広告論・マーケティング論・メディア論を担当。 同時に、コミュニケーション・ラボ代表として、コミュニケーション・コンサルタントや、クリエイティブ・ディレクターとしても活躍。

コミュニケーション・ラボ 佐藤達郎オフィシャルウェブサイト

 

 

 

───佐藤さんはこれまで多くのビジネス書を出版されています。

そもそもビジネス書を出版されるきっかけは何でしたか?

 

佐藤達郎さん(以下、敬称略):最初は広告関係の本、『教えて!カンヌ国際広告祭』(アスキー新書)を書いて出版しました。

一方で僕自身、広告の仕事で学んだことを自分自身の実生活(広告の仕事以外)に役立ててきたので、そのことを皆さんにもお伝えして役に立ててもらえたらいいな、と考えたのです。

そこで、一冊目からエージェントをお願いしていたアップルシードエージェンシーさんとその辺を話して打合せをしながら企画書にして、何冊かの本を出版することになりました。

アイデアの選び方だったり、プレゼン術・説明術だったり、リーダー術だったり。

それらはみな、広告の仕事を通じて自分が悪戦苦闘しながら学び、培ってきたものを、他の職種の人にも役立ててもらえるように書いたものです。

 

───そのなかで本書を執筆されようと思われた経緯を教えてください。

 

佐藤:それまでの本は、まず企画書を作ってエージェントが編集者を見つけてきてくれて執筆が始まる、というプロセスだったのですが、本書はちょっと変わった経緯で執筆することになりました。

そもそも“働き方”については、数年前、会社員だった頃から考えていました。自分自身のことを考え、そして周りの友人知人を見るにつけ、日本の働き方は変わるべきだ、と思っていたのです。

そして『モジュール型ワーキング』というのを思いつき、ブログに書いたり人に話したりしていたんです。

たまたま当時まだ有名ではなかった安藤美冬さんと知り合ってその話をしたところ、とても共感してくれて。彼女は文章やセミナーでも、「佐藤達郎さんが言っているモジュール型ワーキング」に言及してくれていました。

それで、去年また、その「日本の働き方は変わるべきだ」という想いを強く持った時があり、ツイッターでつぶやいたのです。

「働き方について言いたいこと、書きたいことがある。どこかに場はないか」といった趣旨の。

それを美冬さんが読んでいて、当時あった彼女の有料メルマガでインタビューをしてくれました。

たまたまそれを読んでいた編集者の方が、「佐藤さんの働き方についての考えに興味があるので本にしてみませんか」と連絡をくれて、本書の執筆が始まりました。

 

───本書では、第三の働き方として時間、やりがい、収入を自由に組み合わせる「モジュール型ワーキング」が紹介されていました。

あらためて、モジュール型ワーキングについて簡単に教えていただけますでしょうか?

 

佐藤:仕事を“モジュール(構成要素=働き口)”と呼び、モジュールA、モジュールB、モジュールC、モジュールDというようにそれらを組み合わせ、同時並行的に進めて行く働き方を『モジュール型ワーキング』と呼んでいます。

複数のモジュール(働き口)を持つことで、時間、やりがい、収入をなるべく自由に組み合わせ、全体としての職業人生をより良いものにしていこうというのが、その意図です。

今の時代、「会社員」も「独立・起業」も大変に厳しい。

選択肢となり得る「第三の働き方」として紹介しました。

 

───モジュール型ワーキングのような働き方は、一見、特別なスキルや経験が必要なのでは?、と考える人も多いと思います。

そういった読者のために、内容や見せ方などで工夫された点があれば教えてください。

 

佐藤:もっとも大切なのは、「職業人生を自分自身でプロデュースする」ということだと思います。つまり、「自分らしく働くことができる」道を模索する、ということです。

そういう意味でモジュール型ワーキングは、結果的には、100人目指す人がいれば100通りのやり方が考えられる。

ただ、これから目指す人が参考にしやすいように、4つのタイプに大別し、それぞれの実践者にインタビューをしました。「特別なスキルや経験がない」人でも、十分に参考にしていただける内容になったと思います。

また、モジュール型ワーキングを目指そうと思った方が「自分なりの」働き方を見つけるサポートとして、ワークシートも充実させました。

 

───最終章では、“仕事のやりがい”に対する考え方や、コミュニティの作り方など、モジュール型ワーキングを実践していく上で大切なことや注意点がまとまっていました。

そのなかで、佐藤さんが一番大切だと思われるポイントは何ですか?

 

佐藤:僕自身は、人生は「総合点」だと思っています。そして、投入する時間量からしても、人のアイデンティティとの関係からしても、働くことは生きることだと思います。

だから「働き方」も総合的に考えた方が良いと思っていて、そういう意味で最終章を書きました。

そうですね、でも、一番大切なことをひとつ挙げるとしたら、「自分自身で選択する」、つまり「職業人生を自分自身の手に取り戻す」ことだと思います。

 

───本書執筆にあたり、内容の構成や文章の書き方など、何か苦労されたことはありますか?

 

佐藤:今回はそんなに苦労した記憶はないです。しいて言えば、自分としては初めて「取材して書く」パーツを1章設けたので、そこの進行には気を使いました。

でも、やってみて、「取材して書く」ことは自分としても発見があり、とても楽しかったです。またやりたいなぁ、と思います。

 

───本書執筆にあたり、編集者やエージェントからはどんなアドバイスがありましたか?

 

佐藤:今回は「出版企画書」ができあがる前に編集者が入りました。なので、書籍としてのコンセプトや章立てまで、私とエージェントと編集者の3人でブレストする形で進めました。

編集の方は20代の方で「自分自身が読みたいと思ったから、本にしたいと思った」と言っていて、「自分たちの世代に読んでもらえるように」という視点で、多くのアドバイスをしてもらいました。

エージェントに関して言えば、今回は今までと少し関わり方が違ったわけですが、とくに「取材して書く」部分の進行などで、多くのアドバイスをもらいました。

 

───本書はどのような方に読んでほしいと思われますか?

 

佐藤:「より良い働き方をしたい」すべての人です。「働き方に不安があったり悩んでいたりする」すべての人です。出版としてのターゲットは20代の方をメインにしていますが、他の年代の方にも読んでほしい。

働くことは大変なことですが、喜びをもたらすことでもあるし、人生の基本となることです。それなのに、今の日本の働き方は決して上手くいっているとは言えないと思うので。

何かヒントをつかんで主体的に考え行動しないと、「幸福に働く」ことは難しいと思います。

 

───本書の発売後、周囲やネット上などで、どんな反響がありましたか?

印象に残る感想や意見などがありましたら、教えてください。

 

佐藤:「生き方そのものを見直す良いきっかけになった」とか「著者の言うように、身軽に動いてできることからチャレンジしてみようという気になりました」など、当初こちらが想定していた20代~30代の方からの反響が多いですね。

なかには、「50代の私としては、もうちょっと早くこの本に出会っていたら」という感想をくれた方や、やはり40代~50代の方で、プロローグを読んで「痛いくらいに言い当てられてる」と感じたという方もいましたね。

 

───佐藤さんは原稿内容を多くの方に理解していただくために、ご執筆の際に注意していること、気をつけていることはありますか?

 

佐藤:僕が思うには、「読みやすい文章」、「頭に入ってきやすい文章」というのは、かたすぎず柔らかすぎず、が大事だと思っています。

その点は、文章のリズムも含めて気をつけています。おかげさまで「読みやすい」という感想は、よくいただきます。

内容としては、「自分独自の気づき」を大事にしています。ま、極端なことを言えば、「独自の気づき」「独自の発見」がなければ、本を書く意味もないわけですから。

「自分独自の気づき」を、多くの人に理解してもらうために、読みやすさだったり具体例だったり箇条書きだったり、さまざまな工夫をしています。

そうですね、まとめて言うと「歯ごたえがある」が「読みやすい」、「読みやすい」が「歯ごたえがある」といった感じでしょうか。

 

───企画のテーマを考えるうえで、どんなことをヒントにされていますか?

 

佐藤:企画のテーマはたくさんありますし、次から次へと湧いてきます。毎日、生きて、話して、仕事をして、テレビを見て、本を読んでいると、何かに「気づく」し、何かを「思う」ので。

その中でも、ソーシャル・メディアは、人の考えていることを知ったり、自分の思ったことを小出しにしてみたり、「テーマ開発」にはかなり貢献してくれています。

あと、人と話すことも重要ですね。かたい「打合せ」に限らず、食事しながら、ビール飲みながらでも。誰かと語り合うことで、ちょっとした思いつきが深まっていきますし、また新たなテーマも浮き上がってきます。

 

───また、次回はどんなテーマについて執筆したいと思われていますか?

 

佐藤:「広告という仕事で培ったスキルを、別の領域のすべての人に」という方向は、今後とも続けていくと思います。

それと、そろそろ、広告やマーケティング自体を扱った本も書こうかな、という気持ちもあります。

あと、「子育て本」も、書きたいな。高1の男の子と小5の女の子を育てているのですが、本当に面白いし、いろいろと思うところがあるので。

 

───最後になりますが、ビジネス書作家を目指すメルマガ読者のみなさまに、メッセージをお願いします。

 

佐藤:まだ書かれてない方に対しては、ぜひチャレンジを続けて、とにかく「1冊、書く」ことを実現してほしいと思います。著書を持つことには、良いことがたくさんあると思うので。

そのためには、

1.自分の中に常にテーマを持つこと。

何かに「気づく」ことを、常に意識するということですね。

2.少しずつ形にしましょう。

ブログでも、場合によってはツイッターでも良いかもしれません。発想を頭の中だけで終わりにしないことですね。

3.相談相手を持って、企画書にする。

僕の場合でいえば、エージェントの人と話すのが基本になります。

4.そして1冊、通して書く。

短い文章はセンスや才能だが、本を1冊書くのは体力の問題だ。そういう趣旨のことを、ある有名作家も言ってます。「書き通すことができる」というのも、ビジネス書作家に必要な資質だと思います。

 

───佐藤さん、ありがとうございました!

 

ブログをお読みの皆さんで、本にしたら絶対売れる!!という企画・原稿をお持ちでしたら、弊社あてにご応募ください。

くわしくは企画原稿検討の要項をご覧ください。検討させていただきます。

ご意見・ご感想は(info@appleseed.co.jp)までお願いいたします。

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鬼塚忠

アップルシード・エージェンシー代表。大学在学中に英国留学し、卒業後は働きながら、4年間で世界40か国を巡る。帰国後、海外の本を日本に紹介する仕事を経て、独立。「作家のエージェント」として、多くの才能を発掘している。自身でも小説を執筆し、著書に『Little DJ』『カルテット!』『花いくさ』『風の色』等がある。

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