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【著者インタビュー】殿村美樹さん「”うどん県”や”ひこにゃん”。国民的ブームの仕掛け人に聞くPRの秘訣」

書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。

 

書籍:『ブームをつくる 人がみずから動く仕組み』(集英社新書)

ブームをつくる 人がみずから動く仕組み (集英社新書)
集英社 (2016-03-18)
売り上げランキング: 30,858

 

著者:殿村 美樹(とのむら みき)さん

PRプロデューサー。株式会社TMオフィス代表取締役。
同志社大学大学院ビジネス研究科「地域ブランド戦略」教員。関西大学社会学部「広報論」講師。
「うどん県」や「ひこにゃん」など、これまでに地方PRを二五〇〇件以上手掛ける。
著書に『テレビが飛びつくPR―予算9万円で国民的ブームを起こす方法』(ダイヤモンド社)、
『売れないものを売る ズラしの手法』(青春出版社)、『どんな人でも買わずにはいられなくなる「欲望直撃」のしかけ』(すばる舎)など。

株式会社TMオフィス
http://www.tm-office.co.jp/index.html

 

 

───殿村さんは、「うどん県」や「ひこにゃん」、年末の風物詩「今年の漢字」など数多くのPRを成功させてきた「国民的ブームの仕掛け人」でいらっしゃいます。

本書ではPRの目標を「人が自ら動く仕組みづくり」とし「ムーブメント思考」が紹介されています。

この「ムーブメント思考」の重要性に気づかれたきっかけについて教えてください。

 

殿村美樹さん(以下、敬称略):私は約30年間、地方のPRにこだわってきました。

地方は、さまざまな状況にある老若男女が共存している生活の場であり、企業のようにトップのビジョンに従って組織的に動くことはあり得ません。たとえ、地方のトップにあたる知事や市長が、企業のトップと同じようにビジョンを示して、住民に従うように促したとしても、「税金を払っているから」と、逆に住民側からサービスを求めてしまいます。

そんな状況で必要となるのが「ムーブメント思考」です。この特徴を一言で表すなら「お金を使わず、いつのまにか、大勢の人の心を動かし、ムーブメントができる仕組み」です。

 

───時間や予算などの条件が限られている中で、PRのカギを握る、第二の「ひこにゃん」を発見するには、日頃からどんなことを心がければよいのでしょうか?

 

殿村:現在通用している価値観で目の前の勝負に「すぐに勝とう」と思わずに、PRの一番の目的は何なのか見極めて、常識とは少し異なる視点で見る練習をすることです。

そうすれば、PRを盛り立ててくれる存在が自然と見えてきます。

 

───この本に書かれている「クライアントを納得させるプレゼン術」はPRに携わる方はもちろん、様々な職種の方にとって非常に役立つ内容です。

周囲の人の心を動かし、協力者を増やしたいと考える読者に対して、どんな思いを込めて本書を書かれたのでしょうか?

また、そんな読者に一番伝えたいメッセージについてもお聞かせください。

 

殿村:一般的に「ブームをつくる」ことは、PRに精通した専門家でないとできないノウハウのように思われています。ですが、本当はその仕組みの本質がわかれば、どんな職種の人でも試せることや、営業やプレゼン、社内でのコミュニケーションなど、さまざまな場面で役立つノウハウを使っているということを伝えたいと思いました。

 

───書籍企画を検討するにあたり、また執筆の際に、何か苦労されたことはありますか?

その際、編集者やエージェントからはどんなアドバイスがありましたか?

 

殿村:筆力に最も苦労しました。新書は単行本と違って、幅広い読者層を惹きつけるような高度な筆力が求められます。

私はこれまで3冊、本を書かせていただいた経験もあり、ある程度書けると思っていましたが、執筆当初は新書のレベルに達しているとは言えるものではありませんでした。

そこで編集者の金井田さんから卓越した筆力を持つライター、田中茂朗さんをご紹介いただきました。田中さんの手にかかると私が書きたかったことが見事な文章に変身し、とても感動しました。

また、エージェントの宮原さんからの励ましも非常に心強かったですね。

 

───類書と差別化するため、こだわった点や工夫された点がございましたら教えてください。

 

殿村:当初は「人を動かす」というタイトルが最もふさわしく思えたのですが、世界のベストセラーに同タイトルの名著があります。そこで、私がいつも重視している「人がみずから動く」ことをサブタイトルに加えて、最も訴えたいメッセージが伝わるように工夫を凝らしました。

 

───本書の発売後、周囲やネット上などで、どんな反響がありましたか? 印象に残る感想や意見などがありましたら、教えてください。

 

殿村:私はPRの専門家なので刊行前からこの本のPR戦略を綿密に練りました。そして出版直前のテレビ朝日「たけしのTVタックル」への出演を皮切りに、独自のPRプロモーションを駆使し、継続的なメディア露出を約3か月間続けました。それが功を奏して、アマゾンの広告・宣伝カテゴリと集英社新書カテゴリで「ベストセラー1位」が数週間続き、ネット書店では売り切れ期間が1か月以上も続きました。

しかしリアル書店はまったく逆の反応で、早々に店頭から撤去されてしまいました。不思議に思って独自ルートで原因を調べたところ、最初から「PR専門書」扱いにされ、そのまま「専門書のお決まりルート」に乗ってしまったようです。

リアル書店で「売れる棚」に並べてもうらには、著者の知名度や「賞」など社会的ステイタスが必要だと実感しました。

 

───最後になりますが、著者デビューをめざす読者のみなさまに、メッセージをお願いします。

 

殿村:自分自身と自分の培ってきたノウハウがどれくらいの価値を持って売れるのかを客観視することが最も重要だと思います。出版はビジネスだからです。

特に今は、本がなかなか売れない時代です。芥川賞作家でさえ積極的にテレビ出演して、知名度やキャラクターを自分の力で売っておられます。昔のように「作家だぞ」と偉そうにしていては読者から忘れられてしまう時代なのです。ですので、自分の本を書くだけでなく、いかに売るかを計画し「ビジネスとして儲かる本」という視点で企画を考えてみてはいかがでしょうか。

 

───殿村さん、お忙しいところありがとうございました!

 

ブログをお読みの皆さんで、本にしたら絶対売れる!!という企画・原稿をお持ちでしたら、弊社あてにご応募ください。

くわしくは企画原稿検討の要項をご覧ください。検討させていただきます。

ご意見・ご感想は(info@appleseed.co.jp)までお願いいたします。

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鬼塚忠

アップルシード・エージェンシー代表。大学在学中に英国留学し、卒業後は働きながら、4年間で世界40か国を巡る。帰国後、海外の本を日本に紹介する仕事を経て、独立。「作家のエージェント」として、多くの才能を発掘している。自身でも小説を執筆し、著書に『Little DJ』『カルテット!』『花いくさ』『風の色』等がある。

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