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【編集者インタビュー】酒井圭子さん(実業之日本社)「書くことではなく、読まれることを目的とした文章を書きたいすべての人に」

書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。

 

書籍:「読ませる」ための文章センスが身につく本

「読ませる」ための文章センスが身につく本
奥野 宣之
実業之日本社
売り上げランキング: 175,168

いくら正しくてわかりやすい「明文」でも、読まれなければ意味がない。ちきりんや中島らも、伊集院静、蝶々、三浦しをん、開高健、伊丹十三、野田秀樹……。あのプロたちの「名文」から40の「読ませる」仕掛けを盗めば、あなたの文章も劇的に変わる! 
「つかむ」「のせる」「転がす」「落とす」の4つのステップで、企画書、提案書、案内状、謝罪文、メール、ブログなどでツヤのある文章を書けるセンスが身につきます。

 

編集者:酒井 圭子さん(実業之日本社)

 

 

 

───本書の著者・奥野宣之さんは、これまで31万部のベストセラーになった『情報は1冊のノートにまとめなさい』(Nanaブックス)ほか、多数の著書を出版されています。

あらためて、奥野さんのビジネス書著者としての魅力を教えてください。

 

酒井圭子さん(以下、敬称略):日常の中から問題を発見する「気づき力」、ご自身を追い込んでとことん思考する「熟考力」、それを平易でウィットに富んだ表現に落とし込む「言葉力」の3点です。

ビジネス書の著者という括りを超えた、凄みのある表現者だなあと、惚れ惚れ(?)しました。

また、大ベストセラーをお持ちなのに、とても謙虚で含羞の人という「人間力」も魅力です。

 

───文章の書き方をテーマとした本は数多く出版されているなか、本書を出版されようとお考えになったのはなぜですか?

 

酒井:いわゆる「明文」の書き方を教える書籍が氾濫する傾向に疑問を持っていたことが根底にあります。

主述が明快で、「てにをは」が正しく、短い文章を書くことは確かに大切。ただ、そればかりではなく、もっと豊かで広がりのある文章術を求める読者もいるのではないかと考えていました。

そんなとき本書の企画を伺い、ピピピッときました。

エッセイの名手の文章からテクニックを盗む仕掛けも面白く、奥野さんとエージェントとの最初の打ち合わせで手応えを感じました。

 

───本書では、「読ませる」ための文章テクニックが、「つかむ」「のせる」「転がす」「落とす」という4つの章立てで紹介されていました。

構成や表紙のデザインなど、類書と差別化するために工夫された点を教えてください。

 

酒井:実用書として考えたら、章題はもう少し説明的にするのが王道かもしれません。

ただ、実用書感をあえて払拭し、「つかむ」「のせる」「転がす」「落とす」と3文字で統一する奥野さんのアイデアに乗りました。

見出しも、「わかりやすく伝わるもの7割、ざらりとした違和感を覚えるもの3割」を意識しています。

装幀に関しては、「実用書でありながら、読む要素がふんだんにある」感じが狙いです。装幀家の井上新八さんに、狙いどおりのひと味違った「顔」をつくっていただけました。

 

───酒井さんは日頃から編集者としてプロの文章に関わることが多いと思いますが、本書のなかで酒井さんご自身に役立った文章テクニックをひとつ教えてください。

 

酒井: 「表現のインフレを避ける」というテクニックがイチ推しです。

書籍の見出しでも、「コレはおすすめ」と思うと、どうしても「!」をつけたくなってしまいます。「表現のインフレを避ける!!」というスタイルですね。でも、「山場はひとつ。山場をつくるためには、それ以外は抑制する」「書き手が盛り上がるほど、読み手は冷める」という本書のアドバイスで、自分が考える見出しやコピーがいかに過剰だったかに気づきました。

本書でも見出しで「!」を使っているのは1箇所だけ。それがどこか……ぜひ見つけてください(笑)。

「!」以外でも、「話が徐々に濃くなっていく感じ」を出すための仕掛けなど、カンタンですが効果的なワザが紹介されています。このテクニックは企画書やメールなどのビジネスシーンで効性があるはずです。

 

───本書の制作にあたって、何か苦労されたことはありますか? また、著者の奥野さんに、執筆前や執筆中にアドバイスされたことがあれば教えてください。

 

酒井:苦労なさったのは、私ではなく奥野さんかと……。ご執筆の初期段階で、奥野さんに「ビジネス文書の悪い例・いい例を各項目に入れる」「1項目は5~7ページ内で」という2つのお願いをしました。

そして少し間があき、次に拝受した原稿がとても苦しそうだったんです。行間から奥野さんの息苦しさ、惑いが伝わってきて。

そのとき、「奥野さんの中で、この2点がスッキリされるまでお待ちしています」とお伝えしました。アドバイスではないですが、「産みの苦しみ」の場面で、手を握る存在でいます、という気持ちでした。

 

───奥野さんは、執筆に行き詰まったとき、酒井さんから心あるメッセージをもらえたというエピソードから、信頼できる編集者と組めたことで、通常以上の力を発揮できたとおっしゃっていたのが印象的でした。

編集者として著者の方とコミュニケーションをとる際、酒井さんが大切にしていることを教えてください。

 

酒井:とてもありがたく、光栄です。私も奥野さんとお仕事をさせていただき、「表現者の凄み」を学びました。

著者の方とのコミュニケーションは、「冷静と情熱の間」を意識しています。

黒子として、著者の方のパッションとモチベーションを上げていく。一方で、書籍の受け手である読者の立場に立って冷静に俯瞰する。どちらかに偏らず、この2つのスタンスを意識してコミュニケーションをとることを大事にしています。

 

───本書はどのような方に読んでもらいたいと思われますか?

 

酒井:モノを書くすべての方に。どんな方でも、ビジネス文書、メールはもちろん、ブログ、SNSなど、自分発信の機会をもれなく持っているはずです。

書くことを目的とするのでなく、読まれることを目的とした文章を書くために、本書を活用していただければうれしいです。

 

───普段企画を考える際、どんなことを大事にされていますか?

また、今後手がけてみたいテーマがあれば、教えてください。

 

酒井:よくいわれることですが、「誰のどんな悩みを解決するか」が明確であることを大事に企画を考えたいと思います。

今後のことでいえば、消費の主役となる「シニア世代」の悩みを解決するテーマに関心があります。マネー、終活、介護、家族関係など、問題はさまざまです。書籍から知恵や情報を獲得する世代でもあり、この層に向けた企画を考えていきたいですね。

 

───「一緒に本をつくってみたい」と思う著者はどんな人物ですか?

 

酒井:伝えたい想いを持ち、その想いを実践なさっている方。コンテンツを出し惜しみなさらない方。そして、楽しんでお仕事をなさっている方です。

 

───本作りにエージェントが関わることのメリットにはどのようなことがあると思われますか?

 

酒井:1.思いがけないご縁を結んでくださること。2.本作りの過程で「三者での知恵出し」ができること。3.著者の方のみならず、編集者のよきアドバイザーになっていただけること。この3点の結果として、アウトプットの完成度がグンとあがると思います。

 

───最後になりますが、ビジネス書作家を目指すメルマガ読者のみなさまに、メッセージをお願いします。

 

酒井:ご自身の軸を明確に持ち、ぶれない発信を続けてください。そんな方と、ぜひお仕事をご一緒させていただければうれしいです。

 

───酒井さん、ありがとうございました!

 

ブログをお読みの皆さんで、本にしたら絶対売れる!!という企画・原稿をお持ちでしたら、弊社あてにご応募ください。

くわしくは企画原稿検討の要項をご覧ください。検討させていただきます。

ご意見・ご感想は(info@appleseed.co.jp)までお願いいたします。

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鬼塚忠

アップルシード・エージェンシー代表。大学在学中に英国留学し、卒業後は働きながら、4年間で世界40か国を巡る。帰国後、海外の本を日本に紹介する仕事を経て、独立。「作家のエージェント」として、多くの才能を発掘している。自身でも小説を執筆し、著書に『Little DJ』『カルテット!』『花いくさ』『風の色』等がある。

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