三味線ガールは海を渡る

今が始めどき(かもしれない)習い事としての三味線

三味線という言葉を20代のうちに何万回口にしたでしょうか。もう面倒くさくて、わかる人には「しゃみ」と略して言っています。

申し遅れました、私、鬼龍院花枝と申します。地方の片隅で三味線を細々と続けてきました。高校卒業後、大阪で三味線を修行し、22歳で免除を取得、気がつけば20代の約9割を三味線に費やしてきました。

20代のほとんどを「三味線の師匠(先生)」として過ごした私は、今の20〜40代の皆さんに、是非「三味線を習い事として始めてほしい」と思っております。

今が始めどき(かもしれない)習い事としての三味線の世界へ、「えいっ!」と足を踏み入れられるように、少しお話させて下さい。

 

1、高いのは心の中の”敷居”かも

日本の伝統芸能の習い事は様々ありますが、気軽に始めるのには少し躊躇する理由として挙げられるのが

「敷居が高いように感じる(金銭的な意味もあり)」

ことではないでしょうか。

ですが実は地方でも都心部でも、伝統芸能を安価で気軽に習えるサークルは多く、また公共の施設などではワークショップも開催されています。お稽古スタイルも様々で、先生によっては集団での稽古か個人稽古かも選べるところは多いです。

また、インターネットに明るい先生なら、スカイプなどを使ってのお稽古もされています。「一対一で面と向かって」という印象が強い世界ですが、今は個々の生徒さんの生活スタイルに合わせて指導方法も変化してきています。是非とも心の中の”敷居”を低く、気軽に飛び込んでみて欲しいものです。

2、あなたの”時間”ができる頃、三味線の師匠は”もう”いないかも…?

次に習い事に二の足を踏む理由として、よく耳にしますのが

「今は忙しくて時間がないから、もう少し時間が出来てから始めよう」

ですがこれに対しては、実際に伝統芸能の世界を何年も見つめてきた私からはこう言わせて下さい。「あなたの時間ができる頃、その先生はもう三味線教室をやっていないかもよ?」と。

三味線の先生は女性も多いのですが、女性は結婚などの事情で今住む場所を離れねばならない可能性があります。また三味線教室では生計が成り立たない場合は、やむなく教室をたたむ事もあります。そして、お師匠様の中には現在ご高齢の方も多く、体調のために指導が難しくなる場合もあります。

三味線を始め、伝統芸能の先生は減少傾向にあります。その事実を踏まえた上で「思い立ったが吉日」という古人の言葉を思い出して頂きたいのです。

3、今が一番、三味線をお稽古ごととして習える環境が整っている

伝統芸能を敬遠される理由の中に

「難しいしきたりが多そうで、先生も礼儀に厳しそう」

という声があるということを、私たちは深く受け止めねばなりません。

私もよく先輩方の「厳しいお師匠様列伝」なるお話を聞きましたが、身震いするほどの上下関係と厳しいしきたりの世界でした。ですが、今の先生方はもう分かっていらっしゃいます。「厳しくすると生徒は逃げてしまう。」と。

先生方の指導が優しくなったことに加え、お稽古に必要なものも簡単に揃えられるようになりました。スマホをレコーダー代わりに使え、楽譜は何曲も揃っている、先生は優しい…。

今ほど気軽に始められるお稽古環境が整った時代はなかなかありません。是非この恵まれた”お稽古時代”に三味線を始めようではありませんか。

今あなたが始めることで、三味線そのものの価値が上がる

最後に、「三味線に価値を見出せる世代は、このままでは確実に減少する」という、残念な事実を知っておいて下さい。人口減少と習い事の多様化のダブルパンチで、当然といえば当然のことです。その事実もご理解いただいた上でお稽古ごととしての三味線を始めて下されば幸いです。

ですが、現時点では「習い事としての希少価値が高い」という事実も同時にご理解頂けることと思います。また「伝統芸能は高齢になっても続けやす」く、「人前で披露して間違いなく喜ばれる」大変お得な芸能なのであります。

始める動機は不純でも何でもいいのです。何はさておき、多くの人の目に触れることに意味があり、そして興味を持ってもらわなければ技能は継いでいけはしないのですから。

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鬼龍院 花枝

三味線指導、演奏家。気づけば20代の9割を三味線の指導と演奏に費やし、「三味線を教えている」と自己紹介すれば二度見されることにも慣れてきました。堅苦しさ皆無で三味線の魅力を知ってもらえればと思い、執筆活動もしています。

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