三味線ガールは海を渡る

江戸時代の三味線のポジションとはどのようなものだったのか?

初めて出会った人に、「三味線ってあれだよね、琴だよね?」と言われ、なんと返して良いか分からない…。そんな時代もありました。鬼龍院花枝です。

さて、今では知名度が低くなってしまった三味線ですが、今回は三味線が最も栄えた江戸時代にタイムスリップしてみましょう。江戸時代の三味線のポジションとは?そして習い事としての魅力とはどこにあったのでしょうか…?

 

 

1、現代の習い事の代表的なものといえば…

今も昔も人々が日々の生活の潤いとして続けているものがあります。「習い事」。子供が生まれれば「習い事はどうしようか?」と考えるのは世の親の常ですね。

さて、ケイコとマナブ.netによると2015年の「習っているお稽古ランキング」は、1位水泳、2位英会話、3位ピアノでした。ちなみに「習わせたいお稽古ランキング」では、1位英会話、2位書道、3位水泳でした。圧倒的な人気を誇るのが水泳と英会話です。昨今の国際化の流れを受け、英会話が上位にきているのも頷ける結果です。

そしてどの習い事もおしなべて実用度重視!習いたい・習わせたい理由も「将来に有利なため」という言葉が並びます。どうせ習うのなら学校の授業でも使えるものを、そして子供にとって実用的なものを、と思うのでしょう。

2、今も昔も親心は変わらない…子供に三味線を習わせたかった理由とは?

さて、子供にとって将来有利な習い事をさせたいと思うのが親心ですが、その親心は江戸時代も変わりません。

例えるなら現代の英会話やピアノのように、江戸時代の人気の習い事は三味線だったのです。女児に対して、それもとりわけ関東圏では非常に盛んに習わせていたようです。

将来有利な習い事として三味線…?というのは、些か不思議に感じることかもしれません。その当時三味線が弾けることで高給取りになれた?それとも三味線の師範の資格があれば、食うに困らなかった?…いえいえ、そうではありません。女性に限り、庶民でも一芸に秀でることで、武家に嫁げたり、良縁のきっかけになると考えられていたようです。

3、お琴か?三味線か?当時はどっちが人気だったの?

江戸時代は天下泰平の世が250年以上も続いた、世界的にも珍しい超がつくほどの安定国家でした。そんな時代背景も後押しし、江戸時代には今尚続く習い事の形が作られ、文化として成熟度を上げていった時代であったと言えそうです。三味線もそれにもれず、江戸時代には多くの歌曲が作られ、現代に残っているものもあります。

三味線と並んで日本の伝統楽器に挙げられる琴も、当時の習い事としては人気がありました。ですが、それは格式の高い家での話。師範の免許を取るのにも金銀何分と相場が決まっており、相当なお金がかかっていたようです。そのような背景もあり、お琴は庶民にはちょっぴり気取った習い事、またお金のかかる習い事と認識されていたようです。

4、三味線が弾ける=モテの必須要素だった?!

さて、女児の習い事として三味線を始めるという話をしましたが、三味線は大人になっても習い事としての魅力は尽きなかったようです。

これは諸先輩方から聞いた話ですが、江戸時代当時は三味線が弾ける=モテる!という通説がありました。「男も女も、三味線をやっていたらモテるよ!」といった意味の川柳も読まれていたそうです。ただこの通説が江戸時代から400年以上経ったのこ現代で通用するかは不明ですが…。

若い女性に限らず、大人になってからの手習いとして三味線は人気がありました。「どこの町にも三味線の師匠が一人はいる」と言われたぐらい、メジャーな習い事だったのです。

そういう時代もあったのですね…

大阪天満にある「大阪くらしの今昔館」では、江戸時代の長屋が再現されております。長屋とは今でいうマンションのようなものですね。その一室には三味線の先生が住んでいる…という設定で部屋が作られています。2挺の三味線、壁に掛けられた黒紋付…それらを見ても、三味線という楽器がいかに庶民の生活に根付いていたのかが伺えます。

気軽に始められる習い事として大衆に人気のあった三味線。そのような時代がまた来るのかどうかは分かりませんが、多くの人の目に触れることがその可能性を広げていってくれそうに感じております。

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鬼龍院 花枝

三味線指導、演奏家。気づけば20代の9割を三味線の指導と演奏に費やし、「三味線を教えている」と自己紹介すれば二度見されることにも慣れてきました。堅苦しさ皆無で三味線の魅力を知ってもらえればと思い、執筆活動もしています。

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