インターネットを巡る旅

ウェブライターに求められる価値とは?

前回は、ウェブライターの報酬問題を取り上げました。そこでは「質か量か」といった話もありましたが、原稿を発注するメディア側の運営方針や規模だけによって原稿の単価が決定されるというわけでもありません。

 

メディア側が、ライターにどういった内容の仕事を期待しているのか。その原稿を掲載することで、どういった結果がもたらされるのか。――当然と言えば当然ですが、対価を支払って原稿を発注している以上、そのライターに頼むことで得られる価値・結果といった部分は重要視されており、原稿一本の単価にも反映されています。

 

では、現代の「ライターに求められる価値」とは、いったい何を指すのでしょうか。

 

高単価原稿においては、「バズ」こそが正義

ソーシャルメディアの使い方や時事ネタを取り上げているメディア「kakeru」の編集長である江藤美帆さんは、ご自身の個人ブログで次のように書いています。

 

ズバリ、今の時代にどんなライターになら紙媒体並み(またはそれ以上)の原稿料を払いたいと思うか?ということなんですけども…それはもうkakeruの場合はただこの1点のみです。

 

ソーシャル拡散力があるかどうか

 

これに尽きます。

ライターのギャラ問題がバズっているので15年前にライターだった自分のギャラを晒してみる | etomiho.com

 

FacebookやTwitterなどのSNS上で話題となり、広く拡散されることでアクセスを獲得できるかどうか。一口に言ってしまえば「バズるか否か」、それに尽きると断言しているように読めます。

 

加えて、そのためにはそのライター個人の「ファン」がどれだけついているか、質の高い「フォロワー」の数が重要になってくると説明し、そうした「本物のファン」が多いライターには次の2つの要素があると書いています。

 

・純粋にコンテンツが面白い

・打たれ強い

 

 

コンテンツが面白ければそれだけで自然と人が集まりますし、読者の感情を煽るセンセーショナルな賛否両論の話題も同様です。ただし、後者の場合はそうした文章を継続的に書き続ける必要があるため、誹謗中傷にも耐えられる「打たれ強さ」が必須となってくるということでしょう。

 

いずれにせよ、良くも悪くも「人を集める」ライターは重宝されますし、SNS上のフォロワー数などによってそれが可視化されていれば、書き手の信頼性も高まります。「この人が文章を書けば、少なくともこれくらいの人は読むだろう」という想定ができますしね。

 

低単価原稿においては、「質よりも量」(+SEO)

一方、最低限の質はクリアした原稿を大量に書いてもらい、ひとつひとつの記事にSEO対策を施すことで長期的なアクセスを狙うような発注に関しては、ライターの報酬単価が低くなります。

 

こちらも立派な戦略のひとつであり、無名のライターでも積極的に仕事を獲得することができるというメリットがあります。メディア側は案件を安く多く発注し、ライター側は仕事をもらいつつ運良くバズれば名前を売ることもできるという、お互いに得のある関係性とも言えますね。

 

実際、現在有名なライターや編集者の多くは、こうした低単価の仕事から始めて、徐々に仕事内容を広げていったという話もよく聞きます。そういった意味でもこの手法は常套手段であり、王道であると言うことができるでしょう。

 

お互いに使い、使われ、摩耗しないようにするために

ただ、これら2つのタイプの考え方には、それぞれデメリットがあるようにも思います。

 

前者の場合は、極論を言ってしまえばライターとしての「文章力」は必要がありません(正確には、あってもなくてもいい)。とにかく注目されるべくして執筆するため、常に周囲の反応を確かめつつ、話題の中心に近い場所で発信し続ける必要があります。

 

本人のメンタルが強いか、万人にウケる面白い記事を投稿し続けるか、あるいは上記記事のように「本物のファン」を数多く集められ続けていれば、きっと楽しく仕事に励めると思います。

 

ただ、それを戦略的に続けようとすればどんどんと自分の切り売りをする方向へと向かい、精神的に摩耗し憔悴しかねない一面もあります。一発屋の芸人のように振る舞い続けるのも無理があるので、やはりどこかで方針転換は必要となってくるのではないでしょうか。

 

後者の場合は、やはり安く買い叩かれる可能性があるのと、最終的には「運ゲー」になってくる点でしょうか。

 

本業として、何年もずっと安い単価でライターを続けるには無理がありますし、ピンからキリまで数多くの「ウェブライター」が跋扈している現在、その中から抜きん出ることができるかどうかは結局のところ「運」でしかありません。

 

約束を守り、しっかりとコミュニケーションを取り、真摯に仕事に取り組んでいれば大成するとも断言できず、日に日に消耗していくのみ。そうなってしまっては仕事の内容もどこか作業的になり、ただ都合の良いように使われるだけの存在になりかねません。

 

もちろん、名を売って著名になるだけがライターの道ではありません。表立ったライターとして仕事に取り組むにせよ、裏方として文章を書き続けるにせよ、継続的に仕事をもらうためには一定の営業努力、コネクション作りをしないわけにはいかないでしょう。

 

まとめ:メディアもライターも「コンセプト」が重要になってくる?

他方では最近、新興メディアと無名のライターが手を組んで質の高い記事を継続的に投稿し、お互いに継続的に「ファン」を獲得していこうという動きも見られるようになりました。

 

先日の記事でも書きましたが、そこでは「コンセプト」に重きが置かれています。運営するメディアと、記事を書くライターの両者がひとつの「コンセプト」を共有し、手間ひまかけて読者に価値観を伝えていこうという動きです。

 

とにかく「バズ」を狙うでなく、かと言って「質より量」を重視するでもなく、時間をかけてより良いコンテンツを生み出し、長期的な視点で「ファン」を獲得していこうという試み。

 

メディアもライターも数が増えすぎた現在においては、バズでもSEOでもない、こういった「コンセプト」を何より大切にする、第三のライティングが徐々に注目を浴びるようになるのかもしれませんね。

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けいろー

フリーライター。ネットカルチャーと共に育ってきたゆとり世代。執筆実績として『HATSUNE MIKU EXPO 2016 Japan Tour』公式パンフレット等。

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