作家を目指すあなたへ

一発屋と呼ばれる作家と、書き続けられる作家の違い

書籍を出した人から、よく聞く言葉がある。

「1冊目の本を出すことは難しくない。しかし、2冊目以降を出すのが難しい」

はじめての本を出した後、「次は何を書けばいいのだろう」と新たなテーマ探しで悩む著者も多い。今回は、ずっと書き続けられる作家とはどんな人かについて考えてみよう。自分の本のテーマを見つけたい方にもぜひ参考にしてもらいたい。

 

 

ビジネス・実用書はネタと個性で勝負

文芸・小説ジャンルの作家の場合、原稿の一字一句をきっちり読まないと出版レベルに達しているかどうかを判断できないが、ビジネス・実用書の作家の場合は、企画書と目次案、著者プロフィールでおおよその判断は可能だ。

 

ビジネス書や実用書はネタが勝負だ。ネタとは作家自身の経験や蓄積されたノウハウ、知識のことだ。ネタが十分にあれば、構成を立てるのはそれほど難しくない。

その次に絶対に必要なのが個性だ。

ネタにも作家にもオリジナリティがなければならない。すでに流行しているものの後追いだったり、どこかで見たことのあるような方法論だけでは話にならない。

逆に私たちは、作家の知名度や実績にはあまりこだわらない。それよりもネタがどれだけ面白く、かつオリジナリティに溢れ、社会にどう影響を与えられるかの方を重視する。

ただ、どんな人でも本にできるようなネタの一つは持っている。しかし一つや二つでは、エージェント契約を結ぶまでには至らない。

ずっと作家という仕事をやり続けるという信念があるか。面白そうな企画が次々に湧いてくるような人物か。言葉だけでなく、そのための準備を常にしているのか。それが契約に至るキーであり、ハウツー系の作家を目指すために必要なことだと思う。

これらが揃っていれば、私たちには喜んで手を貸す準備がある。いっしょにコンセプトを考え、コンテンツを練り込み、文章をブラッシュアップし、出版社に売り込む。

私たちにはよい本にするためのノウハウがある。そのノウハウを使って、必ず作家デビューのお手伝いをさせていただく。

 

ブレイクを予感させるクレージーな作家との出会い

たとえば、弊社所属の金森重樹さんは、最初からすべてがぶっちぎりだった。言うこと、やること、書くこと、すべてがとても刺激的だった。いい意味でクレージー。

金森さんは、周りには畑しかないような岡山県の公立高校から現役で東大法学部に合格した。

その勉強法が桁外れだ。学校に行く目的は、先生と議論をし、論破するためだったという。生徒の前で先生に赤っ恥をかかせる。それが楽しくて仕方がなかったらしい。先生にとってはさぞかし嫌な生徒だったに違いない。早く卒業してほしいとさえ思われていたはずだ。

先生だってその道の専門家。さらに金森さんがいるクラスの授業とあれば完璧に予習してくる。それに対し論破するためには、通常の勉強ではおぼつかない。先生の知識量、ディベート力に負けてしまう。

たとえば歴史。高校の教科書や参考書だけではなく、大学教授の書いた論文や司馬遼太郎の歴史小説まで読んでから、先生に論争を挑む。そんなことを続けていたのだから、ある意味、不良少年よりもたちが悪いかもしれない。

 

そんな金森さんと私の出会いは、今から十数年前のことだ。

私は、ある有名メルマガ「自己破産せずに借金六二〇万円を返す方法」の発行者にコンタクトするためにメールを出した。すると私がコンタクトしようと思った人物でない、別の人物から電話があった。それが金森さんだった。

金森さんによれば、そのメルマガの発行権を前の発行者から購入し、次号から自分が発行者になるということだった。

私が、「面白いので、書籍にできないものかと検討したかった」と伝えると、なんと金森さんは「同じ六本木なので、今から伺います」と言い、実際に電話を切って10分後には私たちの会社へやって来た(当時、弊社オフィスは六本木にあった)。

 

私は、いやたぶん誰でもそうだと思うのだが、基本的にはそういう強引な人は好きではない。

ただ、金森さんは強引は強引なのだが、不思議に嫌らしさがまったく感じられなかった。私は彼の強引さを嫌がるどころか、むしろ素直に彼の行動力に脱帽してしまった。

その場で出版の話になり、一緒に構成を練った。

すると恐ろしいくらいにするするとコンセプトや構成が出来上がった。まるで金森さんの魔法にかけられたみたいだった。

私が早速その企画をダイヤモンド杜に売り込むと、「借金」というネガティブなテーマながら、やはり社会的な関心の高さもあったのか、2万部まで伸びた。

 

次々とあふれだす、金森さんの興味の引き出し

ここから金森さんの八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍が始まった。

次作のテーマとして金森さんが興味を持ったのは、行政書士の全国チェーンだった。実は当時、これこそ金森さんの本業だったのだが、金森さんは1冊目の著者プロフィールに「法律家の皮をかぶった商売人」とあるように、自分で編み出した超絶的な営業テクニックを持っていた。

そしてその凄まじい営業力の伝授をテーマにした本『行政書士開業初月から100万円稼いだ超・営業法』(PHP研究所)を出版した。平均年収300万円という業界で開業初月に月収100万円をたたき出し、開業3年で年収1億円を突破したという金森さんの存在感は唯一無二のインパクトがあり、この本もヒットした。発売直後から立て続けに増刷がかかり、こちらも累計で2万部を超えた。

 

続いて金森さんが興味を持ったのは「インターネット・マーケティング」だ。

金森さんは最新のマーケティング手法を営業力に直結させることに成功しており、マーケティング部門で日本一の読者数を持つメルマガ発行者でもある。そのメルマガ「回天の力学」は、なんと7万人を優に超える読者数を誇っている。

このインターネット・マーケティングの本は、一作目と同じくダイヤモンド社から出版された。タイトルは『インターネットを使って自宅で一億円稼いだ! 超・マーケティング』。この本の原稿を読んだとき、あまりの凄さに衝撃が走った。金森さんのノウハウには、何よりもご自身の体験に裏打ちされた強さがあるからか、これも5刷2万部を超えた。

あるとき、金森さんの奥様と話す機会があったのだが、聞けばこの本の通り、金森さんはいつも家で、パジャマ姿でコンピュータの前にかじりついているということだった。それが仕事なのだ。

冗談のようなことを冗談で済まさずに現実のものとしてしまう金森さんの行動力にはただただ恐れ入るばかりだ。

 

だが、金森さんの興味の範囲はこれだけにとどまらない。

世界で最も進んでいるアメリカのコーチング理論に興味を持ち、その道の第一人者であるアービンジャー・インスティチュートの著書の監訳も行っている。これは『自分の小さな「箱」から脱出する方法』というタイトルで大和書房から出版されている。今年になってラグビーの五郎丸歩選手が新聞のインタビューで紹介してくださり、現在では32刷20万部まで伸びた。

 

ほかにも、「通販大家さん」という投資用不動産の通販サイトを立ち上げた。

「不動産の通販」というと異質な感じがするが、もちろんいわゆるネット・ショッピングのように物件を見ることなく不動産をネットで購入するわけではない。不動産投資に関心を持っている人向けにまずは有料物件の情報を提供し、興味があれば実際に物件を見てから購入するか否かを決めるという仕組みだ。

 

ここでも金森さんのモットーは有言実行。まず自分で借金をして2件、なんと計3億円の物件を買い、不動産投資を始めた。そして、その経験から得た教訓やノウハウを基にサイトを立ち上げたのだ。そして金森さんはあっという間に新しい分野でもカリスマと呼べるほどの存在となり、サイトを立ち上げてからわずか数ヵ月で開催したセミナーには450人もの聴衆を集めるほどだった。

 

自分の興味をとことん追求すれば、書籍企画になる

2014年には、金森さんはまた別のジャンルでヒットを出した。

自分の節税対策を練っているうちに出会ったふるさと納税に目をつけ、情報をまとめた本を出したらそれが大ヒット(『100%得をするふるさと納税生活完全ガイド』扶桑社・刊)。これも、自宅での食材をほぼすべてふるさと納税の返礼品でまかなっているという金森さん自身の体験が、読者を納得させるエピソードとなって、世の中の「ふるさと納税ブーム」の先駆けとなった。

 

金森さんはとにかくさまざまな分野に興味を持ち、それぞれについて必ず自分の身をもって体験した上で試行錯誤と研究を重ね、その世界での第一人者になる。人並みはずれた多彩な顔を持つビジネス・プロデューサー・金森重樹が大ブレイクし、大ベストセラー作家になるのも時間の問題だと私は確信している。

 

「作家のエージェント」とは、自分では何も作り出すことはできない。言わば人の褌(ふんどし)で相撲をとる商売だ。しかし、このように作家をリードすることによって、彼らの才能を大きく開花させることができるのだ。金森重樹さんとの仕事はその成功例の一つだと自負している。さて、あなたが書くべきテーマはなんだろうか?

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鬼塚忠

アップルシード・エージェンシー代表。大学在学中に英国留学し、卒業後は働きながら、4年間で世界40か国を巡る。帰国後、海外の本を日本に紹介する仕事を経て、独立。「作家のエージェント」として、多くの才能を発掘している。自身でも小説を執筆し、著書に『Little DJ』『カルテット!』『花いくさ』『風の色』等がある。

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