書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:「急激に伸びる子」「伸び続ける子」には共通点があった!
朝日新聞出版
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著者:富永 雄輔(とみなが・ゆうすけ)さん
進学塾VAMOS代表。東京都生まれ。幼少期10年間をスペイン・マドリッドで過ごす。
京都大学卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園生から高校生まで通う少人数制の進学塾「VAMOS(バモス)」を設立。入塾テストを行わない先着順にもかかわらず、独自の指導方法により子どもの能力を伸ばすことで話題に。中学受験の第一志望合格率は7割、大学受験の「国立+早慶+医歯薬系」の合格率は8割。
また、受験のみならず、小学生の算数オリンピックの予選突破率7割、インターハイで優勝する生徒も輩出するなど、幅広く子どもの能力を伸ばすことでも有名。
進学塾VAMOS(バモス)
───勉強や学びを「好き」と感じる心を育てたうえで、親子で心を整えることが大事という考え方が心に響きました。
本書を執筆しようと決めた動機・きっかけについて教えていただけますか?
富永雄輔さん(以下、敬称略):まず、私がこの本を執筆しようとしたきっかけは、塾の設立以来、多くの生徒様や保護者様と話す中で、「ある課題」を見つけたことでした。
それは、多くの時間や労力をかけて勉強しているのに、なかなか良い成績に結び付かないというものでした。一方、成績が向上し、学校生活が上手くいっている生徒をよく観察してみると、多くの共通点があるのが分かりました。
それは、その生徒が非常に落ち着いた状態で過ごしているという点でした。いかに簡単なことで子どもの心が落ち着き、保護者様の心が落ち着くかというのを目にするにつれ、彼らの行動から紡ぎ出された「心が落ち着く方法」を多くの方にご理解していただきたいと思い、本書を執筆しました。
私が以前から提唱しているのが「量×質×変数=子どもの伸び」という公式です。
量とは、勉強時間や解いた問題の数、受ける授業のコマ数などです。質とは、勉強時の集中力や問題の種類、受ける授業の内容を指します。現代の受験勉強において質や量は極めて均質化しています。
なぜなら量の部分ではいくら勉強しても限界がありますし、質の部分においても、インターネットの発達により、世界中どこでも同じ授業が映像で受けることができる現在、地域格差は格段に小さくなっているからです。このように量と質は、現代社会では差をつけることが難しくなってきています。
では何が差を生むのかというと、それは「変数」の部分です。ここでいう変数とは勉強環境や本人の心の状態、保護者様の心の状態を指します。結局のところ、運動も勉強も本人が気持ち良くやれば成果は出やすいですが、嫌々取り組んでいると、成果はなかなか出ません。
もちろん、時期によっては多少の強制力も必要ですが、どうしたらその子にとってのリラックス状態を生み出せるのかを見極め、バランスをとることが重要になります。
───本書には「食べ物の好き嫌いを直さない子どもは伸びる」「安いペンケースを使っている子は伸びる」「『オタク気質』の子どもは伸びる」といった興味深いポイントがふんだんに盛り込まれています。
こうした斬新かつ具体的な「伸びる子とその親の共通点」を、どんな場面で、どのようにして見抜いてこられたのでしょうか?
富永:私はなるべく多くのお子様や保護者の方と密にコミュニケーションをとり、その子やその家庭がどんな問題を抱えているのか、その子の好き嫌いが何なのかを観察しています。
自分でいうのも変ですが、現代版金八先生でしょうか。日常のささやかな生活習慣の中にお子さんの伸びるポイントがあると私は考えていて、それを日々の業務の中で探しています。
───本書は「親のあり方・子どもとのコミュニケーションの取り方」の指南書でもあると感じました。
子どもの可能性を開花させていくために、親はどんな姿勢で接していけばいいとお考えですか?
富永:保護者の方はお子様と同等か、あるいはそれ以上のプレッシャーに押しつぶされそうになっていることがしばしばあります。
ですが、どんなお子様にも長所と短所があります。プレッシャーのかかった状態では、つい短所に目が行きがちですが、視点を変えて長所に目を向けることが大事だと考えています。
また、最初から100%の完成度を望まないように、とお伝えしたいですね。どんなお子様も最初から開花していることはありません。必ずつぼみの状態があります。まずはそのつぼみを見つけることをおすすめします。
───書籍執筆にあたり何か苦労されたことはありますか? その際、編集者やエージェントからはどんなアドバイスがありましたか?
富永:すべてに感謝しているというのが正解ですが(笑)、一番ありがたいと感じたのは、日ごろ私にとって当たり前で意識していなかったことを指摘してくださり、その中から「変数」につながるポイントをたくさん見つけて、具体的に言語化することができた点です。
───類書と差別化するため、こだわった点や工夫された点がございましたら教えてください。
富永:あえてほかの書籍で多くの教育関係者や先生がおっしゃらないであろう些細な点を、本書では大きく取り上げようと考えました。その結果、子どもや保護者様の日常生活のかなり細かい部分にまでフォーカスした内容となりました。
もう一つ工夫したのは、様々な保護者の方のお役に立てるよう、受験や勉強だけでなく、運動などお子様の成長全般に役立つ内容を取り入れたことです。
───本書の発売後、周囲やネット上などで、どんな反響がありましたか? 印象に残る感想や意見などがありましたら、教えてください。
富永:全国の保護者様から「この本を読んで、気持ちが楽になった」というお言葉を多くいただきました。「毎日子どもと接するのが楽になった」という言葉を聞いたときは非常に嬉しかったですね。
また、いくつかの学校関係者の方からも、「悩みの解決の糸口が見えた」といったお言葉をいただきました。やはり学校の先生も日々同じようなことに悩んでいるんだなと改めて感じました。
───本作りにエージェントが関わることのメリットとして、どのようなことがあると思われますか?
富永:先述したとおり、一番のメリットは、自分が当たり前だと思っていることを第三者の観点から見てもらい、客観視できることですね。
企画書の段階から様々な助言をいただいたので、いざ執筆しようとした段階で頭がすっきり整理されており、伝えたいことを明確にしやすかったですね。エージェントの方には本当に感謝しています。
───最後になりますが、著者デビューをめざす読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
富永:本を出版するという作業は非常に手間も時間もかかることだと思います。ですが、自分の本が書店に並ぶ喜びは何物にも代えられません。
また、本を出すことにより新たな出会いがたくさん生まれます。多くの方がこの喜びを味わえるよう願っております。
───富永さん、貴重なお話をありがとうございました!
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