書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:『偏差値35から公認会計士に受かる記憶術』(講談社+α新書)
講談社
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著者:碓井 孝介(うすい こうすけ)さん
1984年北海道生まれ。高校1年のときに全国模試で偏差値35をマークして衝撃を受ける。屈辱をバネに、一念発起。記憶の方法を工夫しながら猛勉強を始める。偏差値60が合格ラインといわれる関西学院大学法学部に現役で進学し、在学中に司法書士試験に合格。卒業して1年後に公認会計士試験にも合格。大手監査法人・法律事務所勤務を経て、現在は資格試験予備校で講師として活躍中。
───“記憶術”の本は、すでに多くの類書が出ていると思いますが、今回、なぜ改めて“記憶術”をテーマにした本を出版しようと思われたのですか?
碓井孝介さん(以下、敬称略):最初は、「勉強法」について紹介する本を書きたいと思っていましたが、企画を煮詰めていく段階でエージェントの方に「勉強法もいいですが記憶術はどうですか?」とアドバイスをいただいたのがきっかけです。
記憶術についての書籍はすでにたくさん出版されており、僕も学生の頃からたくさん読んできました。
さまざまな著者がさまざまな角度で記憶のコツを伝授してくれますが、いつも僕は思っていました。
「こんなの、真似できない」って。
だからこそ自分で「誰にでもできる記憶術」を書こうと決意できましたね。
そして、エージェントの方に講談社さんをご紹介いただいたのが2012年2月15日、原稿を書き始めてちょうど半年後の2012年8月に念願のデビュー作を出すことができました。
───「偏差値35から公認会計士」というご経歴はとてもインパクトがありますね。自分の能力に自信がない読者でも、「できるかもしれない」という気持ちになります。
本書で紹介されているなかで、ビジネスシーンで簡単に使えそう、役立ちそうな、記憶術の例を一つご紹介いただけますか?
碓井:本書で紹介している記憶術で、即効性があり、すぐに真似のできるものといえば、「オウム返し記憶術」です。これは、無意識に日々のビジネスシーンで行っている人も多いでしょう。
オウム返し記憶術は、言われたことを覚えたい場面で、そっくりそのままオウム返しをするだけ。
名刺交換の場面で、「はじめまして、加藤です!」と言われたら、「加藤さん!はじめまして、碓井です。加藤さんにはこれからお世話になるかと思います。宜しくお願い致します!」というように挨拶をします。
すると、「加藤さん」という覚えたいキーワードにその場で数回触れることになり、記憶に定着する確率が格段に上がります。
このように、普段の生活のなかで何気なくやっていることが“記憶術”だったりします。オウム返し記憶術は、まさにそのいい例ですね。無意識にやっていたことを意識的にすることで、覚えられる効果は格段にアップするのです。
本書では、こういった無意識に行っているようなものから、「こんな覚え方があるのか!」というものまでさまざまな記憶術を紹介しています。ぜひ、本書を読んでいただけたら嬉しいです。
───本書は、タイトルに「偏差値35から公認会計士」とあるように、受験に役立つ内容のように思われますが、本文ではビジネスシーンの事例も多く紹介されています。
碓井さんご自身は、どんな方に本書を読んでいただきたいと思われますか?
碓井:ビジネスシーンで役立つように意識して執筆したので、ぜひビジネスマンの方に読んでほしいと思っています。
とくに、何かを覚えられないことでヘマをしてしまうような、そんな若手のビジネスマンにこそ読んでほしいです(もちろん、ベテランのビジネスマンや受験生の方でも、読んでくれたら嬉しいです!)。
───碓井さんは今回が初めての出版になったわけですが、実際に企画を立ててから執筆し、本ができるまで、どんな点で苦労されましたか?
また、編集者やエージェントからはどんなアドバイスがありましたか?
碓井:執筆を始めたときに苦労したのは、章の構成です。
本は普段何気なく読んでいましたが、章の組み立て方はどれも実によく練られているもの。読者を飽きさせないように、導入部分があって、膨らませる部分があって、しっかり話を着地させないといけない。
飛行機の離陸、飛行、着陸みたいなものでしょうか。これを考えるのが大変でした。
うまくいかないときは、経験豊富な編集者さんや、エージェントの方にアドバイスをもらうようにしました。
具体的には、一番盛り上がる部分が「各論」だとしたら、それらに共通する部分を抜き取って「総論」をつくったり、最初に読者に関心を持ってもらうために、自分の生い立ちを第一章にもってきたり。
このような大枠のつくり方についてアドバイスをいただき、なんとか世に出すことができました。
───本書の発売後、周囲やネット上などで、どんな反響がありましたか?
印象に残る感想や意見などがありましたら、教えてください。
碓井:家族の反応はすごかったです。僕は東京で仕事をしていますが、実家は北海道の札幌です。本が書店に並ぶと両親がとても喜んでくれました。母はこの本を100冊も購入したようです…。同じ本を100冊も買うなんて、信じられないですよね?100冊買って、知り合いに配ったり図書館に寄贈したそうです(笑)
また、地元の高校で講演会をさせていただけることにもなりました。
母校を卒業してもう10年になりますが、当時お世話になっていた先生がまだ高校に残っていて、本を読んで声をかけてくれたのです。
───ご自身の原稿内容を多くの方に理解していただくために、ご執筆の際に注意していること、気をつけていることはありますか?
碓井:本を書くときは、パラグラフのつくり方に気をつけています。具体的には、パラグラフの1文目に「主張」を書いて、2文目以降は「主張の展開」を書きます。
また、1つのパラグラフでは、主張は「1つ」にするように心がけています。これは、大学受験のときに自由英作文の書き方として教わったことです。
これを意識するだけで、意外と読みやすい本になると思います。
───本を出版するにあたって、エージェントを利用するメリットは何だと思われますか?
碓井:エージェントにお願いするメリットはたくさんあると思いますが、3点挙げてみたいと思います。
1つ目は、エージェントの人脈に頼れるという点です。
普通の仕事をして、普通に生活をしている人には、出版業界に知り合いなんていません。そんな環境で本を出そうと思ったら、まず何をしていいのかさえ分かりません。エージェントにお願いすることができたら、“人脈”というネットワークを駆使して、企画のテーマに相応しい出版社や編集者の方をご紹介いただけます。
2つ目は、時間を大幅に短縮できるという点です。
無名の人が本を出そうと思ったときに考えられることは、自分で情報発信をすることです。出版社の編集部に企画書を送ったり、とにかくブログを書いて編集者の目にとまるのを期待したり。このようなことは大切なことかもしれませんが、出版という目標にたどり着くためには数年かかってしまうでしょう。
でも、エージェントにお願いできればこの問題も解決します。もちろんタイミングにもよりますが、企画が面白いものであればすぐに編集者をご紹介いただける可能性もあります。
3つ目は、自分の可能性を引き出してくれるという点です。
僕自身、今回の企画でこのことを感じましたし、これが一番のメリットだと思っています。先ほども述べましたが、もともと僕は「記憶術」というジャンルに注目したことはありませんでした。そんなときエージェントの方にご提案いただき、出版に向けて一気に前進しました。
自分とは違った視点で企画を検討してくれて、自分に相応しい企画になるようにアドバイスをくれる。自分の才能を、形のあるものに掘り起こしてくれる。
これが、エージェントにお願いする一番のメリットだと思います。
───最後になりますが、ビジネス書作家を目指す読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
碓井:今回の企画を通して分かったことは、「誰しも本を書けるネタを1つは持っている」ということです。大事なのは、そのネタに気づくかどうか。
僕の場合は「偏差値35からある程度の大学に入り、司法書士試験と公認会計士試験に両方受かった覚えるコツ」がそのネタでした。
正直、自分としては経歴がネタになるなんて思ってもいませんでしたが、エージェントの方はそこに注目してくれました。
何が世に出るのに値するか、分からないものです。だからこそ、ビジネス書作家を目指すなら、みなさん自身の「棚卸し」をするといいと思います。ご自身の生い立ちから思い起こしてください。
ご自身の仕事に対するスタンスや、生活の仕方に意識を向けてみてください。そうすると、「あれ、これって人に伝えるくらい普遍性があるかも!」と気づくことがあります。
ここまでくればしめたもの。あとは企画書とサンプル原稿を作成しエージェントに相談する。そして、良縁を待つ。
これが、出版を実現する第一歩になります。ぜひ頑張ってください!
───碓井さん、本日はどうもありがとうございました!
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