書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:『なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか』(ぱる出版)
ぱる出版
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編集者:瀧口孝志さん(ぱる出版)
───「日本のワーキングスタイルの問題点」について、日米のサービス業の比較から明らかにする本書ですが、初めてこの企画をご覧になったときの感想をお教えください。
また、奥谷啓介さんについては、どのような印象をお持ちでしたか?
瀧口孝志さん(以下、敬称略):本企画を見たのは、ちょうど伝統的な老舗旅館の女将を著書にした「一流のおもてなし」という切り口の企画を進めているときでした。
その流れで本企画も「一流」という言葉を使える本にふさわしいと思い、興味を持ちましたね。
また奥谷さんについては、プラザホテルといえば、あの「プラザ合意」でも有名な格式ある一流ホテル。
そこでマネジャーをしていた人なら、なかなかの人物なのだろうなあと。
しかし、プラザホテル自体は日本に進出しているとは聞かないので、日本人にはなじみがないかもしれないとの不安もありましたね。
───日本のおもてなしを賛美する本がたくさん出版されているなか、本書はあえて「日本の“おもてなし文化”が生産性を悪くし、儲からない仕組みを作ってしまっている」と指摘し、「ハイブリッドなおもてなし文化を築くべきだ」と提言しています。
なぜいま、この本を出版されようと思われたのですか?
瀧口:3.11の際に「日本のおもてなし」が世界から絶賛を受けましたが、日本のサービス業におけるホスピタリティは、果たしてどうなのか。
「ホテルの従業員の就業率が低い」との噂も耳にしていたので、どこかに矛盾が潜んでいるのでは?と。
実際、利用者からみると余計なサービスも多いですしね(笑)。
日本のおもてなしをあえて否定し、新しい提言をするという今回のような“アンチテーゼ”は“水を差す行為”なので、出版的には不安もありましたが、なるべく日本の良い面も強調することで中和させていけるかなと考えました。
───奥谷さんは執筆にあたって、「「なぜセクハラ・パワハラが蔓延するのか」「なぜ自殺大国なのか」など、日本が抱えるさまざまな社会問題は、日米のサービス業の比較ですべて明らかになるため、さまざまなテーマを深掘りしたくなってしまう。それを押さえるのに苦労した」とおっしゃっていました。
滝口さんから、執筆段階で何かアドバイスされたことがあれば教えてください。
瀧口:奥谷さんのこれまでの著書をみると、業界誌の記事的でとてもシビアな点を論じていました。
今回はサービス業全般に読者層を広げる意味でも、できるだけホスピタリティ全般に共感してもらえるような、やさしい読み物にしていただきたいと要望しました。
───表紙のデザインはとてもシックで高級感がありますね。
瀧口さんのこだわったポイントがあれば教えてください。
瀧口:ずばり、レジェンド「ザ・プラザ」をイメージしました。
───タイトル、書店での売り方などは、どのような工夫をされましたか?
また、この本を告知していくにあたって、どのようなことを実施されていますか?
その反響なども併せて教えて下さい。
瀧口:ホテルだけに「一流と呼ばれたい願望」をくすぐるネーミングに。
売り方に関しては、本書だけに限りませんが、大さな書店に注力していきました。
webサイトでの書評にも取り上げていただきました。
───瀧口さんは、普段企画を考える際、どんなことを大事にされていますか?
また、今後手がけてみたいテーマがあれば、教えてください。
瀧口:世の中の流れ(読者の変化)を捉えるように心がけています。
それと、著者がその企画に対して本気になってくれるかどうかも重視します。
───最近読まれた本のなかで、参考になった、タイトルやつくりも含めて、影響を受けた本があれば教えてください。
瀧口:『100円のコーラを1000円で売る方法』(著・永井孝尚/中経出版)です。
2年前、実はある担当書籍で、これとそっくりなタイトル候補が最後まで残ったのですが、結局は「販促ネタ」に決まり、「100円のポテチを5000円で売る」はカバーそでに回してしまったんです。
未熟でしたね。
───「一緒に本をつくってみたい」と思う著者はどんな人物ですか?
逆に、「こんな著者とは一緒につくりたくない」と思うのは、どんな人物ですか?
瀧口:前述の通り、本気で取り組んでくれる人、積極的にプロモートしてくれる人です。
───本作りにエージェントが関わることのメリットにはどのようなことがあると思われますか?
瀧口:私はエージェントと関わった経験が少ないのですが、良い面は「企画をふくらましてくれる」こと。
そして「書くのが遅い著者をせっついてくれる」でしょうか(笑)。
───最後になりますが、ビジネス書作家を目指す読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
瀧口:本を出すからには、著者自ら売っていかないと簡単には売れない時代になったと思います。
「自分で売る力をもっている著者か」が版元にとっても評価ポイントになっています。
ぜひ頑張ってください!
───本日はどうもありがとうございました。
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