書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:『あなたが部下から求められているシリアスな50のこと』(実務教育出版)
実務教育出版
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編集者:佐藤 金平さん(実務教育出版)
───本書は、濱田さんの前著『あなたが上司から求められているシンプルな50のこと』とタイトルやデザインも含めて、シリーズのような感じを受けます。
前著からの流れを受けて、佐藤さんは本書の企画について、内容はもちろん、タイトルやデザイン、売り方も含め、どのようなコンセプトでお考えになったのですか?
佐藤金平さん(以下、敬称略):たしか前著の打合せの際に、著者の濱田さんと「本書がそれなりに売れたら真逆の読者対象でシリーズ化もありですね」と冗談めかして話していました。
実際にある程度売れ行きがよかったのと、濱田さんに届いたリアルな部下の方々の声を聞くうちに、企画実現性を真剣に検討し始めました。そして、自身を読者に置き換えて考えた結果、可能性を感じたのです。なにより前著と並売することで相乗効果を狙いました。おかげで本書発売直後に前作の増刷が決まりました。
コンセプトや体裁は基本的に前著を踏襲し、デザインやイラストも同じ方々にお願いしました。
多少悩んだところといえば、タイトル『あなたが部下から求められている○○な50のこと』の○○部分くらいで、シリーズ本ということもあり全体的にスムーズに進みました。
───濱田さんは本書執筆にあたり、上から目線でアドバイスするのではなく、上司の立場や気持ちを尊重しながら「そうはいってもこうした方が、あなたのプラスになるんですよ」という展開の仕方を意識したとおっしゃっていました。
佐藤さんからは濱田さんにどんなことをアドバイスされましたか?
佐藤:一方的な言い分を述べただけでは読者の共感は得られません。前作同様、上司と部下双方の言い分を明らかにして、その間の溝を現実的かつ建設的に埋めることを意識してご執筆いただきました。
───前著と本書のこのシリーズの著者としての濱田秀彦さんの魅力はどんな点にあるとお考えでしょうか?
また、実際に2冊の制作作業を通して、どのような印象でしたか?
佐藤:ふだんのお仕事で現場のリアルな声をたくさん聞かれている点です。それが本書の説得力につながっていると思います。
それと、文章の質が高いだけでなく筆が早い点です。2冊とも企画が通ってから本になるまで、トントン拍子でした。
この2点のおかげで、新鮮な現場の実態をスピーディーに書籍に反映させることができたと思います。編集者としても随分助かりました。
───部下指導や上司のための本は、多くの類書があると思いますが、本書『あなたが部下から求められているシリアスな50のこと』について、それら類書との大きな違いはどんな点だとお考えですか?
佐藤:部下マネジメントをテーマとした本は数多くありますが、部下のリアルな声を切り口としたものは珍しいと思います。
たとえば、上司が「なんでも相談できる職場にしたい」と理想を語っていても、現実には「相談したくても、いつも席にいないくせに…」と部下は不満タラタラだったりします。いわば「部下の心、上司知らず」です。
本書は、濱田さんが研修などでこれまで接して来られた1万人の部下の方々のホンネを50個に集約しました。部下の気持ちを知ることで、上手なマネジメントに繋げることができるというわけです。
───佐藤さんはふだん企画を考える際、どんなことを大事にされていますか?
また、今後手がけてみたいテーマがあれば、教えてください。
佐藤:自分自身が苦手とするものを出発点に考えたりします。
本を作りながら、自分を成長させることができれば一石二鳥ですね。そういった意味では、未熟者ですので手がけるべきテーマだらけとも言えます。
今後手がけてみたいテーマは、理科系や人文系の教養についての本です。欠けている教養を制作過程で埋めたいですね。
───最近読まれた本のなかで、参考になった、タイトルやつくりも含めて、影響を受けた本があれば教えてください。
佐藤:『出ない順 試験に出ない英単語』(著・中山/飛鳥新社)です。いい意味でくだらなくて最高です。本1冊のコンセプトがしっかりして、それがすべてに反映されています。装丁も本物の英語の参考書のようになっていて、デザイナーさんから「わざとダサくしました」という話を聞いて徹底しているなと感心しました。今後、何かの参考にできればと思います。
───「一緒に本をつくってみたい」と思う著者はどんな人物ですか?
逆に「こんな著者とは一緒につくりたくない」と思うのはどんな人物ですか?
佐藤:「一緒に本をつくってみたい」のは、自分のためでも編集者のためでもなく、読者のために本を書くというスタンスの方。そこに立脚していれば、企画の軌道修正や原稿修正などがあっても、厭うことなく取り組んでいただけると思います。
「こんな著者とは一緒につくりたくない」というほうは、編集者に頼り過ぎる人はちょっと避けたいですね。
企画とも言えないようなボンヤリとしたアイデアだけ考えて、そこからどうにかしてくれるだろうと一方的に期待されるのは苦手です。
なかには面白い企画に発展するものもあるでしょうが、それはほとんどまれだと思います。やはり、ある一定レベルをクリアした企画がもともとないことには、形につながらないのではないでしょうか。
───本作りにエージェントが関わることのメリットにはどのようなことがあると思われますか?
佐藤:ありきたりですが、自分ひとりの発想からは出てこないような企画に触れられることです。また、真剣に売ろうとしてくれる人間が単純にもうひとり増える効果は大きいです。
とくに販促PRに関しては、こちら以上に各方面にパイプを持たれているので、非常に助かります。
それと、作家の方も編集者以外にもうひとりから見られることで、執筆に対してほどよい緊張感を抱くのではないでしょうか。
濱田さんの筆が早いのも、あながち無関係ではないかもしれませんね(笑)。
───最後になりますが、ビジネス書作家を目指す読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
佐藤:おそらく何冊も執筆できる方は本当に少ないと思います。だからこそ、かつて売れたビジネス書の焼き直しや同じテーマの繰り返しなどではなく、一冊入魂で自分にしか書けないものを目指してください。
───佐藤さん、ありがとうございました!
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