書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:交渉で負けない絶対セオリー&パワーフレーズ70
ダイヤモンド社
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編集者:小川 敦行さん(ダイヤモンド社)
───本書の著者・大橋弘昌さんは、これまでもダイヤモンド社から交渉に関する本を出版されています。大橋さんのビジネス書著者としての魅力を教えてください。
小川敦行さん(以下、敬称略):大橋さんは様々なテーマで本を書ける方だと思いますが、交渉に関していうと二つの魅力があります。
一つは、卓越した交渉力を持っており、そのすごさをキャッチコピーにしやすいことです。
大橋さんの処女作『負けない交渉術』(ダイヤモンド社)は、タイトルの前に「アメリカで百戦錬磨の日本人弁護士が教える」というコピーを付けました。
わずか20文字ですが、そこから大橋さんのすごさが伝わると考えました。日本人は交渉ベタと言われますが、その日本人の弁護士が交渉の本場・アメリカの敏腕弁護士をギャフンと言わせている。一体どんな交渉術なんだろう?書店を訪れた方々にそう思っていただければ、本書を手に取ってもらえます。普段は著者のキャラをどう打ち出すかで悩むことが多いのですが、この本ではすぐ頭に浮かびました。
もう一つの魅力は、大橋さんの交渉に対する考え方がきわめて日本的なところです。
交渉術の本というと、ドライで合理的な書き手をイメージしがちですが、大橋さんはまったく違います。相手を打ち負かそうとするのではなく、どうすれば「ウィン・ウィン」の関係が築けるかを考えている。どんな交渉の場でも、相手への礼儀を忘れない。そうした日本的なメンタリティに裏打ちされた大橋さんの交渉術は、日本の読者にとって共感しやすく、お手本にもしやすいと思います。
───交渉をテーマとした本は数多く出版されているなか、小川さんが本書を出版されようとお考えになったのはなぜですか?
類書との違いや差別化を図る際に気をつけられた点があれば、教えてください。
小川:たしかに類書は多いのですが、グローバル化が進んでいることや、日本人の中でも合理的な考え方をする人が増えてきたことなどを考えますと、交渉本のマーケットは徐々に大きくなっていると思われます。
ところが、私たち出版社が読者のニーズにきちんと応えられているかは疑問です。交渉のスキルを求めている人は増えているのに、すぐに使える即効性のある本が少ないのです。
例えば、1週間後にビジネスの大事な交渉をすることになったので、交渉に役立つ本を読んでおきたい。そうした読者に自信を持って提供できる本は、ごく少ないと思います。
そうした問題意識を踏まえて立ち上げたのが、今回の企画です。
コンセプトは「これだけ知っておけば明日の交渉が有利に進められる」という超実践本です。
その後、大橋さんやエージェントと企画を詰めて、どんな交渉でも通用する鉄則と、ここぞという場面で使えるフレーズをセットで紹介することになりました。
タイトルの「絶対セオリー&パワーフレーズ」は、それを力強い言葉で表現したものです。
───本書ではあらゆる交渉の場ですぐに使える具体的な事例とフレーズが掲載されています。
小川さんは、編集というお仕事をされているわけですが、実際に仕事やプライベートの場で使えたフレーズがあれば教えてください。
小川:私が重宝しているフレーズは「わかりました。もし◯◯していただけるなら…」でしょうか。相手から無理な条件を提示された際、「ノー」と答えると話し合いが行き詰まってしまいます。
ですから、「イエス」と答えたうえで、こちらにとって望ましい条件を付け加えるのです。
ある著者の方と議論したときに試しに使ってみて、その効果を実感しました(笑)。
───本書の制作にあたって、何か苦労されたことはありますか? また、著者の大橋さんに、執筆前や執筆中にアドバイスされたことがあれば教えてください。
小川:本書では70のセオリーを紹介していて、それぞれに事例を付けています。そのほうが、どんな状況で効果を発揮するセオリーなのかをイメージしやすいと考えたからです。
ところが、大橋さんは弁護士というお仕事をされているので、取り上げる事例がどうしても難しい話になりがちです。それをいかにシンプルに見せるかで苦労しましたね。
もっとも、大橋さんもその点をよく理解されていて、書き直しや差し替えを快く引き受けてくださいました。
───本書はどのような方に読んでもらいたいと思われますか?
小川:外国人相手に仕事をしている人はもちろんですが、たとえ日本人同士でも外部の方々と交渉、商談、打ち合わせをする機会のあるすべてのビジネスパーソンに読んでいただきたいですね。
交渉というのは、成果に直結するきわめて重要な場面です。交渉を学んでいる人は少ないようですが、英会話を学ぶのと同じくらい大事なことではないかと思います。
───普段企画を考える際、どんなことを大事にされていますか? また、今後手がけてみたいテーマがあれば、教えてください。
小川:日頃から心がけているのは、時代の変化に即応した本づくりです。日本の書籍の市場規模は年々縮小していますが、その中でもこれから伸びていくジャンルは必ずあります。
交渉術もその一つでしょうし、アジア圏の語学書などもそうかもしれません。そうした伸びる余地のあるジャンルを中心に企画を考えていきたいです。
───最後になりますが、「一緒に本をつくってみたい」と思う著者はどんな人物か、教えてください。
小川:対象読者が見込めるジャンルで卓越した能力を持っており、読者のニーズを理解している人です。例えば、そのジャンルで講演やセミナーなどを頻繁に開催していて、参加者の声に熱心に耳を傾けているような人は、ご自身の潜在読者が何を望んでいるのか、どんな内容にしたら売れそうかを知っていることが多いのです。
これからも、そういった著者の方と一緒に本をつくっていきたいですね。
───小川さん、ありがとうございました!
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