書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:『可能性〈ジーニアス〉を見つけよう』(講談社)
可能性(ジーニアス)を見つけよう 世界のエリートから学ぶ自分の枠を突破する勇気
講談社
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著者:石角 友愛さん
お茶の水女子大学付属高校を中退し、16歳で単身渡米。ボーディングスクール(全寮制私立高校)卒業後、リベラルアーツ教育のオバマ大統領の母校でもあるオクシデンタル・カレッジで心理を専攻。 卒業後は帰国して起業家を支援するインキュベーションビジネスを立ち上げ、3年間運営。 2008年に再び渡米してハーバード・ビジネススクールに入学。戦略コンサルティング会社やベンチャーキャピタルで経験を積みながら2010年に長女出産と同時にMBA取得。 グーグル本社でシニアストラテジストとして働き、2012年に退職した後、JobArrive社を創業。現在は同社代表としてアメリカのジョブマーケットがもつ問題を解決するサイト運営を手掛ける。 シリコンバレー在住。
著書に『私が「白熱教室」で学んだこと』(阪急コミュニケーションズ)ほか。
石角友愛さんブログ:http://tomoehbs.exblog.jp
───石角さんは、ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得され、グーグル本社などを経て、現在はシリコンバレーで起業され代表としてご活躍されています。
そんななか、本書をはじめ、『私が「白熱教室」で学んだこと』(阪急コミュニケーションズ)などのビジネス書も出版されていますが、そもそもビジネス書をご執筆されることになったきっかけは何ですか?
石角友愛さん(以下、敬称略):ハーバード・ビジネススクールを卒業し、子供も出産。
私なりに経験を積んだことで、若い世代に何か伝えられるのではと考えました。
というのも、自分が60歳になったときに上から目線で『私が若い頃はこうした』というような話をするよりも、今、まだ成長過程にある自分が等身大で考えを伝えることで、私と同じような環境にいる人や、いつかはそうありたい人により響くと思ったのです。
日本社会に貢献したいと言うと随分おこがましく聞こえるかもしれませんが、自分の背丈に合ったやり方で、そのときできる貢献を常にしたいと思っています。
あとは娘が生まれたことで、自分の考えを形に残したいという思いもありました。
───本書では、自分の“ジーニアス”=可能性を見つけることが、仕事を通して人生を幸せにするための秘訣だとありました。
あらためて、自分のジーニアスの見つけ方を簡単に紹介していただけますか?
石角:“ジーニアス”とはラテン語で、「その人の持つ本質的なもののこと」を指したそうです。
そこから、自分が元々持つ強みを理解し、それが発揮できるキャリアの選択をすることが幸せにつながる、というメッセージが主軸にあります。
自分のジーニアスを見つけるのは数々のトライ&エラーがあって初めて分かることだとは思いますが、忙しい読者の皆さんのために、“石角流自己分析テスト”というものを作成し、本書で紹介しました。
これは、アメリカの大企業等でよく使われている、ある自己分析テストを元に作ったものです。
4つの質問に答えるだけで自分のパーソナリティタイプが分かります。
もちろん簡易版ですが、学術的な根拠もあるので、ぜひ皆さんにトライしていただきたいです。
───グローバルで活躍するためには、語学力以外にリベラルアーツ(一般教養)を学ぶこと、世界の人と共感できる力を養うこと等の5つのソフトスキル、そして実務レベルで必要となるハードスキルとして「問題解決能力」「プレゼンテーション能力」「交渉力」を身につけることが大事だと書かれていました。
これらのなかで、日本人がグローバルで活躍するために、まず初めにするべきことは何だと思われますか?
石角:リベラルアーツではないでしょうか。
これは教養を身につけるという表面的な理由のほかに、思考法として学べるところが多いからです。
スティーブ・ジョブズはよく、「アップル社はテクノロジーとリベラルアーツの交差点に立とうとしている」と言っていましたが、理系、文系、サイエンス、文学、エンジニア、デザインなどの学問というカテゴリーの垣根を超えて、物事の本質を見つめ、形にすることができる柔軟な頭の持ち主になるからです。
思考力がないことには、どんなにプレゼン力や語学力があっても意味がないと思います。
───本書には、石角さんの周囲で“ジーニアス”を見つけ、実際にご活躍されている方の事例がたくさん紹介されており、大変参考になりました。
なかでも石角さんにとって強く印象に残っていらっしゃる方の事例を一つご紹介いただけますか?
石角:本の冒頭で触れたグーグルの元同僚のことは今でも鮮明に覚えています。
周りに流されず、自分のやりたいことだけを見つめ、本社を離れるという選択も迷わずする。
キャリアの途中でエンジニアになるのは簡単なことではないので、彼女のような生き方にはとても刺激を受けました。
───本書執筆にあたり、内容の構成や文章の書き方など何か苦労されたことはありますか?
その際、編集者やエージェントからはどんなアドバイスがありましたか?
石角:いつも細かい指摘をしていただき、編集者さんにはとても感謝をしています。
心理学の色々な研究を幅広く紹介しながらビジネスパーソンに必要なスキルを書いた本でしたので、文献の紹介を見落とさないように気をつけました。
あとは、英単語の表記なども気をつけました。縦書きなので、読みやすいように意識しました。
───本書はどのような方に読んでほしいと思われますか?
石角:グローバルな仕事をしている方や、今後したいと思っている方、また自分の子供をグローバル社会でやっていける子に育てたいと思っている親御さんにも読んでいただきたいです。
私が日々実践している子育て法についても記載しているので。
───本書の発売後、周囲やネット上などで、どんな反響がありましたか?
印象に残る感想や意見などがありましたら、教えてください。
石角:反響は本を出してすぐにありました。
たとえば、一般社団法人『日本ギャップイヤー推進機構協会』代表理事の砂田薫さんには、「この本は単なるエッセイではない。石角さんは、心理学を修めているので、その新しい知見やデータが満載のサイエンス的側面と、日本人が米国で学び、ビジネスを通して経験したことが、惜しげもなく公開されている実用書でもある」と言っていただき、本書の本質を書いていただいた気がします。
あとは「プラス思考の考えに刺激を受けた」、「考え方のパラダイムシフトが起こった」という内容のコメントも頂きました。
───石角さんが原稿内容を多くの方に理解していただくためにご執筆の際に注意していること、気をつけていることはありますか?
石角:自分の考えを素直に書くことがまず大事なのですが、多くの方に伝わらないと意味がないので、表現の仕方が一般的に見て非常識ではないかどうかなど、最低限気をつけています。
また、書いている本人には客観的に分からない部分もあるので、編集者さんに委ねています。
───企画のテーマを考えるうえで、どんなことをヒントにされていますか?
また、次回はどんなテーマについて執筆したいと思われていますか?
石角:ランダムに、自分が書きたいことを一気に書面化します。
私を取り巻く環境は常に変化しているので、そのときの自分が書きたいことに忠実に、テーマを考えアウトラインを考えます。
そこから編集者さんとエージェントの方と話して、具体化させます。
ここで初めてブレインストーミングするのですが、今回のタイトルも私が何気なく書いた言葉に、エージェントさんと編集者さんが「これはタイトルになる!」と気がついてくれたのがきっかけでした。
どこからアイデアが湧くか分からないのがおもしろいですね。
周りの意見もそれなりに柔軟に取り入れるタイプだと思います。
次回はまた今までとちょっと路線を変えたテーマにしようかなと考えています。
全部自分の興味があることというのは変わらないです。
───本作りにエージェントが関わるメリットにはどんなことがあると思われますか?
石角:私のように海外在住の作家の場合、エージェントさんがいないと本作りは不可能だと思います。出版社との交渉なども含め、利点は多いです。
あと、たくさんの本を出された経験に基づくアドバイスはとても参考になります。
───最後になりますが、ビジネス書作家を目指すメルマガ読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
石角:やはり自分自身が常によい経験を積むことは大事だと思います。
あとは質の高いインプットをし続けることも大事です。
でも一番大事なのは深く考えずに、書きたいことがあれば書面にし、企画書を作ってみることではないでしょうか。
必ずあなたのメッセージが役に立つ人はいると思いますので、ぜひ挑戦してみてください。
───石角さん、ありがとうございました!
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