酒と泪と女と女

「優しくて誠実で価値観が合う人?」脱・ゆるふわワードで本能が望むパートナーを狩りに出よ ぱぷりこ×川崎貴子対談(後編)

ラブ魔窟を闊歩する妖怪男を筆圧で滅する人気ブロガーのぱぷりこさんと、女のプロとして知られる川崎貴子との対談を全三編でお送りします。後編は魔窟ハイキングを終えた二人が、現実世界で満足度の高い結婚生活を得るための具体策について考えます。

妖怪男ウォッチ

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ぱぷりこ
宝島社
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(聞き手・文/執事

 

 

ぱぷりこ:川崎さん、金澤さん、二村ヒトシさんが登録希望の男性を全員面談される新しい婚活サイト『キャリ婚』、みんな気になってると思うんですが、どうやって妖怪男を見極めているのかなと。

※キャリ婚(β)
従来のシステムを逆転させた、女性有料・男性完全無料(但し、登録に当たって要面談)のシステムを持つ結婚相談サイト。現在男性会員のみ募集中。11月女性会員募集予定。
https://carricon.jp/

 

川崎貴子(以下、川崎):まず3人の間で共通認識を徹底させています。共働きが前提であると謳っているサイトなので、例えば話をして女性に対して少しでも支配的な印象を感じたり、あるいは話し合いでの解決が難しそうな男性とかはやっぱり厳しいですよね。

 

ぱぷりこ:ほんっとーーーーーに話し合い能力は大事です。

 

川崎:話し合いができない男性と仕事をしながら家庭をつくっていくことのリスクたるや、半端じゃないですよね。

 

ぱぷりこ:私は結婚に一番必要な能力って「話し合い能力」じゃないかって本当に思っていて。それさえあればなんとかなるっていう。あとは、その姿勢があるかどうかも大事ですよね。

 

川崎:姿勢は大事ですね。

 

ぱぷりこ:正直、どんなに話し合ってもわかりあえないことってあると思うんです。けれど一方的に押し付け合うとか、何も話を聞かないとか、俺は間違ってないって態度で来られてしまったら何も改善できない。それこそ、仕事ではPDCAを回すことを考える人でも、家庭では一切しないでいいと思っている人は少なくないので。

 

川崎:そうですね。逆にプライベートでは仕事で我慢してる分も自我を通そうとしてしまう……。

 

ぱぷりこ:そういったなかなか判断しづらい部分を、経験豊富な方がイエス・ノーの札を持ちながら面談を挟むサイトは、「それを待ってました!」「なにそれすごい!」っていう気持ちになりました。

 

川崎:どうもありがとう。あとは、前の彼女となんで別れたのかは聞いてますね。その上で、そこから何を学んでるんだろう?という点を伺うようにしています。

 

──ちょうど話にも挙がった、過ぎた恋愛からのフィードバックですね(詳細は中編を参照)。

 

ぱぷりこ:別れた理由よりも、それを踏まえてどう考えているか?が重要ですよね。

 

川崎:二村さんはいろんなタイプの人間の面談を繰り返してきた人だし、金澤さんも媒体のインタビュアーとして多くの人と話し込んできた人たちなので、探るのがうまいですよね。こういうふうに言ったらイラッとくるかな?とか、これはこの人自身の言葉じゃないな?とか。「なんで共働きがいいの?」っていう質問ひとつでも突っ込んで聞いていくと、その人の本質がずいぶんと見えてくる。

 

ぱぷりこ:最高ですね。私もインタビューをしろ!深堀りしろ!とは言っていますが、これも経験で磨かれる能力でもあるので、一朝一夕では身につかない。その点を経験豊富な皆さんが肩代わりしてくれているという点は非常に心強いです。

 

川崎:面談をしていてうれしいのは足を運んでくださる男性たちが「きちんと働いている女性が好き」とか「話し合いのできるカップルになりたい」って言ってくれることで。日本の婚活市場って、頭がよくてキャリアもある女性たちがそれを隠そうとしているじゃない。モテるために。

 

ぱぷりこ:そうなんです!私も婚活したときに、相談所に話を聞きに行ったことがあったのですが、婚活アドバイザーの方から「年収が高すぎると引く男性がいるから、一定ラインを超えたら低く書いてもらったりする」「特に女医さんなどは、医療従事者って書き方する方が多いです」って聞いてびっくりしました。年収が高すぎると僕はいけない……みたいに勝手に二の足を踏んで申し込まない男性が結構いるそうで。

 

川崎:昔から脈々と言われてきたことだよね。

 

ぱぷりこ:「女らしく」があまりにもテンプレ化されている。戦略として、母数を多く獲るためには必要でもずっと隠してはいられない。もし、隠したまま結婚して、結局双方に期待した「男らしさ」「女らしさ」とは違う性質が出てきてしまっては別れにつながってしまう。

 

川崎:サイトに共働き推奨と全面的に謳ってるんだけど、男性登録者が揃ってその希望を言ってきてくれたのはとてもうれしくて。だって婚活女性たちはそういう気の使い方をしてね、本当はかっこいい服が着たいのに花柄のスカートに足を無理くり入れてきたわけじゃない。でも「パンツスーツのあなたと会いたい」っていう男性が大量にいたわけですよ、実際。そういう男性たちを間近でリアルに見れると、ああ良かった!と思って。

 

──お越しになられた男性の皆さま、好みがはっきりしていらっしゃいましたよね。

 

川崎:論理的に話ができる人がいいって。

 

ぱぷりこ:専業主婦になってほしいっていう望みを持っている男性は、少なくとも私の周りで同年代の人にはいないんですよね。なので、たぶん多くの男性が共働きを前提に考えてるとは思うんですよね。

 

川崎:なるほど。

 

ぱぷりこ:なんですけど、口では「専業主婦志望な女は嫌だ、きちんと働いてる人がいい」って言いながら、いざ付き合ってみたら「彼女の年収が自分より高いと嫌だ」とかあるんですよ。え、詐欺!?みたいな。一番始めに意思確認したじゃん?すり合わせしたじゃん!?ってことを裏返す男性も一定数いて、そういうことに傷ついているバリキャリ女性は少なくないと思います。

 

川崎:括弧があるんだよね。「きちんと働いている女性(でも僕よりちょっと下の年収で)」って。その括弧を読んでってことなんだよね。

 

ぱぷりこ:難しい(笑)。

 

川崎:私たちもそこは面談以外にもチェックしていて。『価値観シート』っていう「女性の身長はあなたより高くてかまいませんか?」とか「女性の年収があなたより高くても困りませんか?」というのを自己申告してもらっています。中には「女性の昇進が決まって勤務地が海外になりました。あなたは付いていきますか?」とかも。

 

──全部で50個くらいの設問があって、回答はイエスかノーしかないんです。設問によっては自由記述のものもありますが、基本は二択です。

 

ぱぷりこ:どちらでもいいっていうのがない?

 

──ないですね。

 

ぱぷりこ:5段階とかになっていて、どちらかというとイエス、どちらかというとノーといった選択肢もないんですね。

 

──はい、ないです。なので男性から「選びようがないので入力できません」と連絡をいただくこともあります。女性側も同じ登録方式を用いているんですが、女性から「選べません」という連絡をいただいたことは今のところないんですね。

 

ぱぷりこ:ああ……。

 

──ぱぷりこさんが仰っていた、男性の方が過去の恋愛経験を自分にフィードバックさせてないというお話と重なりますね。だから将来歩みを共にしたい女性の像や、自身の希望を明確に定義できない。お互いの価値観を知るために二択にしているところを、入力しないという選択を取ることで「決めきれていないひと」という姿が浮き彫りになってしまうんです。

 

川崎:私は、それにすごい希望が持てたというか。もっとみんなが自然体で婚活してほしいなと思って。じゃあ「自然体なのになんで女性からアプローチするの?それって不自然じゃないの?」とは男女限らずよく言われるんですけど、私はそれも理にかなってると思っていて。女の人の生理的感覚というもの、またこう言うとネットで怒られるかもしれませんが、女性の「この人は本当に無理……」っていう感覚ってあるじゃないですか。

 

ぱぷりこ:ありますよね。

 

川崎:あるよね。子供を生む性だからなのかわからないけど。

 

ぱぷりこ:女性の方が、選ばなきゃいけないシーンが多いと思うんですよ。洋服1つ取ってもそうですけど、男性って基本的にはスーツという決まった型を選べばいいケースが多いですよね。でも女性ってビジネスカジュアルがOKの会社だったら、その会社の雰囲気に合わせて服を買いに行かなきゃいけない。その上で、これくらいの花柄だったらいけるか?いけないか?って考える。そんな風に日々細かいことで選択をしなければいけない。

 

──服は、僕個人でいうとたしかに選んでないですね。ルーチンワークです。

 

川崎:それこそ、男の人はとりあえず下着を履いてから考えるかもしれないけど、女の人は服を考えた上で下着も決める。例えば、今日は白いパンツを履きたいから透けないようにTバックにしようとか。それで上下の下着が決まったら、上にキャミソールを重ねようかとか、ぶわーって計算するわけ。すごい細かい意思決定を朝からするわけだよね、化粧も含め。

 

ぱぷりこ:もはや選択の訓練生ですよね。

 

川崎:訓練だよね。だから選択を重ねた女性が「この人いい」って思う感覚を私は信じてる。みんなもこの人なんか雰囲気いいとか、この人と喋ってみたいという感覚を信じてほしい。他の婚活サイトでは「お料理が好きな28歳のOLです」とかアップすると、男性からアプローチがいっぱい来るわけです。ただ、そうすると承認欲求は満たされるんだけど、自分が実はどういう人が好きなのかわからなくなってしまうんです。「選んでくれたからこの人にしよう。そんなにピンと来てないけど。」という考え方が不幸なマッチングを呼んでいると思う。

 

ぱぷりこ:さきほどの価値観をYES or NOで開示する話と一緒で、女性が選ぶというシステムもそういった考え方から仕組み化されているんですね。

 

川崎:女性側からしか選べないサイトなんだから、あなたたちが自分で男性に声をかけなきゃ駄目なのよって。強制的にそういうルールにしてしまえば、彼女たちの意思決定の訓練や自己開示能力の向上につながる。

 

ぱぷりこ:すごい。婚活という仕組みの中にきちんと自立や自己開示の訓練が組み込まれているんですね。

 

川崎:男性に対してうまいアプローチが分からなければ、私たちに質問をすればいい。みんな一度は会っている男性だから、どうしたら上手くコミュニケーションを取ることができるかはアドバイスができる。サイト上限定ではありますけど。

 

ぱぷりこ:今回、本の後ろに12枚の御札を付けたんですね。その中で「好き嫌い判定」っていうのを入れています。自分の好きとか嫌いという感情をもっと大事にしましょうって伝えたくて。まさに今の話とつながるなと思いました。

 

川崎:大事にしてほしいよね。

 

ぱぷりこ:みんな、好き嫌いで選んじゃいけないって大人になるにつれて思わされている。でも直感的ないい、悪いって、意外と当たります。例えば気分が沈んでいるからかわいい色のネイルでも買おうかとか、そういうことの積み重ねって自分の好き嫌いの振り分け作業だと思うんですよね。

 

川崎:そうだよねえ。

 

ぱぷりこ:その感度を高くする。人に対する判断をもっと素直にしていいと思うんですよね。選ばれなきゃいけないとか、愛され女性のテンプレートに沿わないといけないとか、余計なものが入ると自分の感覚で選べなくなる。そもそも婚活しているときって悩んだり迷ったりすることが増えるじゃないですか。

 

川崎:婚活をしている子たちの相談で多いのが「もはやどういう人が好きなのかわからなくなってきた」っていうものなんですよね。だから自分の好きに対する感覚を鋭敏にしてほしいって伝えてて。電車に乗ったらすぐ観察して!とか。あの人嫌い!あの人好き!って。

 

ぱぷりこ:私も自分が持っている好きを、ひよこ鑑定士のようにわかるようにしろって書いたんです(笑)好き・嫌い・好き・嫌いって高速で。あと、形容詞禁止というのも書いてます。「ちゃんとした人」とか「優しい人」とか、ゆるふわな形容詞は燃やせ!と叫びました。

 

川崎:「普通の人」、とかね。

 

ぱぷりこ:それ本当に駄目!それ何も言ってないですよね。例えば「私、すごく条件が多いんです」って相談にくる子に挙げてもらったら、書いてあるのが「優しくて、誠実で、価値観が合って、ちゃんとしてる人」とかよくあります。え、それ何?それで私に何を紹介しろというの?みたいな。でも、本人はそれがすごくちゃんとした条件だと思っている。

 

川崎:決して高望みをしていない、出過ぎたことも言っていない、普通だったら手に入るものじゃない?と思っているんだよね。

 

ぱぷりこ:婚活中に年収も話題に出てくると思うんですけど、いっそ年収5,000万円ない男じゃないと結婚しないって子の方がたぶん結婚できるんですよ。5,000万円というところにミートするために、何が必要かを考えるから。でも年収600万円もなくてもいいけど、400万円はあってほしくて、優しくてちゃんと家事も分担してくれて……。

 

川崎:育児もして。

 

ぱぷりこ:曖昧。

 

川崎:男も女もふわっとしてちゃ駄目だね。でもそれにはさ、やっぱりそういう「妖怪男たち」の百鬼夜行を食い止めなきゃいけない。ぱぷちゃんには平成の安倍晴明になってお焚きあげをしてもらって。私は私で、安全に婚活をしてもらえる、場作りをね。私はぱぷちゃんの文章を見ていてすごく思うのは、私が婚活女性に身に着けてほしいスキルでもある、人間観察力がとても必要なんだよね。スキルだからやる気になれば身に付くはずなんです。でもそれを怠って流されてしまうと、妖怪男に出会っちゃうわけですよ。観察のスキルを上げること、自分の本能的な感覚を。小手先のモテテクニックなんか本来いらないんだよね。自分の本当にタイプな男性の前なら、女性性は漏れますよ。

 

ぱぷりこ:自分が何がほしいかについて素直であることと、それをきちんと相手に伝えるために言語化できることがあればどうにかなる。自分の好きなものがわからないで、好きなものを伝えるってことはできない。なんとなくこういうものが好きって状態だけだと、言葉にしようとすると、ちゃんとした〜とか、普通の〜とか、優しい人〜みたいなゆるふわワードに変換されてしまう。

 

川崎:言語化しましょう。

 

ぱぷりこ:言語化されていないと、自分が想定している人を誰にも紹介してもらえないということにも繋がりますし、いいことがない。あと絶対禁止なのは、自分の中に違和感や不快感を感じているにもかかわらず、スペック的にいいからとか、みんながいい人って言うからと、直観をないがしろにして我慢すること。

 

川崎:親がいいって言うとか、他人目線になっちゃうのね。そこを鍛えることこそが直接的に満足度の高い結婚につながりますよね。

 

ぱぷりこ:今日はありがとうございました。あっという間!

 

川崎:こちらこそありがとうございました。次回は酒場でこの続きを。

 

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川崎貴子

リントス株式会社代表。経営者歴21年。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女のプロ」の異名を取る。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚。8歳年下のダンサーと2008年に再婚。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(大和書房)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(ベストセラーズ)、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、二村ヒトシとの共著に『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(講談社)等がある。

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