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【編集者インタビュー】河村 伸治さん(マキノ出版) 「まずは本業で人から注目されるような結果を出すこと。さらに、それを長く続けていくこと」

書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。

 

書籍:『図解「めんどくさい」をスッキリ消す技術 (仕事、家事、人間関係がすべて楽になる!)』(マキノ出版)

図解「めんどくさい」をスッキリ消す技術 (仕事、家事、人間関係がすべて楽になる!)
奥田 弘美
マキノ出版 (2016-09-15)
売り上げランキング: 306,486

 

編集者:河村 伸治さん(マキノ出版)

 

 

 

───今回の企画は、どのような経緯でスタートしたのでしょうか?

 

河村 伸治さん(以下、敬称略):2015年8月にアップルシード・エージェンシーの山田さんから、奥田弘美先生のご著書『図解 心のコリをとる技術』(大和出版)の改訂版を出せないか、と打診をいただきました。それ以前から、奥田先生のご活躍は見聞きしていたので、ぜひ、とお願いして、ご縁をつないでいただきました。

原本は2008年刊行のもので、すでに7年の月日が経っていましたので、実際に原本を拝見したり、奥田先生とお会いして企画相談したりする中で、原本の内容も取り入れつつ、新規で制作する話になりました。

 

───奥田さんの著者としての魅力を教えてください。

 

河村:「読者のニーズ」を常に意識していらっしゃる点です。想定読者の設定(どんな人が読むのか)の議論に、今回もかなりの時間をかけました。

具体的に一例を挙げると、「根っからネガティブな人」も読者に含めるか含めないか、という議論です。奥田先生は、「自分のネガティブさを自覚しながらも、ポジティブに生きたい、変わりたいと頑張っている人」を応援する本を書きたい、と想定読者を明確に描いていらっしゃいました。
これは、本をつくる上で当たり前のようですが、意外と「自分の主張ありき」の著者も少なくないので、すばらしいと思いました。

 

───著者である奥田さんは、本書の執筆にあたって、「河村さんから内容に関するいろいろなアドバイスをもらった」とメルマガインタビューでおっしゃっていました。さらにより良い本にするため、どのようなアドバイスをされたのでしょうか?

 

河村:奥田先生には、私から以下のようなご意見を差し上げました。

・「読者に寄り添う」ような語り口の文体にしましょう
・理論ばかりの内容にならないように、症例や改善例を多めに散りばめていただきたい(ビジネス、親子、夫婦、嫁姑、ママ友、ご近所問題など)
・カウンセラーによる類書が多かったので、医師ならではの情報として、薬(睡眠薬など)のつきあい方も入れていただきたい

また、奥田先生から挙げていただいた第一稿は内容がすばらしかったのですが、分量がやや多く、図版を入れて200ページほどありました。ただ、「めんどくさがり」の想定読者を考えたときに、もう少しライトな本にした方がよいと思い、奥田先生にご相談して、私のほうで150ページほどの分量に凝縮(原稿整理)させていただきました。

 

───本書には、精神科医である奥田さんが、カウンセリングでも活用されている「心のエネルギー漏れ」を防ぐための方法が、わかりやすく解説されています。

本書の中で、河村さんご自身が実生活でとくに役立った部分や、面白いと感じた部分はどこでしょうか?

 

河村:たくさんありますが、あえて1つだけ挙げるとすれば、「わがままには2種類ある」の部分です。

「他人に対するわがままはNGだけれども、自分に対するわがままはOK」という奥田先生の理論には、とても勇気づけられました。誰しも、仕事や家庭で「ガマン」しなければいけないシーンがあるかと思います。そうしたガマンが減ったことで、ストレスがグッと減りました。

また、以前から、筋力トレーニングをやりたくても、なかなか続かなかったのですが、「好きでも嫌いでもないめんどくさいこと」に対するアドバイスにあった、「とにかく効率化して手抜きをする!」を取り入れています。毎日ではなく3日に1回、きつければ回数は半分でOK、など考え方を改めることで、昨年夏から今まで続けることができています。

 

───本書は、「めんどくさい」と感じる気持ちを解決したい人向けかと思います。そのような読者が読むことを考えた上で、タイトルや構成、図解など、類書と差別化するために工夫された点を教えてください。

 

河村:本書の大事な要素でもある「図解」部分は、老若男女問わず、心にスッと入ってくるようなイラストを描けるイラストレーターさんに依頼したい、と考えました。

いろいろと探した結果、大野文彰さんにお願いしたのですが、とても魅力的な図解ページに仕上げてくださいました。奥田先生も、とてもお気に召したようでした。

 

───本書には、「心の状態」や「めんどくさいを招く食生活」のチェック項目などが設けてあり、いま現在の自分の状態を簡単に確認できます。そのように、読者が実践しやすい内容にするため、こだわった点を教えてください。

 

河村:本書は実用書ではあるのですが、類書の多くが活字ばかりの本だったこともあり、なるべく文字量を少なくして、「手軽に読める内容」にこだわりました。

セルフチェックなどを盛り込んで「読者参加型」にしたのも、そうした理由からです。

 

───本書の制作にあたって、苦労された点はどんなところでしょうか?

 

河村:「図解」の部分をどのようにビジュアル化して見せようかと、奥田先生と私だけではアイデアが煮詰まっていたときに、アップルシード・エージェンシーの山田さんに具体的なアドバイスをいただき、活路を見出すことができました。

 

───河村さんが最近手がけられたのは、どのような本ですか?

また、普段企画を考える際、どんなことを大事にされていますか?

 

河村:今年の1/14に発売した本が、『ねこ背は10秒で治せる!』です。日本初の猫背矯正専門院を立ち上げて2万人のねこ背を治してきた、小林篤史先生を著者とした実用書です。

おかげさまで、発売5日で重版出来。紀伊国屋書店全店で2週続けて週間ランキングで1位(くらし部門)になるなど、ご好評をいただいています。

企画を立てる上では、今回の奥田先生もそうですが、人からのご紹介やイベントでの偶然の出会いなどの「ご縁」を大切にしています。

 

───河村さんが、「一緒に本をつくってみたい」と思う著者は、どのような人物ですか?

逆に、「こんな著者とは一緒につくりたくない」と思うのは、どのような人物ですか?

 

河村:著者と編集者は、どちらか一方が上なのではなく、対等な立場だと考えています。その意味で、お互いに建設的な意見をぶつけ合い、「読者のため」という大義に向けて船をいっしょに漕げる、「パートナーのような存在」になれる著者と本をつくれるのが、最も編集者冥利に尽きます。

 

───本作りにエージェントが関わるメリットには、どのようなことがあると思われますか?

 

河村:先ほどの「ご縁」という意味では、1人の活動範囲で出会える人には限りがありますから、その部分でお手伝いいただけるのは、とてもありがたく思っています。

アップルシード・エージェンシーの皆さまには、いつもお力添えいただき、感謝しています。

 

───最後に、ビジネス書作家を目指すブログ読者のみなさまにメッセージをお願いします。

 

河村:「本を出して有名になりたい!」と考える人もいるかもしれませんが、本を読んでもらうには、「この著者が言うことなら、読んでみたい、実践してみたい」と、書店で読者をうならせないといけません。

その意味では、「この著者は、すごい人なのだ!」と感じさせる「権威づけ」が必要になります。ですから、まずは現在携わっていらっしゃる本業で、人から注目されるような結果を出していただくこと。さらに、それを長く続けていただくことです。

一見すると遠回りのようですが、それが近道であり、ヒットにもつながると思います。そうした方々と、いつかご縁があることを楽しみにしています。

 

───河村さん、お忙しいところありがとうございました!

 

ブログをお読みの皆さんで、本にしたら絶対売れる!!という企画・原稿をお持ちでしたら、弊社あてにご応募ください。

くわしくは企画原稿検討の要項をご覧ください。検討させていただきます。

ご意見・ご感想は(info@appleseed.co.jp)までお願いいたします。

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鬼塚忠

アップルシード・エージェンシー代表。大学在学中に英国留学し、卒業後は働きながら、4年間で世界40か国を巡る。帰国後、海外の本を日本に紹介する仕事を経て、独立。「作家のエージェント」として、多くの才能を発掘している。自身でも小説を執筆し、著書に『Little DJ』『カルテット!』『花いくさ』『風の色』等がある。

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