「旅で世界を、もっと素敵に」を理念に掲げ、旅に関する5つの事業を展開する株式会社TABIPPO(タビッポ)。
全国各地での旅イベント「旅大学」や年に1度の「旅祭」開催をはじめ、本、写真集、雑貨などのモノづくりまで、その事業内容は多岐に渡ります。
創業から4年、多くのファンに愛されるTABIPPO。そこに至ったPRの秘訣を、しみなおの愛称で慕われる代表取締役社長の清水直哉さんにお伺いしました。
一方的な発信でない、共感してもらうことの大切さ
───旅行会社ではなく「旅を広める」という新しいビジネス。どのようにPRをして自分たちのビジネス理念を世間に浸透させたのでしょうか。
清水直哉(以下、清水):1番大きいのは、人から人による口コミです。
TABIPPOの設立が2011年、法人化が2014年。TwitterやFacebookなどのSNSがどんどん日本で流行り出した時代でした。
当時はSNSを使って、どうやって拡散してイベントに人を増やしていくかを考えていました。SNSを使えば、多くの人に自分たちの理念や事業内容を届けることができるので、使わない手はありません。
拡散力がある一方でSNSでは、相手に「共感されなくなったら終わり」と考えています。なので、発信するときは自分たちが大切にする想いや考えもしっかり乗せて伝えるよう心がけています。
そうしてファクト以上のことを伝えてきたことで「面白そうだからイベントに参加してみよう」「事業を一緒にやってみたい」と共感していただけているのだと思います。
TABIPPOは、どの企業にも負けないくらい、そういった「発信」には、こだわりを持ってチカラを入れているんです。
───たしかに、わたしもフォローしていますが、新しい情報が日々舞い込んできます!社内にPR担当者はいるのでしょうか。
清水:「みんなで発信する」というスタンスを取っているので、担当者というのは特にいません。
TABIPPOでは、仕事とプライベートを切り離して考えるのではなく、1人の人間として「自分はTABIPPOの人です」と、言えることを大切にしているんです。
そのために、誇りを持って、楽しんで仕事してもらえるようにフォローも徹底しています。だから、社員自身が発信することや、PRしていくことを楽しんでいる状態ですね。
発信するときに「なぜやるのか」「どう考えているのか」というストーリーを一緒に伝えることが大事なので、社員がいつでもそこに立ち帰れるよう、自社サイトにも創業に至るまでの思いや歴史を余すことなく記しています。
今の時代、何となく始めたことは「表面的だ」と、すぐ相手に伝わってしまうような気がします。情報はありふれていますし、情報を受けるみんなのリテラシーも高まっていますから。
だからこそ、自分たちの事業にしっかりとしたストーリーがあることが大切。それがあれば、相手に伝わりやすくなり、結果として応援してもらえることにつながります。
伝え続けることでチャンスと結果が生まれる
───これまでどんな事業やサービスを展開されてきましたか。
清水:今は、旅を広めるために5つの事業を展開しています。事業領域はしぼっていません。
「旅が広まりそう」と思ったことなら、どんなことでも、さまざまな角度から取り組んでいますね。もちろん、ビジネスなので収益のことは考えながら。
イベント事業では、「旅祭」という7000人以上もの旅好きが集まる日本最大の野外フェス、「BackpackFESTA」という学生向けのイベント、「旅大学」という年に150回以上の授業を全国各地で運営しています。
年齢層問わず、色んな方が参加できるイベントを開催していて、イベント事業を通してコミュニティづくりができればいいと思っているんです。
プロダクト事業としては、本を作ったり、iPhoneケースや手帳なども手掛けてきました。
マーケティング事業では、コミュニティを活かして大手企業や政府観光局のクライアントとタイアップをすることで、TABIPPOにしかできない旅に関する企画や広告を行っています。
───一般の方から大手のクライアントまで、多くの人をひきつけ、事業を展開されてきた、しみなおさんから見て、スタートアップの会社がするべきPRとはなんでしょうか。
清水:まずは、とにかく発信することですね。
スタートアップの企業って、意外と発信していないことが多いんじゃないでしょうか。SNSもそうだし、ブログなどのオウンドメディアを、企業として作っていくことをおすすめします。
今は、昔と違って高い広告費を出さなくてもSNSやオウンドメディアがあれば、誰でも簡単に発信できる時代ですよね。Twitter、Facebook、Instagramなど、いろんなツールがあって、やり方はいくらでもあります。
そのときに、闇雲に発信するのでなく、ストーリーを載せてはじめて共感が生まれるということを忘れずにやっていてほしいですね。
数値として測れることではないのですが、やっぱり、自分たちが想っていること、考えていること、やっていることも一緒に伝えることってすごく大切です。
旅をするなら休んでOK!「自社ならではのユニークさ」がPRにつながる
───貴社ならではのPRの秘訣はありますか。
清水:「ユニークである」という要素でしょうか。TABIPPOのユニークさと言えば「旅を広めることをしている」なんて会社は、他にはありません。
また、旅をするならいつでも会社を休んでいいという制度もあるんですよ。他にない切り口の事業や、働き方や方針が話題を呼び、注目していただいてきました。
「旅のために会社を休める」というのは、周囲から「理想の会社だ」「働きたい」と思ってもらえることを目指してきた結果としてPRにつながったことなんですけどね。人、企業、情報が溢れている時代なので、他社と同じことをしていてもただ埋もれてしまいます。
そうはいっても「ユニーク=何でも取り入れればいい」という話でなく、「自分たちがやりたいこと」がもっとも重要で、それに関連づけて、どうオリジナリティーやアイデンティティをもたらすかが、ポイントではないでしょうか。
───これからPRをはじめる企業に何かアドバイスはありますか?
清水:とにかく地道に、小さな努力を積み重ねてください。1回イベントを開催しただけで、旅が広まることって絶対ないんですよ。
一過性の話題づくりより、草の根的にどれだけ長いスパンで自分たちの文化をつくっていけるか、物事を定着させるかにフォーカスするのがPR的な発想ではないでしょうか。
高い目標を掲げてそれに向かって努力をするということももちろんします。でも、まずは日ごろできることを少しずつ積み上げていくからこそ、自分たちの理念をわかってもらうことができて、少しずつ信頼関係を構築することができるんだと思っています。
その1人1人や、1つ1つの活動の信頼が、口コミや拡散につながって、中長期的に大きな結果にむすびついていきます!
インタビューを終えて
毎日、旅に関する情報を伝え続けることで生まれる企業と人との信頼関係。
「ただ伝える」だけでなく、社員さんのSNSの投稿からは、想いやストーリーが溢れ、「仕事って楽しい」「TABIPPOが楽しい、好き」という感情が伝わってきます。
だからこそ、多くの人から共感を得て、応援され続ける企業であることに納得しました。
何より、TABIPPOのことを楽しそうに語るしみなおさんをみて、わたし自身が「またTABIPOOのイベントに参加してみたい」「旅にでてみたい」とつい思ってしまう心温まる取材でした。
(取材・執筆:PRライター Kisa / 編集:吉川実久)