PRは、お客さまなどのステークホルダーとの長期的な信頼関係を大切にすることでビジネスを発展させるものです。そのため、「ファンづくり」に近いとされています。
児童発達支援事業、福祉事業開発コンサルティング、経営塾運営などの事業を手がける株式会社インクルージョン代表取締役の藤田直さんは、起業後7年で400件ものプロジェクトに携わってこられました。
お客さまは主婦の方から大手企業まで、幅広く、大きな信頼を寄せられていらっしゃいます。
そんな藤田さんに、PRのはじめ方と、経営に効果的に活かす方法を、PRライターの稲森静がお伺いしました。
PRのコツは「売らないこと」でファンになってもらうこと
───PR視点を活かして、どのように会社を発展させてこられたのでしょうか。
藤田直(以下、藤田):ビジネスをやる以上は、戦略的に経営をしてきました。ただし、売上重視ではなく、まずはサービスを知ってもらい、そしていかに信頼していただけるかを優先しています。
たとえば、セミナーや説明会を開催する際には、お越しくださる方が「何に困っていて何を必要とされているか」までを考え、それらを解決するための知識や情報を無償で提供するなど、プラスアルファの心がけを大切にしています。
また、会社外では、福祉関連やまちづくりなどのコミュニティへ参加し、運営を協力させてもらっています。
与える機会を大切にすることで、多くの方と信頼関係をきずくことができ、結果としてビジネスにもつながっていったんです。
福祉業界でこのようにオープンに活動する会社は稀だと思います。つまり、ポジショニングを明確にして、他社との違いを打ち出すことにも力を入れてきました。
───PRをするうえで、気をつけていることは何ですか?
藤田:商品を売るのではなく、お客さまに信用していただけるような共感を生むことを心がけています。
たとえば、一方的な宣伝ばかりがつづくと、受け手が拒否反応を起こしてしまう可能性があります。
普段の生活において、街中やインターネット上でも、情報量はすでに飽和状態です。みんな、1つひとつ「それが自分にとってほんとうに必要なのか」を精査する時間がありません。
世の中の人の立場で、当たり前の日常や1人ひとりの物語などを表現し、興味を持ってもらえるような発信をしていきます。極論として、「無機質な企業」よりも友達のような間柄になっていれば、共感してもらいやすくなりますよね。
そうすると必然的に、発信にも親しみが湧きファンづくりにつながり、これが世の中で話題となれば、宣伝をしなくても自然と認知度や影響力を高めることができるんです。
今すぐ、誰にでもできるPRのヒントは「応援」と「親しみやすさ」
───PR初心者にとって、「今からできるファンづくり」とは何でしょうか?
藤田:普段から誰かの力になるようなことをしたり、応援したりしておくことです。これはビジネスにも人間関係にも、同じことが言えますよね。
僕の場合だと、善意で起業相談に乗った方がお客さまになってくださったり、応援を頼まれた2つの別々のクラウドファンディング同士を結びつけて、どちらのコミュニティも目標金額を達成して感謝されたこともあります。
このことは、PRの概念である、全てのステークホルダーと長期的に関係構築することでビジネスとしても発展させていく、という姿勢に通じると思います。
もし何かをPRしたいと思うのであれば、見返りを求めず、必要な人に手を差し伸べたり応援したりすることで信頼関係をきずくことができ、結果的にファンづくりにつながっていきますよ。
───企業が今だからこそやるべきPRとは、どんなことだとお考えですか?
藤田:企業の規模が大きくなればなるほど、もともと持っていた社長さんの熱い想いが、従業員やお客さまとの距離が離れてしまうことで、伝わりづらくなってしまうものですよね。
だから、企業という形をつくるよりも、企業に存在する1人ひとりのキャラクターでPRをするのがおすすめです。親しみやすさや馴染みやすさといった要素をもっと重視してほしいですね。
「企業」となると個人に比べて人の温かみというか、温度感が足りない気がしませんか?
いまは、企業も形式的で権威的であることよりも、親しみやすさを持っていた方が愛される時代に変わってきています。
たとえば、合同求人説明会で人事担当者が一方的に話すのではなく、若手の社員さんが前に出て、学生さんの視点に近い方と質疑応答の時間を設けるとか。そういったところから生まれる親しみやすさがPRにつながっていくんです。
これからのPRに必要なのは、共感を生む発信やオリジナリティ
───企業のなかの個人としてPRをするときに大切なことは、どのようなことでしょうか。
藤田:思い切って、自分のキャラクターや想いを発信しつづけることです。
なぜこの場にいて、なぜこの仕事をしているのか、みなさんそれぞれのストーリーがありますよね。
自分たちの物語を発信することをストーリーテリングと言います。売りたいサービスや商品のことではなく、想いや在り方を伝えることで、相手の心に届き共感を呼ぶものです。SNSなどで発信しましょう。
全然うまく言えなくてもいいんです。たとえまだ拙ない言葉だったとしても、全部ひっくるめて表現することでオリジナリティが生まれ、等身大のその人自身にファンが自然とついてくると思いますよ。
───PRに携わる方々にアドバイスをお願いします!
藤田:企業も個人も、型やルールを過剰に守って、それに自分をあてはめようとしない方がいいですね。それをしてしまうと、個性が浮き立たないからです。
もちろん人を傷つけないマナーや思いやりは大切ですが、過剰な規制は個性まで消してしまいます。
たとえば文章を書くときには、構成やテンプレートなどは一旦置いて、等身大の自分を信じて、思うように表現してみてほしいです。表現しつづけていたら、絶対にブラッシュアップされてオリジナルに変わっていきます。
まずは、既存の生き方ややり方にとらわれず、オリジナリティを大事にしてください。
インタビューを終えて
こんにちは!この記事を担当させていただいた稲森静です。
藤田さんから紡がれる言葉の一言ひとことは、熱意とエネルギーとあたたかさに溢れていて、心に響くものでした。
お話をお伺いして、サービスをより多くの人に届けるためには、ビジネスとしてではなく「人間らしさの延長にある温かみを持ってPRすることが、自然とファンづくりにつながり、そして結果がついてくる」というような印象を受けました。
わたしはPRを勉強しはじめたばかりなので、このようなタイミングでお話しをお聞きする機会をいただき、携わり方を考えるきっかけになりました。「らしさ」「戦略」「親しみやすさ」「すべてのステークホルダーに対する想い」、これらを意識し、大切にしていきます。
みなさまはPRをする上でどのようなことを大切にしたいですか?
(取材・執筆:PRライター 稲森静 / 編集:PRライター Hitomi Fukuoka)
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