いま、「時代の変化に左右されずに経営をつづけるにはどうしたらいいのか」と考えていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。
今回お話をお伺いしたのは、飲食店のPR支援などを行う株式会社CRIENのおふたり。
飲食店舗運営と長年のIT業界での経験を基に培ったノウハウで、飲食店IT導入支援&システム開発をメイン事業としています。コロナ禍も急遽テイクアウト・デリバリーサービスを飲食店へ無償で導入のサポートを実施。多くの飲食店から依頼が寄せられました。
同社CEO佐藤淳一さんとCOO苅部大樹さんに、苦難に負けずに経営をつづけるためにやるべきPRについてPRライターMina Nagashimaが取材しました。
来店機会を増やすには、徹底的にお客さまの目線に立って考えることが大切
───多くの飲食店のサポートをするうえで、どんなPR支援をされているのでしょうか。
佐藤淳一(以下、佐藤):まずは、どうすれば飲食店に人が来るのかを、お客さまの目線に立ち、リアルな体験に基づいて考えます。
飲食店であれば「看板を変える」「貼り紙を出してみる」など目の前に通りかかるお客さまに対してのアプローチに頼ってしまうことが多いのですが、たくさんの飲食店がある中で自分のお店を選んでもらうことってカンタンではありません。
そこで、まず自分たちがお客さまだったならどのようにお店選びをするかを考えます。たとえば、デートなら「おいしいワインが飲めるお店ってどこだろう?」と考え、SNS・食べログ・Googleなどで検索をしてからお店を決めます。
このように、実際のユーザー体験からお客さまに寄り添ったPR戦略をつくることをおすすめしています。そうすることでやるべきPRの手段が明確になってくるんです。
苅部大樹(以下、苅部):とくに、飲食店は利益率を高くしづらい商売と言えます。どんなにおいしい料理をつくり、接客をよくしても、それだけでは経営をつづけることがむずかしくなってしまうことは少なくありません。そのため適正なところにコストをかけることが大切です。
───具体的にどのようなPRから始めればよいのでしょうか。
佐藤:ひとに届けることを意識し、オンラインのどこに自分たちの情報を掲載したら見てもらえるのかを考え、それをオフラインに結びつけていくことです。
いまってネットで検索してWebサイトやアプリで注文し、そのまま来店して持ち帰るテイクアウト方式もあり、常に人間がオンラインにいる状態になってきています。
オンラインでは、たとえば検索した際にGoogle マップの検索順位をあげておくことでお店を見つけてもらいやすくなるなどネット上の人通りを意識した情報の上げ方をすること。
またオフラインでは、実際に来店したお客さまというのはお店でご飯を食べてくれた1番コアなユーザー体験を持っています。なので、SNSやLINEアカウントなどのコミュニケーションツールを登録してもらい、店舗から帰った後にもオンラインでメッセージを送れるようにしておくこと。
このように、オンラインとオフラインの垣根がなくなってきているからこそ、きちんとオンラインに情報をあげておくことやオンラインとオフラインの循環をつくることで来店機会を高めることができます。
経営軸を見つめ直すことで時代に左右されずに営業をつづけることができる
───オンライン上の発信はどのように行っていけばよいのでしょうか。
佐藤:前提として、PRにおいては情報発信することがすべてではないと考えます。発信を目的にするのではなく、お客さまとの関係を構築していき、ファンづくりを行うことを目的として発信をしてくことが大切です。
「いまはSNSが流行っているからとりあえずやってみよう」というのは、手段と目的を間違えてしまっています。なぜなら、SNSで発信をしたら急に来客が増えるのかというとそうではなく、増えたとしても一時的なものになる可能性も。地に足をつけて、目線を高くして、先々の展開まで考えるようにしましょう。
だれになにを伝えたいか、なにが目的なのかを、しっかり考えることが大事です。もちろん、常に見込み客と接点を持つことや、お客さまを呼ぶことは重要ですが、「だれとどういうリレーションを結んでいくことが飲食店にとっていいんだろう?」ということをまずは考えてみてください。
───飲食店のPRにおいて大切なこととはなんでしょうか?
佐藤:その会社の価値観や主義によって、PRのやり方は全然ちがうものになります。自分たちにとって適切なPRを考え、それを事業の戦略や、計画にきちんと結びつけることです。そうすることでなにが起ころうと時代の変化に合わせて自分たちも動くことができます。
また、時代の変化を読むことも大切です。いまは時代が大きく変わっているので来月の人びとの生活スタイルすら読むことがむずかしいんです。「来月はどれぐらいみんな外食しに行くだろう」「テイクアウトは、どれくらいつづけられるだろう」と、少し先の未来を予測しながら自分たちなりのPRを考えて進んでいくことが、これからの時代は重要になってくると思います。
戦略的な事業は、関係者との信頼関係をベースに
───今回どうしてデリバリーサービスを「無償」ではじめたのでしょうか。
苅部:僕たちの会社のPRとしては、オンラインでの発信ではなく、リレーションを築いていくことに重点をおいています。
常日頃から実際に飲食店へ足を運んだり、新しいサービスを導入する際に店長さんからお願いを受けて、12店舗分のタブレット用のラックを探しに行くなど飲食店運営へ寄り添い先回りをしたサポートをしています。そのなかで、デリバリーサービスやテイクアウトシステムを導入したいけど、どれがいいのかわからないといったご相談が多く、コロナの影響もあったため無償支援を決めました。
普段から、自分たちがどんな人たちと関わり合って働いていくのかを意識しながらコミュニケーションをとることを心掛けてきました。だからこそ、いち早く悩みに気がつき今回のように新しいサービスを立ち上げ、多くの飲食店をサポートすることができました。
───貴社にとってのPRとはなんでしょうか。
佐藤:僕たちは、地域の飲食店から日本を盛り上げることをビジョンに置いています。そうするうえで、飲食店・飲食店のお客さま・その地域・周りの飲食店向けサービス事業者さんなどとの関係を大切にしています。
地域の中に入って自分たちも一緒に歩みながら、どうやって中長期的に自社のITのシステムやサービスを活かしていくのかということを戦略的に考えています。
「コストを削減したら絶対に得なので、うちのサービスを使ってね」というようなロジックだけを伝えても、人には刺さりません。想いを大切にして1人ひとりと丁寧に向き合い、関係を構築していく。そのパッションを持ちつつ、ロジカルに考え戦略的にビジネスをしていくことがPRだと考えています。
インタビューを終えて
こんにちは。今回執筆を担当させていただいたPRライターのMina Nagashimaです。
佐藤さんと苅部さんのお話をお伺いして、PRは戦略的な部分も大事ですが、人との関係性を構築していくことがいかに大切であるかということを、改めて感じました。ロジックだけでは伝わらない想いを大事にしながら、自分たちの事業と掛け合わせていくというのは飲食店だけでなくどの業界、業種にも当てはまることです。
まずは、自分がどんな人たちと関わって仕事をしていきたいのか、またはしているのかを考えたうえでPRに取り組んでいきます。
(取材・執筆・編集:PRライター Mina Nagashima)