この記事の初稿は2015年5月25日に書いたものです。
※旧題:マジメが取り柄な著者・編集者が、ネットで本を宣伝するには
それから約半年。2016年1月24日現在、おかげさまで「本 宣伝」でGoogle1位に表示されています。
出版点数が増える昨今、それだけ多くの著者あるいは出版社の方がその宣伝方法を探されているのでしょう。
そこで記事の内容を見直し「めざせ重版!ネットで本を宣伝したい著者に贈る5つの方法」と題して、改めてその方法をご紹介することにしました。
これから紹介する方法はネットが苦手でも比較的簡単にできることばかりです。ぜひ著者・出版社で協力して行ってください。
プロローグ
「いやー、初版が勢い良く捌けたら、バシッと広告出せるんですけどね……」という出版社の決まり文句に対する、「いや、その初速を出すためにどないすんねん!」というのは著者あるある風景ではないでしょうか。
はじめから王様のブランチのブックコーナーに乗れば誰も苦労しない訳ですが、千里の道も一歩から。売れないから仕方ないとじっと座っているわけにもいきません。書店営業は当然としてネットでもできるかぎり宣伝したいですね。
そんな悩める著者・編集者の皆さまに向けて、費用をかけずにできる真っ当なネットプロモーションを5つご紹介します。
1.自身(出版社)のHP、ブログで紹介
やらない理由がないプロモーションですね。どんなHPでも下記のような書籍紹介バナーは簡単に貼ることができます。
ベストセラーズ
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僕は前職の出版社でWebプロモーションを担当していましたが、当時のブログだけで半年で約300冊ほど販売しました。この数字が多いか少ないかの判断はお任せしますが、著者自ら販売できる冊数が多いに越したことはありません。
プロモーションは事前に仕込む
インターネットにおいて広告を使わずに書籍を販売したいのであれば、出版より以前に地道にコンテンツを発信してファンを獲得する以外にありません。
昨今”ネットで話題の”という枕詞がついた書籍カバーを目にする機会が多いですが、それは本人がHPやブログを通じて一定数のファンを持っておりそこからの購買数が多いという証拠でもあります。
弊社でも販売直前になってご相談をいただくケースがありますが、正直なところ出版が決まった段階で販売日までに着々と仕込んでおかないと効果は著者の知名度に依存してしまいます。
プロモーションは必ず測定する
ネットでのプロモーションの多くは「本を買ってもらうこと」をゴールに置きます。大別すると以下2つの動線に分かれます。
本を紹介したリンクをクリックしてもらう
HPからにせよブログからにせよ、まずは本を紹介してリンクをクリックしてもらう必要があります。このクリック件数を媒体や設置箇所別に測定することで、どのプロモーションがより効果的なのかを測定できます。
簡単なのはGoogle URL Shortenerを使った計測です。ボックスに測定したいURLを入力して、隣のShorten URLボタンをクリックすると計測できる短縮URLが発行されます。
発行されたURLを設置することでそのクリック件数を管理画面から測定できます。
※画面右端のCLICKS欄にクリック件数が表示されます。Detailsを見ると日毎の状況も確認できます。
実際にAmazonなどで本を買ってもらう
続いてネットストアで本を買ってもらった件数を測定します。
これはもっとも簡単なのはアフィリエイトリンクを使うことです。サイトの美観を損ねず表示して裏側で件数も測定できる仕組みを利用しない手はありません。件数の測定には2つの手順が必要です。
- Amazonや楽天などのアフィリエイトシステムに登録する
- アフィリエイトリンクを設置する
それぞれの手順は公式ページで紹介されています。
ninoyaではamazletというツールを利用してアフィリエイトリンクを設置しています。きれいにリンクを設置できるのでおすすめです。各種ネットショップへのリンクを一括で設置できるヨメレバといったツールも便利です。
ポイント
本を販売する前にそれを紹介できるサイトづくりを先に始める
ネットショップへ送客したユーザー数を測定する
実際にネットショップで本を購入したユーザー数を測定する
測定結果を見て、紹介文言や設置箇所を調整して効果を最大化させる
以下に紹介する内容も上記作業が前提となりますので必ず押さえてください。
2.著者のTwitterアカウントで紹介
校了前後で「入稿終わったー!」「本出しますー!」とFacebookで一報を入れつつ、小刻みに宣伝されるケースを目にします。もちろんやるべきなのですがTwitterでの紹介も同様に進めたいところです。
と言うのも、Facebookは基本的に一人1アカウントで友人ベースで繋がっているため、露出の幅が限らます。一方でTwitterは一人複数アカウントを有しているケースが多く、趣味嗜好で使い分けている面からも拡散力が高いです。
以前、電通総研のこんな調査結果も話題になりました。
もう一つTwitterに利点があるのは、カバー画を書籍のカバーに、アイコンを書籍の表紙に気楽に変えられることです。特にアイコンを書籍の表紙にすることで、Twitterにおける会話やリツイートすべてに表紙が展開されます。なかなかの露出効果です。
例えば、出版オファーの多い堀江貴文さんのアイコンとカバー画像は出版毎にこまめに変えられています。以下は『我が闘争』での例です。インパクトがありますね。
実は過去の堀江さんの本も、大半が表紙・帯・カバーのいずれかにご本人の顔写真が載っています。出版社が変わってもそれは変わらないのは、Web上でのプロモーションを踏まえたご本人のリクエストかもしれません。
Twitterのカバー画像は「1500px×500px」、プロフィール画像は「400px×400px」のサイズになります。特にカバー画像は端末によってサイズが変わるので、きちんと解像度が高くデザインされた画像が必要なのでご注意ください。次の記事も参考になります。
ポイント
本を販売する前からTwitterを日常的に使用する(慣れておく)
カバー画像を書籍のカバー画像にする
アイコンを書籍の表紙画像にする
いつも通りTwitterを使ってコミュニケーションする
3.読者コミュニティの作成
本の面白さの一つに、中身をお互いに語り合える側面があります。同じ1,500円を払うなら読んで終わる本よりも、読んだ後に体験につながる本を買いたいものです。それも著者と直接コミュニケーションが取れればそんな素敵なことはありません。
とはいえ、一つひとつのコメント全てに著者が対応するのは非現実的です。そこでお勧めしたいのが、著者ではなく書籍アカウントでのコミュニティ作りです。
例えば、楽天大学学長の仲山進也さんが出版された『あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか ネット時代の老舗に学ぶ「戦わないマーケティング」』には、書籍名のFacebookページがあります。
ここでは発売日はもちろん、書籍紹介のリンク、イベント紹介、重版決定など、著者とファンが一体となって、志のある多くのネットショップオーナーの手に渡るようにとコミュニケーションが図られています。(それにしても、しにものぐるいさんのハンコがかわいいですね。)
あるいはAV監督の二村ヒトシさんの著作『すべてはモテるためである』『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』では読者の間で読書会がよく開催されています。そこに著者である二村さんが参加されるケースもしばしばあり、ベストセラーの背景には読者の熱量と、読者に対する著者の姿勢があることが伺えます。
ポイント
本を購入した読者用のコミュニティを用意する
コミュニティが主体的に盛り上がる材料を提供する
時に著者もその輪に加わる
4.書評サイトへの献本
単著を出すような方であれば友人・知人への献本は一般的に皆さま行うと思います。
ところで本を語り合うという点ではネットには多くの書評コミュニティがあります。参加されていない人はピンと来ないかもしれませんが、その熱量は相当なものです。こうしたサイトに対して献本するのも一手です。書評に取り上げられるかは、あくまでサイトユーザーに委ねられる前提で送りましょう。
代表的な書評サイトについては以前まとめました。 沢山の方にシェアいただき「本当の本好きは書評サイトなんか見ない」、「真の書評サイトはAmazonだろ」的なご意見も頂戴しましたが(笑)ぜひ参考にしてください。
ポイント
発売日に手元に届くよう友人、知人への献本を手配する
同時に書評サイトへの献本も準備する
献本する=書評が書かれるではないので過度には期待しない
5.書店とのコラボレーション
音楽業界はCDが売れなくなって以降、ライブの価値が取りざたされています。同様に書籍が売れない昨今では企画力のある書店に大きな注目が集まっています。
いつの世もタフな感性を持つ人が、「業界が斜陽だからこそ自分が盛り上げる」と狼煙を上げます。こうした書店はネットからの注目も高いので、お互いにメリットのある企画を立てられれば協力関係が築けるでしょう。
都内であれば例えば次のような書店です。
僕自身も以前に『愛は技術』のプロモーションで天狼院書店さんに伺いました。
ポイント
書籍販売と合わせてイベントを行えるように準備する
企画力や集客力の高い書店とのコラボレーションを検討する
顧客、書店、著者それぞれにメリットが生まれるようにする
まとめ
めざせ重版!ネットで本を宣伝したい著者に贈る5つの方法として、以下を紹介しました。
1.自身(出版社)のHP、ブログで紹介
2.著者のSNSアカウントで紹介
3.読者コミュニティを作る
4.書評サイトへの献本
5.書店とのコラボレーション
いずれも広告費は掛からず、その気になれば明日から始められることです。一方で覚えておきたいのは、書籍は店舗で火がつかない限り売上の伸びには限界があるということです。
「○○さんや△△さんはネットから火が付いて……」というフレーズをしばしば耳にしますが、そこで名前が上がる著者は別格です。ネットで火が付いたというよりは、もともとTwitterで5〜10万前後のフォロワーがおりファンとの信頼関係を地道に作り上げてきたからこその実売です。
しかし、ここで紹介した方法はそうしたSNSフォロワーがほとんどゼロに近い状態でもできることに絞っています。あとは一つひとつの手間を惜しまずに丁寧に行うだけです。もちろんそれがいちばん大変なことではありますが。
エピローグ
新刊販売はネットはもちろん、書店回りがとても重要です。その重要性については次の記事が核心を付いています。無料で全文公開されているのでぜひ読んでみてください。
記事に登場するもしドラのヒットで知られる加藤貞顕さんがcakesを立ち上げたのは、書籍の初速販売がその後のマーケティングを決める構造を歯がゆく思ったからかもしれません。
cakesの認知が高まるにつれ、「本の中身を無料で先出しすることは売上を落とすものではない」という気風ができたのは何よりだと感じています。ネット上においては明らかに効果のあるアプローチです。1,500円の壁を超えるために何をするか。
本ページをご覧いただいた著者・編集者さまの想いの詰まった本が、それを必要とする一人でも多くの人の手に渡りますように。