セミナーやコンサルティングの中でしばしば受ける質問があります。それが「自社の強みをきちんと理解して表現しているはずなのに、なぜかwebで集客できない」というものです。
webマーケティングを考える際に、自社の強みや他社との違いをもって差別化を図るケースは少なくありません。確かにこれは一般的な手法ではあるのですが、なぜ集客につながらないのでしょうか。
そこには売り手が「伝えたいこと」と、買い手が「知りたいこと」にギャップがあるからです。
あるデザイン会社の悩み
ここではモデルケースとして架空のデザイン会社を挙げて説明したいと思います。
そのデザイン会社は紙からwebまで総じてクオリティが高く、HPの実績欄を覗いてもずらりと優れたデザインがそろっています。中のメンバーも顔写真入りで紹介されており、安心して仕事を頼めそうな雰囲気が感じられます。
また、「相談のしやすさや親身さ」を自社の強みに位置付け、HPの随所でそうしたフレーズが紹介されます。確かにデザインを発注しようと決めている人にとっては望ましい要素がそろっています。
相談のしやすさを求めている人の行動
ところで、何がしかデザインに関する相談先を求めている人は、web上でどのような行動を取るでしょうか。
そのデザイン会社を予め知っていればHPを見て「相談してみよう」と行動に移すかもしれません。しかし、本来web上で集めるべきは自社のことを何も知らない人たちです。
もし、すでに自社のことを知っている人を集客するためのものであれば、それはHPというよりもポスターと同じです。
「相談しやすさ」の因数分解
相談のしやすいデザイン会社を探すユーザーが『相談しやすい デザイン会社』と検索することはありません。彼らは自身が求めるゴールへの最適解へと導いてくれる会社を探しているからです。その最適解はもちろん依頼したい商材で異なります。
ところでデザイン会社の話をよく聞くと、一つの特徴が見えてきます。それは企業のロゴよりも製品のロゴ制作が多かった点です。なぜ製品ロゴの方が多いのかを尋ねると「デザインを通じて売上によい影響を与えたい」という想いが見えてきました。
それはきちんと相手の商品や考えをヒアリングし、デザインを通じて具現化するからこそ現れる成果です。結果が出るからこそ説明にも熱が入るし、似た案件が続くというわけですね。
つまりデザイン会社が語る「相談のしやすさ」とはイコール「売上に影響を与えるデザイン」であり、求めるターゲットはデザインで売上を拡大したいユーザーになります。
ユーザーへ伝えるべきこと
相談のしやすいデザイン会社を求めるユーザーという漠然とした像を、「自社商材を持っておりデザインを通じて売上を上げたいユーザー」に捉え直すと同時に彼らの姿が見えてきます。例えばこうした検索行動です。
『ロゴ デザイン 売上』
『パッケージ デザイン 売上』
『商品 顔 デザイン』
こうしたキーワードで答えを求めるユーザーに対して、デザイン会社は多くの知見を提供することができます。例えば次のようなコンテンツです。
『ロゴ デザイン 売上』
製品におけるロゴのデザインは売上にどう影響を与えるか?
『パッケージ デザイン 売上』
パッケージデザインで劇的に売上が改善した5つの事例
『商品 顔 デザイン』
商品の顔ともいえるデザインはどのようなプロセスで決めるべきか
多くの実績を持つデザイン会社だからこそ伝えられる事例をコンテンツ化することで、本当に訪ねてほしいユーザーに直接アプローチすることができます。
まとめ
デザイン会社はしばしばHPの美しさやポートフォリオ性を重視します。しかし、それではただ「私たちは親切で美しいデザインを提供できます」と宣言しているだけの状態です。
・自分たちが持つ親切さとは、具体的に誰が望む親切さなのか
・その価値はどのようなコンテンツを触媒にすれば伝わるのか
自社の強みを打ち出すUSPの炙り出しは確かに効果のある手法です。しかし、それだけでは集客はできません。
・自社の強み
・自社と他社の違い
これらは両方とも主語を自社の置いた考え方です。
・顧客は誰か
・顧客は何を知りたがっているのか
このように主語を顧客側に置くことで、本来HPに掲載すべきコンテンツが見えてきます。
web上での検索・購買行動は常に知りたいという動機に基づいて行われます。だからこそ顧客側の目線で伝えるべきことを考えないと、どれだけ内容が優れていても集客できないHPになります。