ブランディングのできるHP(ホームページ)が欲しい。
売れるLP(ランディングページ)も欲しい。
でも両方を同じテイストで作ることはできない。なぜならば企業としての信頼性を損なってしまうからだ……という質問をしばしば受けます。
これはなかなか根が深い問題でして、企業や担当者におけるブランディングやマーケティングに関する意識の乖離が根っこにあります。
今回はHPとLPの使い分けからこの問題を考えてみましょう。
HP=マーケ部門、LP=セールス部門
企業でよく目にする風景にマーケティング部門とセールス部門の対立があります。彼らがなぜ対立するかと言えば、次のような点が挙げられます。
マーケティング部門
市場を俯瞰して企業の将来の売上をつくる。
視点=マーケット
セールス部門
見込み客に対する課題の解決を図り売上を得る。
視点=見込み客
この対立はどちらが良い悪いの話ではなく視座の違いに起因します。極端にいえば次に売れる商品を考えるマーケティングと、今ある商品を売るセールスとでは重きを置く考えが異なります。
企業全体の活動で考えればマーケティングにおける次のポジショニングも、セールスによる売上の最大化もどちらも大切なことは言うまでもありません。
では企業のスタンスを表して次の売上をつくるHPと、いまもっとも売れる商品を売り込むLPは両立しない概念でしょうか?
セールスをしなければモノは売れない
顧客はお金を払う前に「本当にこれを買って良いものか」と逡巡します。それを、ただ傍観しているだけでは多くの人が離れていくでしょう。
セールスの仕事は顧客が悩む理由に対してソリューションを提示することにあります。その行動は傍から見れば、少なからず判断を自分たちが意図する方へ誘導しているように映ります。
問題は良かれと思って行うその行為は、ターゲット外の人から見ればあまり美しくは見えない点です。
LPは企業の営業活動が可視化されたもの
「縦長のHP」や「ペライチ」とも呼ばれるランディングページ。これらがなぜそのような形態を取っているかといえば、セールスにおける商談のストーリーをまとめた結果です。
いろいろなLPを見ていただければ分かりますが、大体はどれも同じような構成を取っています。売るために必要なストーリーは各社大きくは変わりません。
販促用のLPは昼下がりの都心のルノアールに近いのかもしれません。でも、そこで必ずしも問題のあるセールスが行われている訳ではありません。あくまで営業のプロセスが可視化されることで、ターゲット外の人が一種の防御反応をが示してしまうだけです。
そう考えるとLPを作るか否かが問題なのではなく、企業側がどこまで営業活動をWeb上で可視化させて良いのか。企業の体を表すHPと販売色が強いLPをどこまで結びつけるのかという問題になります。
Webが主戦場であるほどLPは必要
結論から言うと、対面での集客や営業活動に時間を割きたくない企業ほどLPは必要です。企業活動において営業は欠かせない以上、それをどこまで表に見える形でやるのかに尽きます。
もちろんAppleのようにセールスの香りが一切しないHPしか持たない企業もあります。これはブランド原理主義とも呼べるアプローチです。一般的な企業では現実問題として、ブランディングとセールスのバランスはどこかで落とし所を定めなければいけません。
事業としての戦略があり、ブランディング戦略があり、マーケティング戦略とセールスがある。これらがきちんと定まっていれば都度事業戦略やブランディングに立ち返らなくてもHPとLPの関係性は決まってきます。
ブランディングと販促は相反する概念ではない
上品だけど売れないブランディングHPと、下品だけど売れる販促LPという誤解はしばしば存在します。これはブランディングと販促の概念を正しく位置づけられていないために生じます。
ブランドとは顧客が受ける体験の一貫性から作られます。それはHPの印象、セールス、プロダクトを通じて得る体験のすべてが含まれます。
本人が営業から売り込まれた印象があっても、実際にプロダクトを使って自身がHPで受けた印象と同等あるいはそれ以上のものならば、受けたセールスに悪印象は持ちません。
大切なことはHPとLPそれぞれを何の目的で制作するのかを決めること。それらを適切なチャネルで展開し、適切な方法でPRしていくことにあります。