酒と泪と女と女

「シータは空から降ってこないし、商社マンは落ちた本を拾わない」あなたが誘わず誰が誘うの? アルテイシア×川崎貴子対談(第1回)

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オクテ女子のための恋愛基礎講座』を上梓された人気恋愛作家・コラムニストのアルテイシアさんと、昨年『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』を出版した女のプロ川崎貴子の初対談。全4回に分けてお送りする対談の第1回はオクテ女子におくる出会いの作りかたです。「私がうっかり落とした本を拾ってくれる殿方と出会いたい」そんなお嬢さまへお届けします。

アルテイシア
神戸生まれ。大学卒業後、広告会社に勤務。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。著書に『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『官能女子養成講座』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』など多数。

川崎貴子
株式会社ジョヤンテ代表取締役。ninoyaブログにて「酒と泪と女と女」を連載。婚活結社「魔女のサバト」主宰。著書に『愛は技術』『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』ほか。

 

 

川崎貴子(以下、川崎):はじめまして。今日はよろしくお願いします。著書などを拝見して素敵なご主人さまだなと思ったのですけど、改めて読者の皆さまに旦那さまとどのように出会われたのかを教えてもらってもいいですか。

 

アルテイシア(以下、アル):近所のバーでガンダムの話とかオタトークで盛り上がったのをきっかけに。夫は素人童貞だったんですよ、それも彼女いない歴=年齢の。はじめは「この人は無いな」と思っていたんですけど、会っているうちにその分かりにくい魅力に気付けるようになって。そうして結婚に至ったという感じですね。

 

川崎:日ごろのコラムでも旦那さんの、面白いエピソードが満載で。まったくアルテイシアさんが知っていることを知らないんですよね。

 

アル:そうなんですよ。オイスターバーに行こうと誘ったら「オイスターバーって何するところ?」とか言って。牡蠣を食べるところだよ!他に何をするんだよ(笑)みたいな。

 

川崎:そういうところがうちの夫と本当に似ていて。私も最初に出会ったのは飲み会なんですけど、私もう、朝からすごい飲んでて。朝じゃない、昼からかな?ワイン1本飲んで、その後生中3杯飲んで、ヒレ酒を5杯飲んでから出会っているんですよ。

 

アル:ヒレ酒まであおって臨んだんですね!

 

川崎:注文の時たまたま隣の席になったダンサーの夫に「あなたは何が飲みたいの?」って聞いたら、「あそこにあるパフェが食べたい」って言って。乙女か!と思って。で、私の周りは、そういう肉食系の経営者とか、弁護士とか、トレーダーとかそういう人たちばっかりだったので、皆がいる飲み会で「パフェが食べたい」とか言えない人たちなんです。本当は食べたくても。なので、ちょっと新鮮だったんですよね。

 

アル:年下の旦那さまなんですよね。

 

川崎:8歳下ですね。

 

アル:川崎さんと8歳下のダンサーって異色の組み合わせですよね。でも、すごく分かるなと思いまして。キャリア志向の女性って仕事のできる男性に惹かれがちですけど、結局そういう人と付き合ってもうまくいかないんですよね。

 

そういうギラギラした男の人っていうのは、やっぱり自分が上に立ちたい願望があるので。それに疲れちゃって別れる子がすごく多いですよね。

 

例えば「59番目のプロポーズ」が出た後、メディアに格差婚みたいな言われ方をされたんですよ。きっと川崎さんも同じだったと思うんですけど。

 

格差婚て言われたりとか、私のほうが学歴や収入が上であることに対して、もやもやとした気持ちはないのか夫に聞くと、「いや、そんなの気にもしたことがない」と言うんですね。

 

で、「もし君がレスリングの世界チャンピオンとかだったら、ちょっと気にするかもしれないけど」みたいなことを言ってて(笑)。それくらいジャンルが違う方がいいんだなと思うんですよね。バッティングしないんで。

 

川崎:それはうちの夫もそうですね。私も昔「すごい格差婚とか言われてかプライド傷つかない?」と夫に尋ねたことがあるんですけど、何かにプライドはあるんですよ。でもそれが世間的にはトンチンカンな方向で。パフェが好き!とか。

 

何かを深く追求するのが好きだから、今はそれがボディトレーナーという職業で。ダンサーだったころもそうなんだけど、身体オタクなんですよ。身体の関節がこうなっているからここが痛くなるみたいなのを、こう、どんどん掘っていく。すっごい狭く深く掘っていくんですよ。それはもう絶対私とバッティングしない穴なんで。

 

アル:バッティングしないのは大事ですよね。

 

川崎:ええ、どんなに掘られてもこっち来ないんですよ。なので、マウンティングされたり闘ったりするところがないので敵になり得ない。

 

アル:「男尊女卑アレルギー」というのを新刊でも書いてますけど、仕事を一生懸命している女性には多いですよね。男尊女卑は絶対イヤで、旦那や彼氏に偉そうにされるとか許せないのに、なぜか恋愛においてはすごく仕事ができる人に憧れてしまう。それって相容れない条件のバッティングですよね。「女性に対して誠実で、でも余裕があってエスコートできる人」みたいな感じで。

 

川崎:女性の中に矛盾した思いがありますよね。馬鹿にされたくないとか、頑張りたい、フェアでいたいと思いながらも、恋愛に対してはある種のファンタジーを男性に求めてしまうのが。それともう一個あるのは、全体的に男性に対する尊敬のポイントが狭い。そこだけステレオタイプっていう感じで。

 

アル:「仕事ができる」という一点だけだったりとか。自分が20代前半の時もそうでしたけど、自分が仕事に自信がないんで、その分仕事のできる男性に対して「そこにシビれる!憧れるゥ!!」みたいな。

 

川崎:それはわかるんですよね。麻疹みたいなものです。でも30歳くらいになってきたら、ある程度仕事も覚えてきて、違う視野で男性の尊敬ポイントを見つけられると幸せだなと思って。本でも仰っていましたね。

 

アル:自分の中の男性の尊敬ポイントや、譲れない条件、その優先順位を考えたことがないっていう子が多いですよね。例えば「とにかくラーメンを食べたい」なら、適当にそこらのラーメン屋に行けばいい。でも「生涯これだけを食べ続けたい、究極かつ至高のラーメン」を見つけるには、とにかくいっぱいラーメンを食べないとわからない。

 

で、自分はどんなラーメンを美味しいと感じるか、自分の舌で味合わないとダメですよね。世間で美味しいと言われているラーメンの指標を頼りにしても、それが自分にとって美味しいかなんてわからないし。

 

「どんな男が好きなの?」と聞かれて「一緒にいて楽しい人」と答えるのは、「どんなラーメンが好きなの?」と聞かれて「美味しいラーメン」と答えるようなものですよね。明確にすべきは、自分がどんなラーメンを美味しいと感じるかなのに。

 

川崎:彼女たちにとってはそれが憧れとか高望みなんじゃなくて、「だって自分のお父さんはそういう家庭作ってたもん」というところにもありますよね。妻子を養って、きちんと大学まで出させてっていう。うちみたいな普通のお父さんがやっていたのだから、そこが最低ラインっていう風に切っちゃってるのかなって気がしていて。

 

アル:そうですね。高学歴な女性の方が結婚できないのは、親のレベルが高いからっていうのはありますよね。例えば自分が留学させてもらって、子どもにも留学させてあげたいとか、自分が受けたくらいの教育は子どもにしてあげたいと思う。その気持ちはわかるんですよ。

 

ただ、そこまでお金をかけずに留学させる手段がないわけではない。だから、もっとリアルに具体的に考えればいいのにと思うんですよ。今いい学校に入れたからって、将来いい職に就けるとは限らないし。起こっていない将来を考えすぎて足切りをしてもあまり意味が無い。

 

川崎:だからマッチングが難しくなっちゃうんですよね。

 

アル:そうなんですよね。例えばオクテ女子とどんな出会いがいいの?と喋ってると、「私がうっかり本を落として相手がそれを拾ってくれるみたいな出会い」って言うんですね。

 

川崎:ないから!

 

アル:そう。「じゃあ本を落としているの?」と聞くと「いえ、落としてません」って……落としてない本をどうやって拾うんだ!一休トンチ話か!みたいな(笑)。

 

それって「働くのが面倒くさいから、宝くじが当たればいいのに」っていうのと同じですよね。努力するのが面倒くさいから、天から彼氏が降ってくるのを願ってしまう。「自然な出会いが良い」って言葉は、そういう宝くじ的なラッキーを夢見ているのと同じですよね。

 

川崎:男性は男性で、婚活とかやりたくないっていうプライドがあるんですよね。何かにお金や時間を投じて、自分が変わってモテるようになりたいっていうこともやりたくないし。今の僕のままで理想の女性が降ってくるのを待ってる。

 

アル:シータですか?

 

川崎:降ってこないじゃないですか、現世に。

 

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アル:シータ降ってこないですよね。「ラピュタは本当にあったんだ!」って言うけど、あれはフィクションですから。

 

川崎:見ていると、女性の方が恋愛や結婚に興味関心が高いのは事実ですよね。あと努力もするじゃないですか。だから女性側から動いた方がこれはもう早いだろうと。

 

ただその、努力の方向性を間違えないことが大切かな?と。女磨きとか一切やめて、自分の視野を広げるとか、行動パターンを変えるとか。そういうのを個々の状況に併せて伝えたくて勉強会をやっているんですね。魔女のサバトっていう。

 

アル:視野を拡げるのは本当に大事ですよね。私は物件探しに例えてますけど、最初はみんな「駅近で、2DK以上で、家賃は8万円以下の築浅で」とか言うんですよ。

 

でも、不動産屋に行って物件を見てまわるとわかりますよね。そんなの残ってても事故物件だ、みたいな現実が(笑)。それで「駅から近ければ他は大概譲れるな」とか「駅から遠いけど、なんかここはしっくりくるな」とかわかってくる。物件は変わってないのに自分の目が変わってきますよね。

 

川崎:それはやっぱり見ないとダメってことですよね、軒数を。

 

アル:そうだと思います。別に付き合わなくていいので、デートすればいいんですよ。普通に食事に誘えばいい。オクテ女子って、肉食系女子は違う星の住人だぐらいに思ってるんですけど、別にそこまで構えなくていいんだよっていう。

 

女の人から誘う方が簡単じゃないですか。男はロマンチックとかラグジュアリーとか求めないし、むしろ庶民的な店の方が喜ぶし。「この前こんな美味しい焼き鳥屋さん見つけたんだけど?」とか言って、男の子が「いいなー、オレも行きたいなー」みたいなことを言ったら、「じゃ行こうよ、いつにする?」って日取りを決めて。その一瞬でもうデートができるわけですよね。でも、それをしないですよね。

 

川崎:仕事の現場やキャリアビジョン作成の際にもそうなんですけど、軽はずみに人に迷惑かけちゃいけないっていう真面目な女の子がすごく多くて。まさにアルテイシアさんの本にあるオクテ女子だなと。

 

まだ遠い先のことを不安に抱えちゃうんですよ。恋愛で言えば「他に好きな人ができるかもしれない」、「この人に誤解させちゃうかもしれない」とか。

 

キャリアであれば「私、もしかしたら来年結婚してるかもしれないから、こんなプロジェクト受けられない」とか。

 

アル:産んでもない子の年を数えるみたいな感じですね。

 

川崎:そう。でも今のところ何にもなさそうだよねと尋ねると「いや、でも来年のことは分からないんで。商社マンと結婚しているかもしれないし」みたいな。その商社マン目の前にいないよねっていう。

 

アル:いないですね商社マン(笑)。

 

私も10年ほど前、女友達に「彼氏欲しかったら実家出たら?」と言ったら「でもなんか、私も結婚して、いずれ家を出て、お兄ちゃんも結婚してってなったら、その時親が一人になってしまうから、今は同居して……」って。でも兄妹とも結婚してないんですよ、現在も(笑)。

 

アル:なんでしょうね、いらぬ皮算用をしますよね。

 

川崎:あれは多分、生真面目さゆえなんですよね。

アル:あとは「自分から誘うほどじゃないし」とか。「ほどじゃないは禁止!」って友達にも言ってるんですけど。「誘うほどじゃないし」「付き合うほどじゃないし」とか言ってる間に、鬼籍に入っちゃうよ!っていう。

 

川崎:もったいないですよね。良い子多いんで、本当にオクテ女子って。

 

アル:そうなんですよね。

 

川崎:私の知り合いでとてもモテる女性がいまして。彼女は本当に才女で、ちょっと天才的な人なんですけどね。彼女は歩いていると「あ、あの人もいいわね」「あの人はダメね」「あの人とはできないわね」「あの人とはできる」ってずっと言ってるんですよ。聞いていると、できる相手多いなーと思って。

 

アル:それは楽しいですね(笑)できる相手が多いんですね。

 

川崎:多いの。その数に結構感心してたんですけど、やっぱり常日頃そういうことを考えてるんですよね。だからかモテるんですよ、めちゃめちゃ。

 

アル:いやー、でも本当に、そういうことをどんどんしていくといいですよね。それこそエクササイズだと思って。バーとかに行って、この人とできるかしら?とか、この人どんなセックスするのかしら?とか。

 

私はバーに行くと、淫らな妄想しかしてないですよ。それも、微に入り細に入り。こういうところにデートに行き、その後こういう感じでラブホに行き、ラブホに行ったらこういう感じでキスをして服を脱がされ……みたいな。本気で妄想していると、本当にしたような気になるんです。

 

川崎:一戦終わってますね。

 

アル:そう(笑)!だから実際に会う時には完全に恋人同士みたいなテンションになってるんですよ、こっちは。そうすると本当に恋人同士になれますね。

 

川崎:なるほどねー。

 

アル:恋人同士のような親密さやイチャコラ感が二人の間の空気に生じますから。

 

川崎:でも女の人って同性の目もあるから、変に色気を出してはいけないと考えたりしますよね。あとやっぱり親から言われ続けてきたものとか。そういう、なんていうのかな、女性性を出すな的な。いろんな鎧みたいなのがあると思うんですよね。だからすごくね、そこがハードルが高いんだと思うんですよ。

 

アル:そうですよね。自分はそんなキャラじゃないみたいな、キャラに縛られてますよね。

 

川崎:でもそのキャラって誰が作ったの?って尋ねると、本人もよく分かってないんですよね。友人にちょっと男好きって言われたことがあってとか、ちっちゃい時にお母さんから変な目で見られたとか。たまたま変な番組を見てる時に。

 

だから、それを一個一個解剖したら大したことじゃないんですよ。今の自分にとって。でもそういう些細なことで自分が縛られているっていうことに気づいてない。だから自分で自分を縛っちゃってる人が多いですね。

 

アル:そもそも人間て本当にカラフルじゃないですか。例えば、北斗晶さんがプロレスラー時代にマイ竹刀入れを手作りされてたってエピソードがあるんですけど。それって手芸も好きだしプロレスも好きだっていうだけの話ですよね。それが「北斗さんらしい」ってことで。人間には男らしい面も女らしい面もあれば、弱い面もあれば強い面もあって。すごく多様ですよね。

 

川崎:多面的ですね。

 

アル:その多面性こそが面白いのに、自分は何色かって決めつけちゃう。自分で自分にレッテル貼りをしてしまう……それってすごくもったいない。「自分はこうだ」と決めつけず「こんな自分もいるんだ」と面白がってほしい、もっとのびのび自由に生きてほしいなと思います。

 

(第2回に続く)

 

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川崎貴子

リントス株式会社代表。経営者歴21年。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女のプロ」の異名を取る。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚。8歳年下のダンサーと2008年に再婚。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(大和書房)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(ベストセラーズ)、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、二村ヒトシとの共著に『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(講談社)等がある。

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