『オクテ女子のための恋愛基礎講座』を上梓された人気恋愛作家・コラムニストのアルテイシアさんと、昨年『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』を出版した女のプロ川崎貴子の初対談。全4回に分けてお送りする対談の第3回は男女間のコミュニケーションについてです。古来より男女間で争われる「私の脳内ツイートをあなたが読み取ってよ」問題について二人が語り合います。
アルテイシア
神戸生まれ。大学卒業後、広告会社に勤務。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。著書に『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『官能女子養成講座』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』など多数。
川崎貴子
株式会社ジョヤンテ代表取締役。ninoyaブログにて「酒と泪と女と女」を連載。婚活結社「魔女のサバト」主宰。著書に『愛は技術』『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』ほか。
川崎貴子(以下、川崎):ところで、アルテイシアさんのご主人は原稿とかお読みになるんですか?
アルテイシア(以下、アル):全然読まないんですよ。
川崎:うちもなんですよ。
アル:本当にありがたいですね。私も夫の試合を観に行ったことがなくて、夫も私の書いてる本読んだことがなくて。やっぱり、お互いにとって大切な世界は土足で踏み込んじゃいけないみたいなのはありますね。
川崎:そこはうちもそうですね。なんか、夫がこれ読んだら嫌かなぁ……なんて思いながら書いたら、書けなくなりますよね(笑)。
アル:そうですそうです。夫が前立腺炎でチン○が勃たないこととかも、もうどんどん書いてますからね(笑)。
川崎:それも、ご主人の周りの方々は言わないんですか。
アル:基本的に私が覆面作家ということもあり、周りの人にも言われないんですよ。うちの夫はオイスターバーって何するところ?みたいな人ですが、中東問題とかは池上彰かよってぐらい詳しく説明できたりするんです。
川崎:それはすごいですね。
アル:チベット密教とか、私の全然知らないことを物凄く詳しかったりして。だから、話していてすごく面白かったんですよ。それで「私、面白ければいいんだ」ってことに気づいて。
男性相手に限らず女友達に対してもそうですけど、女友達と一緒だったら別にファミレスでもいいし、うちの家に来てぐだぐだしてるだけでもいいし。
それと一緒で、私はファミレスでも、家でコンビニの酒とつまみでぐだぐだでも、面白ければいいんだっていう。オシャレなお店でのデートとか本当はいらないんだっていうことが分かりました。
川崎:なるほどね。ご主人のおかげで気づいたことがいっぱいあるんですね。自分の価値観を改めて再発見できたみたいな。
アル:そうですね。あと、私、境界性パーソナリティ障害みたいな感じだったんですけど(笑)、それがぴたっと納まりましたね。
川崎:そうだったんですね。
アル:毒親だったのもあって、見捨てられ不安みたいなのが大きかったんですよ。だから歴代の彼氏に対して、普段はメンヘラっぽくないんだけど、たまに闇落ちする時があって。
闇落ちすると、彼氏が離れていかないかを試すような行動を取ってしまう。「もういい!別れる!」と家を飛び出して、追いかけてきてくれるのを待つみたいなことをやってしまう。
でも結局、面倒くさいから振られるわけですよ。普段は強そうだし、しっかりしてる感じだから、ますます「そんな女だと思わなかった」って振られるんですよね。
そうするとますます見捨てられ不安が強くなり、男に対する不信感や絶望感も強くなって。でも夫は、私がそういう風に面倒くさくなっても「俺は別れる気はない!」といつもキッパリ言ってくれたので。
川崎:すばらしい。
アル:何度かそうしたことがあって「あ、この人は本当に離れていかないんだ」と思ったら、人生で初めて安心したんですよね。それはやっぱり親から与えて貰えなかったので。
どんな時でも受け止めてくれるとか、自分の味方でいてくれる存在に人生で初めて出会ったから。そうしたら本当にすべての病が治ったんです。
川崎:そうなんですね。うちは逆で、夫はケンカになると、最初の方はすぐ逃げてたんですよ。シュッと。
アル:早そうですよね。逃げ足が。ダンサーだし。
川崎:すっごい速いの。だけど「貴様、逃げるのか!」って私が追いかけて。
アル:武将だ(笑)。武将と踊り子だったら、どう考えても武将が勝ちますよね。
川崎:それこそ、わーって首根っこをつかんで(笑)。私は逃げられること、その、問題解決をしないという態度を取られるのが異常に嫌なタイプなんです。もちろんそれには冷却期間が必要だっていうカップルもあると思うんですけど、私の場合はダメなんですね。もう、より問題が大きくなっていく気がして。せっかちなのもあって早めに解決したい。
今はないんですけど、当時の彼は逃げ癖があったんです。多分、彼は本当に刹那的な恋愛関係しかずっとやってこなかったんですよね。二ヶ月とか、三ヶ月とか。揉めそうになると別れるっていうことを繰り返しやってきたんだろうと。
アル:あぁ、逃げてきてたんですね。
川崎:そうなんですよ。うっとうしくなってきたら逃げる。すると追われる。だから更に逃げる。なぜかというと、彼は深掘りするタイプと話しましたが、文字通り一個しかできないんです。その時の彼の頭は「ダンスが上手くなりたい」でいっぱいだったんですね。だから一日中、10時間とかストレッチをしていたんですね。修行僧か!っていう。
アル:オウムかよ!みたいな。
川崎:オウム(笑)。
アル:オウムの信者も踊ってましたしね。
川崎:そういう人なんで恋愛っていうのは別に、それこそちょっと普通に恋人気分が味わえればいいみたいな。でも相手はそれ以外にいろんなものを要求してくるわけじゃないですか、当然。すると逃げるんですよ。
で、何の因果か私に捕まっちゃったわけです。そうすると今度は恋愛だけじゃなくなってきますよね。家族のことになるから、さっきのチベット密教じゃないですが、旦那が放射能オタクになって娘の給食とかを調べ始めたりするんですよ。
アル:主夫としてはすごくいいですよね。
川崎:でも、あらゆる食材について、安全性がどうのこうのってありがたいけど大変でしたね。本当、不器用なんで。一個のことにずっと集中していたい人なんですよね。なんかの研究とかやっていたら良かったんでしょうね、きっと。
アル:でも、今は子育てもされて、ボディトレーナーもされているわけですから良かったですよね(笑)。
川崎:逃げられないという導線に腹くくって、家族の為に頑張って成長してくれました(笑)
アル:導いたんですね。でも、なんで逃げなかったんでしょう?
川崎:私が結構ロジカルなタイプなんですが、そこが男女で真逆なのがよかったですね。あと、やっぱり歳が離れてたっていうのはすごく良かったですね。歳が離れているから時代背景的な共感感覚が一切ない。職業感覚はお互い全くわからない世界だし。異星人みたいなものですね。だから話し合って一緒に作っていこうって思えましたね。
アル:生まれた星が違うんだから、理解するために頑張ろう、コミュニケーションしようって思えたわけですね。わからなくて当然というところから始められるのはいいですよね。
川崎:新刊にも「なんで察してくれないの?言ってくれなきゃわからないよ!戦争」って書いてましたけど、本当にその戦争っていうのは、古からそれこそ男女がやってきたことで。でも本当に脳内ツイートでわかりあえるようなニュータイプ能力は人類にはないんですよね。
だから本当にそうしたアサーティブなコミュニケーションをいかに二人の間に持つかっていうことを、女性側も意識しないとダメですよね。
アル:普通に聞けばいいんですよね。例えばセックスレスとかでも、「もう魅力がないの?」とか「私のこと女として見てないの?」とかグルグル悩むんじゃなくて、「最近減ってるけど、疲れてる?」とか普通に聞けばいい。そしたら夫だって普通に答えられるんですよ。
川崎:勝手に傷ついてるから、余計に大問題になっちゃうんですよね。
アル:そうそう、自家中毒みたいになって。で、マグマがどっかーんって噴火するからえらいことになるんですよね。
川崎:片思いをこじらせている人とかもね。普通に彼女いるかどうか聞けば?って言いますね。
アル:これは本当、男女共にそうですよね。「二年くらいずっと好きで、最近になって恋人と同棲していると知った」とか。どんだけ無駄なのその期間!?みたいな。普通に「恋人いるの?」って聞けばいいのに。
川崎:そこで「ごめん、付き合えないんだ」って言われても、それは彼女の問題じゃなくて、彼の問題じゃないですか。他に彼女がいるとか、今は彼女を作りたくないとか、まぁタイプじゃないとか。色々あるけど、それはほとんど彼女の問題じゃなくて、彼のスタンスの問題なんで。その時期の。
アル:そうなんですよ。だから自分の存在を否定されたとか思わなくていいんですよね。
川崎:そうそう、過剰に否定されたと思ってはいけない。そうしていろんな人に聞けばいい。彼女がいるのかいないのか、脈があるのかないのか。
アル:無駄な女磨きって仰ってましたけど、例えば好きな人ができてダイエットを頑張るとかでも、相手はもしかしたらデブ専かもしれない。だとしたら、無駄な努力になってしまう。
目の前の相手の中に正解があるのに、みんな正解を恋愛本だったり、Google先生に聞きたがりますよね。
川崎:そうなんですよね。うちの夫って、出会った時から8歳年上じゃないですか。この間二人でテレビを観てたら、綺麗な人なんですけど、どう考えても50歳は過ぎてる女優さんだったんですね。その女優さんをガタッて食いつくように見てましたからね、こうやって前のめりに。あぁ、この人本当にババ専なんだなと思って(笑)。
アル:ガチなんですね!
川崎:じゃあ別に私無理に若作りしなくていいんじゃないかなって。
アル:まさに無駄な努力になっちゃいますよね。
川崎:私の今までの努力はなんだったんだろうと。なんかこう、親子に見えないようにしなきゃって思ってたんですよ。彼はダンサーなんでヒップホッパーみたいな格好をずっとしてたんです。で、私はファーの付いたコートとか着てるじゃないですか。
アル:それはツバメですよね。
川崎:どう見ても、金銭の授受があるように見えるんですよね。
アル:お金の匂いがぷんぷんします(笑)。
川崎:なので、当時の六本木で経営者仲間とかとすれ違うと、皆にいそいそと目を逸らされて。だから結婚式もきちんとやったんですけどね。これ以上皆の目を伏せさせるわけにはいけないと。
アル:公式に発表されてないと、見てはいけないものを見てるような気がしますもんね(笑)。
川崎:そう。肌とかね、髪の毛とかは、なるべく老けないようにしようとかって一生懸命やってきたわけじゃないですか。でもそのテレビに食いついている夫を見て、別にいいのかなって。
アル:本当にお相手が老け専だったなら、もうそれなりの格好をしたほうがいいわけじゃないですか。若作りとかせずに。そういう、相手がどういう人を求めてるかを知らないとダメですよね。
川崎:だから、聞きましたよ。「老け専?」って。
アル:聞いたんですね!
川崎:「いや、この女優さんはいいなと思っただけ……」みたいな。でもたぶん合ってると思います(笑)。
アル:うちの夫もデブ専なんですよ。100キロぐらいの女性を見て「ポッチャリしてて良い」とか言ってて。あと巨乳好きでもあって、「大きすぎるのはちょっとな~」とか言ってる男子に向かって「キミはまだまだ白帯だ!」と言ってました。
川崎:そうなんだ(笑)。
アル:本当に男性も様々じゃないですか、好みが。王道モテ系にならなきゃって思う女の子は多いけど、でも、自分だって王道系の男子が苦手だったりしますよね。私も「ミスチルとフットサルが好き」みたいな男性は、何を話していいか全然わからない。
川崎:(笑)。
アル:本当に苦手なんですよ、王道系が。そういう女性がいるってことは、そういう男性だっていっぱいいるんですよね。キラキラ女子が苦手だし、何喋っていいかわかんないみたいな。
川崎:そうですね。うちの夫はそういうキラキラ女子を見ると生理的な嫌悪感を表明しますね。
アル:生理的な嫌悪感まで!
川崎:こいつは絶対ダメだ、こいつはなんか悪いことを考えている……って(笑)。なんか邪悪なものを見るような。テレビを見ながら。
アル:うちの夫も巻き髪の女の子を見たら、「油をかけてカラッと揚げたい」とか言いますね……確かにあの巻き髪はカラッと揚がりそうですけど、かき揚げみたいに(笑)。
(第4回へ続く)
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