ninoyaの魅力を直接クライアントにうかがう、シリーズ「クライアントから見たninoya」。今回はインターネットを活用して人材領域でサービスを展開されるビズリーチの森山さまにご登場いただきます。
株式会社ビズリーチ(サービス名:スタンバイ)
https://jp.stanby.com/
【話し手】
株式会社ビズリーチ グローバルメディアカンパニー 森山大朗 さま
株式会社ninoya 代表取締役社長 古越幸太
【聞き手】
インタビュアー 河本ここの
シークレットプロジェクト 「スタンバイ」
──ninoyaとお仕事をするようになったきっかけについて、教えていただけますか。
森山大朗(以下、森山):僕が一番最初に見たのは、古越さんが起業について綴った記事でした。その後にネットでしばしば話題になる川崎貴子さんの連載を知りました。なるほど、古越さんが仕掛けているのか、一度問合せてみよう、と。
古越幸太(以下、古越):当時は記事をアップすると、デイリーで10,000人程がブログを訪れてくださいました。森山さまから仕掛けについて聞きたいと連絡をいただいたときは、驚きましたね。
──「酒と泪と女と女」のような集客の仕掛けが、どのように活用できるとお考えでしたか。
森山:僕は、「スタンバイ」というプロジェクトを計画していました。スタンバイの構想は、「和製の求人検索エンジンを作る」ということ。そして、求人検索エンジンとしてグローバルで先行しているIndeedをキャッチアップすることを考えていました。
自分たちの求人に対する思いをいかにしてプロダクトに投影させるか。最初の相談では、そういったことをお話させていただきました。そのとき、すごく興味を持ってくださったんですよね。
古越:ご相談にいらしたころは、トップシークレット案件でしたね。お話をうかがって感銘を受けたのは、「今の就転職サイトは、数はたくさんあるけれど、結局大学の就職募集の掲示板と変わっていない」ということでした。
本来、職業や職種はフラットなはずなのに、より大きな資金を持っているところが大きい枠を使って宣伝ができる。逆に言うと、相応の資金を持っている企業しか宣伝できない。
けれど、選ぶ側からすれば、あらゆる職業をフラットに俯瞰し、最も自身に合う仕事を選びたいはず。それを形にしたいんだ、という趣旨のお話でした。当時はチームや共同研究という形でもなく、森山さんのソロプロジェクトに近いご様子でしたね。ご契約後、スタンバイそのもののコンセプトづくりだけで3〜4ヶ月程度かけました。
森山:「スタンバイ」という名前が決まるよりも前から相談していましたね。古越さんと話をしていくうちに、頭の中が整理されていく感覚がありました。社内で話をしていると、どうしても関係者がそれぞれのポジションに立って発言するので、聞いているうちに僕自身もだんだんと向かうべき方向が混乱してくるときがあるんです(笑)。
そういうときに、本質部分をちゃんと掴んでいる古越さんみたいな方がいると、とても助かるんです。それから、古越さんは「インターネット文化とは何か」を体得されている。Webを通じて書かれたものが、どのように影響しあって広まっていくのか。その体感値を持っている方なのでなおさら信頼できました。
企業内で相反する収益モデル
──スタンバイに関する構想は、森山さんの中にずっとあったものでしたか。
森山:僕は、そもそも仕事を探すというときに、数多ある転職サイトを探したり転職エージェントに登録したりする、という行動に違和感がありました。Googleみたいな検索窓が一個あって、そこに興味のある仕事に関連するフレーズを叩いたら自分に合う募集情報が返ってくる。そんな世界に移行したら良いなとずっと考えていたんです。
古越:スタンバイのアイデアを実現させるとなると、会員制転職サイトを運営されているビズリーチさんの収益構造とは、明らかにバッティングするんです。掲載料を受け取るビジネスモデルがメインの企業で、掲載料無料で収益化を目指すサービスが生まれたら、営業さんも困惑されますよね。そこをどう考えるべきかという話もしました。
森山:そうですよね。ビズリーチは掲載枠を販売するという従来の営業スタイル。対して、フラットに求人情報が検索できるというのは、既存の収益モデルとして相反します。もちろん、広告などの収益モデルが確立したとしてもです。
ただ「我々は何を目指してどんな世の中にしていきたいのか」という当社のミッションを根底の部分まで突き詰めれば、それはインターネットを使って人々の選択肢と可能性を拡げていくことでした。今後生き残る企業は、自社での採用力を取り戻して、自分たちで直接優秀な人たちに声を掛けていく「ダイレクトリクルーティング」を推進すると感じています。
良い人をより安く採用できる方が良いし、これまで以上にそれが求められる世界になっていくとも、ビズリーチでは言っているんです。現状のビズリーチはハイクラスに特化していますが、その考え方を全職域に押し進めるとスタンバイ=フラットな求人検索エンジンになるのです。
──そのお考えについて、他の社員の皆さんも納得していらっしゃいましたか。
森山:社員も300人強いますから、中には100%の理解が難しいと感じている人もいるかもしれません。それに、僕がメインでやりたいコンセプトや本来の必要な機能というのは、まだスタンバイには実装されていない状態です。これが実装されると社内外で「えっ!?」という声が上がると思います。まだ詳しくは言えないのですが……。僕からすると、それは人材業界におけるパンドラの箱ですね(笑)。
古越:森山さんのお考えは、転職サイトというよりも検索エンジンの将来像とニアリーイコールですよね。
森山:「何となくみんなが感じている世の中の仕事は今こういうトレンドではないか」とか、「この会社からあの会社に転職している人多そうだよね」とか。あるいは、「全然知らなかったけどこの仕事はひょっとすると自分に合うのではないか」とか。
そうした、人々が局所的に抱えている暗黙知を可視化して、徐々にスタンバイの中に混ぜていく。それが僕の目指すプロダクトです。それは、誰かにとっては都合の悪い真実かもしれないですね。それらが実装されるまでのスタンバイはIndeedのレプリカだと呼ばれると思います。
古越:“Indeedのレプリカ”というのはβ版としてのあるべき姿だと思います。これからスタンバイの中でいわゆる「職業に貴賤なし」を体現していこうとしているんですよね。
みんな言葉では職業に貴賤はないと言うけれど、事実として見つけやすい仕事と見つけにくい仕事がある。やっぱり資金を持っている所の方が自分たちの仕事をアピールできますよね。でも求職者が求めている「理想の仕事」と、大きな企業が語る「私たちの仕事」は全部がイコールではない。そのミスマッチを、検索エンジンを通じていかに無くしていくかの挑戦ですね。
プロダクトにおけるメディアの在り方
───現在のninoyaの役回りをお伺いできますか。
森山:今はメディアを担当していただいています。スタンバイでユーザーを集めるために、内部SEOの最適化は最初からお願いしていました。加えて、メディア運営自体もご担当いただいております。「世の中にはこんな仕事もあるんだ」という気づきにつながるメディアを用意して、そこから違和感なくスタンバイへ還流される仕組みにしたいなと。
古越:企業がコンテンツを作ろうという話はよくあります。ただ記事を書いてその下に「求人はコチラ」というバナーを置く。これはよくある企業のメディアです。
でも「仕事を知るメディア」と、「仕事を調べるスタンバイ」。この2つが違和感なく連携すれば、それは記事を読むという行為と、仕事を探すという行為がシームレスになります。メディアと検索エンジンの境目を限りなくなくすという理想像です。
森山:そんな打ち合いをお互いにしつつ、古越さんは僕がぶれそうになるのをいつも戻してくれました。
古越:最初にお話をうかがったときからコンセプトが強く明確だったので、これは間違いなく成功すると思いました。懸念だったのは、いかに森山さんの描く未来像を周りの方にご理解いただくかという部分でした。正直、人によっては突飛に感じる話だとも思うので。
ときには社内プレゼン用の資料を拝見しながら「ああでもない、こうでもない」とお話したり、あるいは僕が社員目線で見たときに「これは伝わらないのではないか」と率直に進言したりしました。
───「成功する」という確信はどこで感じられたのでしょう。
古越:現状、「本当はみんなフラットであるべきだ」と思っているものを、企業側が変にゆがめているわけです、マーケティングにしても機能にしても。誰もが虚飾や装飾に飽き飽きして通じなくなってきている。そこからどの企業が一抜けするかという状況で、その「抜け方の解」を明確に持たれていた点です。世の中が望む方向のプロダクトなので間違いないと考えました。だからこそ、僕自身が森山さん配下のスタッフに直接説いて回ることもありましたよ。
───森山さんは、そうした古越の動きはどのようにお考えですか。
森山:うーん、なんか、こう……なんて言うんですかね。古越さんの価値っていうのは、すごく説明しづらいんですよ(笑)。
古越:ははは(笑)。
森山:滅多にいない人……なんですよ。滅多に見かけない無駄のなさ。これは、効率的という意味ではなく、削ぎ落とされた部分だけを持っているということ。古越さんは引き算の人なんです。メディア運営でいうなら、ディレクションしてくれる会社は沢山あります。それは、いわゆるコンテンツマーケティングの企業。そういう企業さんにも、一通りお会いしました。
ですが、彼らは一時的にPVが跳ねる王道手法を使うんですね。いわゆる“オモシロ”をどんどんトッピングで乗っけていく、ちょっと馬鹿っぽいといったら失礼ですが、そんな記事を作りましょうと。考え方が足し算なんです。
僕はあんまり足し算でものを考えたくない人間なんです。もちろんたまには良いかもしれませんが、メインのコンテンツとしてどうかと問われると、それは違うと思う。その意味で、ninoyaさんは無駄を削いだ中にこそ価値があるよね、と言ってくれるところに好感を持ちました。
あとは、やっぱりビジネス目線。例えばメディアを始めてしばらく後に、量を取るべきか、質を追うべきなのかという問題に直面したことがありました。世の中から反応が全く無くて不安になって。そんな時でも「質です。こっちの方向でいいんです」と、ちゃんと言ってくれる。普通の担当者だったら、クライアントに「どうしたいですか?」と聞いて、その意向に沿って動いちゃいますよね。
古越:クライアントさんに嫌われたくないですからね(笑)。
方針を変えなかったのは、長い目で見て記事の反響がどうかということよりも、記事がきちんと求人票代わりのコンテンツになっているかにフォーカスしていたからです。コンサルで入っている現場のスタッフの方たちにも、「新しい求人の気付きを得るメディアを作るんだよ」とこんこんと伝えてきていました。
最初は失敗も沢山あったのですが、ちょっとずつ良くなっていきました。ある閾値を超えたらぐっと伸びることが見えていました。だから「大丈夫ですよ。このメディアは必ず反響を得ますから」と言えたのです。
森山:現場スタッフからしたら「僕たちはどこに向かっているのか。やってきていることは正しいのか」といった考えも持つでしょうし、その中で上から物量もクオリティも求められて、相当にしんどかっただろうと思います。そうした状況下で「大丈夫、合ってるよ」って引っ張って行く役目までしてくださること。これはもうコンサルティングでありマネジメントですよね。
───そこまでコミットする外部パートナーさんは、これまでいらっしゃいましたか。
森山:いないですよ、思い当たらない! 基本は遠隔ですからね。エアマネージャーって感じですかね(笑)。
ninoyaの価値について
───いまは、どれくらいの頻度でコンサルに入っているんですか?
古越:週に一回4時間ですね。まず一週間で起きた現状の課題と、現場で問題に感じている箇所を確認します。次にその軌道修正をしつつ、森山さん、現場の責任者、スタッフといった各階層での情報のずれを補正します。それは1対1で話をすることもあるし、みんなを集めて研修をする場合もあります。ケースバイケースですね。
森山:古越さんは、抽象的なところと具体的な所の往復運動がすごいんですよ。本当に限られた時間の中で、社員以上の動きをしていただいています。
古越:コンセプトが固まってからは展開の部分になりますので、森山さんが直近でどこまでの追加実装を考えているのかを聞きつつ、じゃあ今週は現場はこっちの方向で、来週はここの部分を固めてというような流れですね。
森山:長期でやりたいことを理解していただいているので、役員・管理層と現場のギャップを埋めつつメンバーを育ててくださることもあります。とにかく、お任せしていて安心感があります。
スタンバイのプロジェクトを運営していく中では、拡大につれて営業・機能実装・メディア運営と多くのリソースが必要になります。本来メディアにはもっと工数を割かないといけないのですが、僕自身が今は営業にフォーカスしなければならない時期。そこで、メディアには古越さんに入っていただいています。
ninoyaさんはめちゃくちゃ旨いスルメみたいなものですね(笑)。長持ちするし、噛めば噛むほど味が出てきます。派手さはないかもしれませんが、長期的に関係性を深めていくパートナーと呼ぶべき会社。
我々に必要なのは、経営に匹敵する様な意思決定をする者にとっての「善きパートナー」。そういう会社はなかなかないので、ありがたみを実感する日々です。
───最後に、ninoyaを検討していらっしゃる企業様へ、メッセージをお願いできますか。
森山:他でお仕事をされることで、当社へ古越さんの時間が割けなくなったら困るんですよね。なので、僕はお勧めしません。
……というのは冗談です(笑)。ビズリーチはインターネットという武器をもって、既存の構造を良しとせず、よりあるべき形に突き進んでいく会社です。かといって、いまある構造に反逆をするわけではなく、そこに一割だけ革命的な改造を施して、ありそうでなかったものや「なんで今までなかったんだろう?」と言われるものを創り出していく会社です。
そのミッションを推進するためにも、僕は更にテクノロジーをもって何ができるかを突き詰めなければいけないと思っています。だからメディアは古越さんにお任せしながら、僕はより機能の実装にフォーカスしていきたい。古越さんとの出会いは偶然だったかもしれないけれど、出会うべくして出会ったのでしょうね。