クラシック音楽について今さら初歩的な質問をしづらい、こんなことを聞いたら恥ずかしいのでは、と疑問を飲み込んでいらっしゃるという、お声を多くいただきました。
今日はそんな皆様から頂いたご質問にお答えしたいと思います。
題して、「クラオタへの道も一歩から。」
Q.そもそもクラシック音楽って何?
クラシック、訳するなら古典的な音楽は、元々はモーツァルトぐらいの時代の音楽を表す用語でしたが、今日では、ざっくりとヨーロッパあたりの昔からある芸術音楽ということになっています。
昔っていつからよ?ということですと、6世紀くらいからです。日本だと聖徳太子がいたとされる頃ですね。
そのあたりから、20世紀後半くらいまでがそのカテゴリーになっています。
小学校中学校の音楽の授業でならった、ベートーベンやシューベルトなどは覚えていらっしゃるかもしれません。
オーケストラで演奏されている楽曲もあれば、ピアノやオルガンだけの曲もあり、また室内楽といって少ない人数で演奏する楽曲もあります。
室内楽というからといって、外で演奏できないというのではなくて、昔の貴族のお城(宮廷)の中で演奏されていたスタイルだからなんですけども。
一方、クラシック音楽の流れをくんだ、現代音楽というカテゴリーもあります。
今生きている現在の作曲家の楽曲というよりはむしろ、クラシック音楽の規則性なんかを超えて、新しい試みや思想を反映した音楽をつくろうとしている動きです。現代アート、コンテンポラリーダンス、前衛演劇などなど、他の芸術にも同じような動きがあった時代でもありますね。
現代音楽は難しいですし、哲学的なところもあり、最初から理解するには難しいのですが、
私はジョン・ケージの『4分33秒』という楽曲から興味を持つようになりました。
なんとこの曲は、楽譜に「一楽章:休み 二楽章:休み 三楽章:休み」とだけ書いてあり、指定演奏時間の4分33秒の間、無音です。
でも演奏家は楽器を持って舞台にいるわけです。じーーーーっと。ただ座っています。時々空を(天井か)見上げたりなんかして。無音の中。
これをコンサートで聞く(?)のは、なかなかオツであります。機会があればぜひ。
Q.なぜクラシック音楽はあんなに長いの?
ポップスやロック音楽は、例外はあるにせよ、数分から長くても10分ということを考えると、
交響曲一曲が一時間以上って一体何、と思われることもわかります。
教会で演奏された楽曲に始まり、室内楽などの小さな編成を経て、オーケストラという大人数での楽曲をつくるようになった作曲家にとって、交響曲は、自分の持てる技術を示す対象として、またその芸術性精神性を盛り込む集大成として、交響曲という器を選ぶに至ったと考えられています。
めいっぱいの作曲家自身の表現の場を設けた結果、あれほど長い時間を要するというわけです。
さらに、オペラに至っては4、5時間、場合によっては数日かけるものあるかと思うと、なんという悠長な話だと思われるでしょう。
そういった時間使いの贅沢さがクラシック音楽の醍醐味でもあります。
クラシックコンサートは長すぎて寝てしまうから、コンサートに行きづらいとおっしゃる方々。
心配ご無用です。
寝るどころか、誰も聞く人がいなくても、ずっと演奏が続いている楽曲もあります。
今現在進行形で演奏されているジェム・ファイナー作曲の『ロングプレイヤー』は、2000年1月1日に演奏が始まっており、1000年(!)かけて、2999年12月31日に終わる予定です。ロンドンで聴けますので、機会があればぜひ。
Q.クラシックの楽曲についている番号が嫌いです。
もうすでに質問でもなく、嫌いです、か。
いや、お気持ちはよくわかります。あの番号なんやねん、ということですよね。この番号がまた何か敷居を高くしているような気がします。
かくいう私もこの番号はほぼ覚えていません。
これはいわゆる作品番号で、「だいたい」出来上がった順についている楽曲の識別番号です。
代表的なものは作品番号表記は opus(オーパス)ですが、作曲家によって作品番号以外に、その作曲家の楽曲を整理した人の名前をとった番号がついているものもあります。
例えばモーツアルトの有名な交響曲『ジュピター』は、『交響曲第41番ハ長調 K.551』です。
交響曲ができた順についている番号が41ですので、これを見ればモーツァルトが41番目に書いた交響曲ということがわかります。(第9番で死ぬ死ぬ説はベートーベン以降です)
その次は調性(この場合はハ長調)があり、さらにK.551とはいかに。
ここKの部分は、モーツァルトの楽曲を全部ひっくるめて整理して、通し番号をつけたケッヘルさんの頭文字Kと、551番目にできた曲という意味になっています。
モーツァルトは、K.626まであります。すごいですね。
余談ですが、このケッヘルさんの通し番号を25で割って、10を足すと、モーツァルトが作曲した年齢がだいたい割り出せます。
つまり、10歳ごろから年に25曲平均で書き続けたというわけです。
ジュピターの場合は、551➗25➕10=32。ジュピターが完成したのは1788年、誕生は1756年なので32歳で、合ってますね!
楽曲についている番号は、全然興味がわかないし、意味がわからないとただの暗号のようですが、こうしてちょっと面白いことに出会うと、拒否反応がでなくていいかもしれません。
クラオタへの道も一歩から
クラシック音楽は敷居が高い、何を聞いていいかわからない、長すぎる、楽器が多すぎる(!?)など、拒否反応を伴う要素が多く存在していることは、よくわかります。
音楽の授業がつまらなかったという経験から、食わず嫌いになっている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、それがクラシック音楽のすべてではないことだけは、少し心にひっかけておいてもいいかもしれません。
音楽の授業で聞いた、シューベルトの『魔王』は、怖かったですか。それとも、ちょっと興味を持ちましたか?
のだめカンタービレの映画を見て、音楽家に興味を持ったりしませんでしたか?
ロト6のテレビCMは、モーツアルトが死ぬ直前に作曲していて未完成に終わったレクイエムだと知ると、ちょっと興味を持ったりしませんか?
クラシック音楽は、長い時間をかけて熟成され、それと知らずに実は身近に存在していることがあります。
クラシックを聴くために、まず作曲者がだれだとか、何番だとか、歴史だとかそういうことを勉強しなければならない、なんてことはないのです。
何かのきっかけで、一つでも好きになれる曲がでてくるかもしれません。
それを日常で流しておくだけで、まずはそれでいいのです。
嫌い、嫌いは、180度転回して、何これ面白い!になるかもしれません。
いつか何かの楽曲が、あなたのクラシック音楽人生の扉をノックすることを願って。