酒と泪と女と女

DV夫の捨て方

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「疲れた」というブログを読んで、

疲れた
何かにつけて、文句があるなら出てけ、一人で生きろ。
お前は甘やかされてる、自分の責任だ、反省しろ。
夜中に無理やりセックスすること。
今の赤ちゃんは鬱で寝てる時に避妊もされず無理やりされてできたこと。
働け働けといわれ、働き始めた矢先の妊娠だったこと
妊娠中に父親が死んで、辛かったこと 悲しかったこと

 

彼女の親類縁者、友人の誰でもいいから、赤ちゃんの安全確保に動いてくれないだろうか?彼女にご飯を食べさせ、病院に連れて行き、しかるべき行政機関に連れて行ってくれないだろうか?と願ったのは私だけじゃないはず。

 

彼女の夫は全くあてにならないどころか、彼女の鬱状態を直接的に悪くしており、文章を読む限り典型的なDV夫(モラルハラスメント及びセックスの強要)である。

 

配偶者間のDV件数は9年連続で増加、2012年にはとうとう4万件を上回った。

「健やかなる時も病めるときも、富めるときも貧しきときも」

と、愛を誓った夫(もしくは妻)が、ある日を境に暴力をふるい始め、伴侶を言葉で精神的に追い詰める。

 

常に密室で行われるそれは、被害者が立ちあがらなければ露見しづらく、しづらいが故にエスカレートしていき、実際には殺人事件に迄発展するケースもある。

 

私がDV相談(*女性・配偶者間)を受けた際には、

「一度でも暴力をふるわれたら、全力で別れた方がいい。」

と、必ず言っている。

DV加害者は繰り返すからだ。

 

しかし、被害者はなかなか別れる為のアクションを起こさない。

 

顔や体に青あざを作り、心身ともに傷ついているのにもかかわらず、である。

「警察に行こう。」

と、促しても首を縦にする人は殆どいなかった。

 

元々力の差がある男性からのDVは恐怖以外の何物でもないはず。

 

それなのにどうして、DV被害者妻は別れようとしないのだろうか?

 

① 気力体力の喪失

ブログの彼女のケース然り、精神状態が良くない為、常に無気力な状態。そこに、継続的な「言葉の暴力」「身体的苦痛」が加えられると更に萎縮し、「自分は無価値である。」と自虐的になってしまう。自分手動で別れたり、誰かに相談したり、という行動そのものに着手することができないケース。

 

② 経済の不安

実家に頼れない女性の場合、この理由もとても多かった。

「別れても暮らしていけるかどうかわからない。」

子供がいる場合は特に、自分がもし働いても、親子で食べていくのがやっとの生活になるため、子供の将来(教育費など)の為に自分が我慢すればいいと考えているケース。

 

③ DV夫を治そうと思っている

元々は優しかった夫なので、今がおかしいのであって、時期が来れば、もしくは、専門機関に頼れば夫も変わると信じているケース。

 

④ 共依存

緊張状態⇒暴力の爆発時期(実際に暴力をふるったり、言葉で制圧する。)⇒ハネムーン期(俺が悪かった、絶対もうしない、などと甘い言葉をささやく。)

このハネムーン期で妻は夫をもう一度信用しようと思う。が、しかし、大抵はこのサイクルを何度も繰り返す事になり、妻の精神状態は更に悪化。

共依存の妻は、自己評価が低く、「自分が許す。」「自分が絶えて本当の愛情を注ぐ。」という事で自分の存在意義を見出す為、夫がひどければひどい程、自身の存在意義を見出してしまう。夫は敏感にそれを感じとり、結局DVは繰り返されることになる。

 

⑤ ストーカー化への恐れ

夫を訴えたり、逃げたりしたら夫の相当な恨みを買う事になるので、仕返しが怖くて行動できないというケース。

 

他にも理由は個々にあったが、私が聞いた中ではだいたいがこの5つに分類された。

 

理由はどうあれ、常に次回のDVに怯えながらの生活は、相当なストレスがかかる筈で、

被害者が更にまともな精神状態ではいられなくなる。

 

私も、20代前半に1年付き合った彼氏からDV行為を受けたことがある。

 

帰りの遅くなった私を「浮気した。」と勘違いして罵り、胸倉を掴んで壁にぶつけ、その後首を絞められた。

 

その時の沸騰するような動物的な怒りは未だに覚えていて、

「ここに鈍器があったら、私が相手を殺してしまうかもしれない。」

とよぎった恐怖も未だに忘れられない。

 

そんな火曜サスペンス劇場な展開にならなかったのは、そこにあったのが鈍器ではなく、電話だったからだ。

 

私は片手で警察に電話した。すると、我に返った彼はハネムーン期に突入。

 

泣きながら、土下座しながら、「好きだから」「もう絶対しないから」と懇願。

 

彼の生い立ち(小さい頃母が浮気をして出ていった)は知っていたし、彼が私に自分の母親を投影していたことは、ぼんやり解っていた。

 

それでも、私は彼のお母さんじゃないし、専属カウンセラーでもない。

「警察に行くか、すっぱり別れてくれるかを決めてくれないのなら、あなたの会社に相談する他ない。」

と、詰め寄り続け、紆余曲折を経て別れた経験がある。

 

後々までショックだったし、首についた手の痕を見るたびに恐怖だったし、もしかしたら彼をそうさせたのは自分かもしれないと反省することも多く本当に疲弊した。

 

彼氏彼女という関係性でさえそう感じるのに、本来愛情を与え合うと約束された相手(親子関係や夫婦関係)、同居している相手、からの暴力は、恐ろしい程被害者の魂を削るに違いない。

 

魂が削られれば自ずと、喜怒哀楽だけではなく、人間が生きていくのに必要最低限な自尊心も無くすことになる。

 

それは、緩慢に殺されているのと同じ事だ。

 

だから、もし、今配偶者DV被害を受けている人がいれば、「犯罪者」と同居している状態だと早々に認識してほしい。

 

そして、

「生きるために逃げろ。」

と、言いたい。

 

DV被害者にならない為に、なんて言うマニュアルなど無く、社会的には常識的で、気が利いたり優しかったりするDV加害者を見分けるのは困難でもある。

 

「私が選んだ」とか「私のせいで」など、一切思わず、事故にあったと思ってさっさと別れるしか道は無い。

 

逆に、「社会的制裁をしてやりたい。」「同じぐらいの苦痛を与えてやりたい。」という事に固執するのも問題をこじらせることになる。

 

セレブ妻「カオリン」の事件を覚えているだろうか?夫からDVを受けていた妻が夫への憎悪を募らせ殺してしまい、結局懲役15年という判決だったと思う。

 

ニュースを聞いた誰もが、「別れれば殺人犯にならずに済んだのに。」と思った筈だ。

 

自分の夫がDV男だと解ったら、速やかに別居して離婚への準備を。

 

別れられない場合は、すぐに警察や相談窓口に足を運んでいただきたい。

 

以前は「家庭内の問題」として介入しなかった警察も、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るために、DV防止法が制定されたことによって対応は大きく変わってきた。

 

相談窓口も増えている。(地域の女性センター、福祉事務所、保健所、法務局人権相談、法テラスなど)

 

緊急時なのに逃げるお金が無い、小さいお子さんがいる、実家を頼れないという場合は、一時的にシェルターに入ることもできるので、是非配偶者暴力相談支援センターに連絡し避難をして欲しい。

 

そして、被害者達がどのように逃げ切り、第二の人生をどのように構築していったのか、たくさんの人達がネット上で書いているので、サバイバー達の経験談を是非参考に。

 

勇気を出して、自分自身の人生を、取り戻してほしいと思う。

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川崎貴子

リントス株式会社代表。経営者歴21年。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女のプロ」の異名を取る。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚。8歳年下のダンサーと2008年に再婚。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(大和書房)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(ベストセラーズ)、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、二村ヒトシとの共著に『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(講談社)等がある。

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