酒と泪と女と女

薄情女の言い訳 〜「女は薄情だ」と言われたので〜

更新 :

id:minami_nami_namiさんのブログを読みました。

女性は結構薄情、という話。 – オーバー30みなみの日記。はてなブックマーク - 女性は結構薄情、という話。 - オーバー30みなみの日記。

今は好きな人がいるから、もうそういうことはしない。逆に、心が満たされていないとそういう流れになってしまうんだなぁ、自分は。別れた後のセックスを「情」と言えるかどうかわからないけど、そう仮定すると女は結構薄情だ。

 

男も女も、薄情者も入れば情け深い者もいる。

 

しかし、どうやら世間では「女性の方が薄情!」という意見が圧倒的だそうで。

 

特に男性からのクレームが多いようです。

 

かつて情が深すぎてお相手をダメにしてしまったり、誰にも頼まれていないのにこのブログで「愛の布教活動」をしている私としては、素通りできない問題でございます。

 

が、身に覚えが無いわけではありません。

 

先日、私は元彼と駅でばったり、それこそ10年以上ぶりに再会したのですが、

その際、とっさに彼の名前を思い出せなかったのです。

 

近況を話しながら、苗字と名前を何とか思い出したのですが、

お付き合いをしていた頃に、彼を何と呼んでいたかは最後まで思い出せませんでした。

 

え? それは老化現象?

 

まぁ、確かにその側面もあるのですが、若い頃も過去の恋愛の事はさらさら忘れてた記憶がございます。

 

そして、

「お子さん未だ小さいね。子育てブログで見たよ。」

と、言われた日には奥さん、

「見るな!」

と思った私でございます。 言いませんけどね。

 

「既婚者が過去の女の近況など見るな。」

と、思うのは倫理観からではなくて、

私自身が元彼に対して、「幸せでいればいいなぁ」と何かの拍子に思う事はあっても、

リアルに「今何しているのかな?」とは、まったく思わないからで、

未練も何もない相手に対してその行動が奇異に見えたから、なのでした。

 

他の人の話を聞いても、過去を振り返らないのは圧倒的に女性が多いですね。

 

そして、自分に都合の良い事以外、見事に忘れてしまうというこの性癖。

 

この二つに限っては男性から「薄情だなぁ」と言われても返す言葉がありません。

 

本人も淋しいのです。

「あんなに愛した人も、愛してくれた人も、振り向けばただの幻」

と、実感するのは。

 

昔、映画「タイタニック」を観た時の事です。

 

あの映画はご存じの通り、主役の女性が90歳近いお婆さんになって、タイタニックが沈没した時の様子とそこで出会った男性との恋愛話を語る、という形で展開されていくフィクションでございました。

 

で、お婆さんが歩んできた人生(多分幸せであったろう生涯の写真、複数)が最後映るんですね。

 

私がそのエンドロール中に思っていたのは、

「乗船から沈没までのたかが1週間程度?の恋愛を、生涯リア充でもあったお婆さんが、こんなに長い事覚えていられる筈がない。」

でした。フィクションとは言え、解せない、と。

 

でも、それでも、

九死に一生を得るような体験とセットだったら、もしかしたら覚えていられるのではないか?と。

 

毎日、命を助けてくれた彼に、お礼を言うように生きていたとしたなら、覚えていられる可能性はあるかもしれないと。

 

すすり泣きが聴こえる映画館の中で一人、

「何故、お婆さんは覚えていられたのか?」

を顔をしかめて考察していた記憶があります。デート中だったというのに。

 

さて、

本人も淋しく思っている程のこの「過去抹殺機能」ですが、役に立つこともあります。

 

例えば妊娠出産。

 

私は一度目の妊娠の時、つわりのあまりの酷さに、

「もう二度とこんな経験してたまるか。」と思ったものです。

 

酒も飲めず、薬も飲めず、関取のような体型になってぎっくり腰になり、56時間の難産で出産した時には、「絶対にこれで最後だ。」と自分にも周囲にも言い聞かせました。怪我も病気も殆どしてこなかった私の、人生初の拷問体験だったからです。

 

ところが、6か月後。

体も回復して、仕事もとっくに復帰して赤ちゃんも安定してきたら、

「もう一人欲しいな~。また生みたいな~。」

などと思っている自分がいました。

 

そして、8年後に再び妊娠。あの「つわり」がやってきて思い出しましたが時すでに遅し。

 

赤ちゃんが可愛いから、というのは当然の理由なのですが、

 

自分の肉体で体験した筈の「痛みの記憶」なのにこんなにあっさりと忘れられるとは・・・。

 

私に限らず、多くの女性が「過去抹殺機能」を持っているからこそ、

「忘れてたああああああ!こんなに痛かったのををををを!」

と再び叫びながら、二人目、三人目、と出産ができているのです。

 

また、妻が夫の、彼女が彼氏の浮気を見つけやすいのも、

お母さんが子供や夫の具合の悪い様子をいち早く見つける事ができるのも、

女性という生き物が「今、愛している人だけ」に集中して観察しているからです。

 

昨日と今日の違い、1か月前と今日の違いを膨大なデーターベースからひっぱり出してきて分析し、「何だかおかしい。」「何か違う。」とあぶりだしているから。

 

膨大とは言えデータベースの容量は限られますからね、

そこに過去の男のデータなど、入れる余地なし!

過去のロマンチシズムなどリアルには無駄!

 

それが、女性達の持つ「過去抹殺機能」の基本理念であり、

未来を見つめ、現実を生き、今愛している人を全力で愛するために、

私達はもしかしたら「積極的に」過去を忘れているのかもしれません。

 

今この瞬間も、愛する人の事だけを忘れないために。

以上、

「薄情女の言い訳」でございました。

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川崎貴子

リントス株式会社代表。経営者歴21年。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女のプロ」の異名を取る。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚。8歳年下のダンサーと2008年に再婚。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(大和書房)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(ベストセラーズ)、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、二村ヒトシとの共著に『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(講談社)等がある。

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