自分のレーベルを持ち、自主製作CDを作ると決めたら、何をどうすれば良いのでしょうか。
CD制作のステップを5つに分けて、詳しく説明していきます。
私たちが自主制作CDの支援を行う際には、次のような5つの段階を踏んでサポートしています。
- 企画
- レコーディング
- ジャケットやブックレットを作る
- JASRACや、ISRC申請などの手続き
- CDをプレスする
これから順に、この5つのステップを順に詳しく説明します。
そして最後は、流通の方法やデジタル販売などの解説もくわえてきますので、どうぞ最後までおつきあいください。
それでは、まず最初のステップ、企画から一緒に考えてみましょう。
企画-(1)選曲
前回「あなたが自主制作CDを出すための3つの条件」のうちの一つ目に「演奏会を定期的に開催している演奏家である」ことを掲げました。それがここに繋がります。
コンサートを企画する時、あなたはきっと来てくださるお客様の顔を思い浮かべて考えたはず。
アルバム制作も基本は同じです。
自主製作CDの一作目は、いつもの演奏会で反応が良い楽曲を軸に選んでいきましょう。
自分で制作費を出すからには、自分の好きにアルバムを作りたいという思いを全く否定するわけではありませんが、初めからそれはお勧めできません。
自主製作のCD販売においては、コンサートでの手売りが最も大きなマーケットです。
その第1作目で、売り上げが伸びず、在庫を抱えるような事態は避けたいところ。
自分が好きな楽曲だけで構成するアルバムは、2作目以降の楽しみに取っておきましょう。
企画-(2)テーマを決める
初めての自主制作CDでは、選曲しながらテーマを考えていくとうまくいく場合が多い、というのが私の経験から導き出された結論です。
コンサートでの評判が良い楽曲を軸に、いくつか候補の楽曲をあげていくと、なんとなくその色が見えてきます。
優しい楽曲が多いのか、クラシカルな雰囲気なのか。メインになる楽曲のイメージに合わせたテーマを決め、それに沿った楽曲を絞り込んでいきます。
例えばあなたがフルート奏者で、フランスの近代楽曲がメインだったとしたら、同じフランス人作曲家で揃えてみたり、近代の楽曲だけで揃えてみたりと、そんなテーマも作れるでしょう。
しかし、ここではまだアルバム1枚分の曲数には絞り込みません。なるべくテーマに沿った楽曲を多く選んでおきます。
この段階では、なるべく手持ちのカードを多くしておくことが、次のステップで役に立ちます。
企画-(3)曲順を考える
軸になる楽曲が決まって、テーマが見えてきたら、ここで曲順を決めながら楽曲を決定しましょう。
CDをセットし、PLAYボタンを押してくれた瞬間から約60分。そのアルバムが聴いている人にどんな時間を与えるのか想像します。
一曲目に何が始まり、どんな曲でどんな気持ちになるか。聴き終わった後に何が残るか。そんな時間の経過を考えます。
さらにここからは、少々音楽理論的な話になります。
私たちが、Nomius Nomosレーベルでアルバムを作る際には、必ず調性からのアプローチで曲順を決定しています。
調が持つ周波数の集合体には、それぞれ異なった印象を与えるという特性があります。複数楽章を持つソナタなどの作品は、作曲家自身によって各楽章の調性設定が計算され、配置されていますよね。
それと同じことを、アルバム制作の曲順決めで利用するわけです。
例えば、爽やかなイメージのト長調の次には、さらに明るいニ長調を。ヘ長調の持つ愛情や母性、温かさといった雰囲気の曲の後には、同じような柔らかな雰囲気を持つ変ロ長調を、など。
同じ調の繰り返しにならないようにしながら雰囲気の似た調を続けるのか、調の持つ特性をあえて対比させるのか、などの観点で楽曲を選びます。
さらにはもっと細かく、その楽曲が何調で終わるか、次の楽曲が何調で始まるかということまで、綿密に計算しています。
調性の心地よい並びは、かなり個人的な好みに左右されるところですが、近親調関係とドミナント関係を考慮しておくと楽曲の順番がパリッとしてきます。
もちろん、テンポや楽器の構成、ダイナミクスなども考えるべき大切な要素です。
これらを総合的に判断し、アルバムの楽曲を選んでいくため、なるべく多くの候補になる楽曲があった方が良いということになるのです。
選曲の段階で手持ちのカードを多くしておき、曲を決定しやすくしておきましょう。
さあ、ここまで決まったら、これからは練習あるのみ。
ゆっくりと練習を重ねながら、アルバムタイトルを考えましょう!