あなたが本を出したいと思ったら、まず何をすれば良いか?答えは簡単、「売れる企画書を作ること」だ。すべては企画書から始まる。弊社でも所属作家の企画を売り込むため、まずは企画書を一緒に作り、出版社の編集者にアポをとって企画書を持っていく。
では、どのような企画書であれば、編集者に自分の企画の魅力を伝えることができるのだろうか? 実は、多くの編集者が企画書のなかでも、まずチェックするのが「著者プロフィール」だと言われている。それはいったいなぜだろうか?
よい著者プロフィールとは何か?
実際に、弊社に新規で問い合わせをいただいた場合にも、必ずチェックするのがその作家のプロフィールである。しかし、多くの場合、ただ単にご自身の経歴を羅列してあるだけである。何年に生まれ、どこの学校を卒業し、どういう会社を立ち上げ・現在に至るのか、事実を列挙するだけ。これでは誰も興味を示してくれない。
書籍の企画書に載せるプロフィールには、作家のキャラクターが端的にわかる数字を示す必要がある。
「こんなことを何年間やった。これぐらいの規模でやった。こういう結果が出た。それは業界ではこういうレベルの仕事だ」そういう数字だ。その数字で著者の実績を示すことができれば、企画書に対する大きな説得力となる。
モデルのプロフィールにスリーサイズは欠かせない。それと同じだ。著者プロフィールにも、「人物」のスリーサイズを書き込むのだ。
数字で伝わる著者のすばらしさ
私が「作家のエージェント」を始めた頃、「クチコミによるマーケティング」という手法を行っていた日野佳恵子さんに声をかけた。
彼女は武蔵野音楽大学の声楽科を中退後、歌手として六本木のクラブのステージに立っていた。目指すはレコードデビューだ。でも体を壊して挫折。故郷の広島に戻った。
そして、結婚して出産。普通ならここで専業主婦の人生を選ぶ人が多いだろう。
でも彼女はそうしなかった。
友人のさとうみどりさんとともに「ハー・ストーリィ」という会社を立ち上げたのだ。「ハー・ストーリィ」は、当時全国6万人、現在は10万人を超える主婦を組織し「中小企業の販売促進代行業務を在宅ワーカーの力を活用して実現する」をテーマに、WWeBビジネスコンサルティング、マーケティング、プロモーションなどを請け負う会社だ。そしてその経験から生まれた「クチコミュニティ・マーケティング」という手法が、新しい雇用形態のビジネスモデルとして注目を集め、創業以来10年連続(当時)で増収を達成。「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2001」や「日経WeB COMPANY」が選ぶ「時代のキーパーソン51人」に名前があがるまでになったのである。
彼女の場合の「人物のスリーサイズ」は、組織した主婦の数だ。6万人。それから彼女の会社が10年連続で増収増益を重ねているという点。しかも、これが非常に稀だということを示した。10年連続で増収増益を重ねているのは、日本の全企業の中でたったの1%。これが女性の経営者となると皆無に等しい。この2つをポイントにした。
そしてもちろん、主婦であり、母であり、地方在住という境遇も付け加えた。こちらは数字で表す必要はない。これで彼女がすぐれたバイタリティとインテリジェンスの持ち主であること、そして主婦層という、大きなマーケットの専門家であることがわかるはずだ。
数社にプレゼンした結果、この企画は朝日新聞社が出版権を得て、『クチコミュニティ・マーケティング』という書名で初版部数1万部で出版された。
発売直後から大きな反響を得て増刷を重ね、5刷3万8,000部まで売り上げを伸ばした。続編も早々に出版され、結局、2冊で5万部を超える大成功となった。
しかし本当に嬉しかったのはその後だ。本の成功によって、日野佳恵子さんが「クチコミによるマーケティング」の第一人者として世間に認められたのである。有望な人物をナンバーワンに押し上げることができた快感。自分たちのサポートが結実した充実感。これが「作家のエージェント」にとって何にも増して大切であることを、私は日野さんとの仕事を通じて、改めて認識した。
あなたのプロフィールに数字は入っているか?
冒頭で、「編集者は企画書を見る際、まず著者プロフィールをチェックする」と言った理由が伝わっただろうか。
たとえどんなに良い企画だったとしても、説得力がなければ誰も耳を貸してはくれない。1つもモノを売ったことのないセールスマンの営業ノウハウを誰が聞きたいだろうか。
企画内容はもちろん大切だが、その内容を伝える人がいったいどんな説得力を持つのかを知ることが私たちにとっては重要だ。その意味で、あなたの企画書の中でも、プロフィールが重要度の9割を占めると言っても過言ではない。
出したい本の企画書を作るときには、ぜひもう一度、プロフィールを見直してみてほしい。そこに数字は入っているだろうか? あなたがどんな人物かを伝えるとき、数字は大きな役割を果たしてくれるのだ。