書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:成功の神はネガティブな狩人に降臨する
朝日新聞出版 (2015-07-21)
売り上げランキング: 12,031
著者:角田陽一郎(かくた・よういちろう)さん
バラエティプロデューサー。
TBSテレビ メディアビジネス局スマートイノベーション推進部兼制作局制作一部所属。
1970年千葉県生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業後、94年にTBSテレビに入社。テレビプロデューサー、ディレクターとして「さんまのスーパーからくりTV」、「中居正広の金曜日のスマたちへ」、「EXILE魂」など、主にバラエティ番組の企画制作をしながら、映画『げんげ』監督、「ACC CMフェスティバル」インタラクティブ部門審査員、その他多種多様なメディアビジネスをプロデュース。現在は、いとうせいこうとユースケ・サンタマリアがMCを務めるオトナのためのトーク番組「オトナの!」を担当。
水道橋博士が編集長を務める有料メールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』で「オトナの!キャスティング日誌」を連載中。
───本書の元になったのは、水道橋博士のメルマガ『水道橋博士のメルマ旬報』での連載だそうですね。どのようなテーマで連載をされているのでしょうか?
また、書籍化することになった経緯を教えていただけますか?
角田陽一郎さん(以下、敬称略):水道橋博士のメルマガでは、「オトナの!キャスティング日誌」という連載をしています。これは、僕がプロデュースしている番組、「オトナの!」(TBSテレビにて毎週水曜深夜)における、キャスティングの裏話を書いたものです。
通常、番組のゲストをキャスティングするときは、視聴率がとれるかどうか、番組宣伝の有無などが大きく関わってくるのですが、「オトナの!」は制作費を自らの番組で稼ぐ独立採算番組。そのため、視聴率にとらわれず、僕が会いたい人、テレビで語ってもらいたい天才をキャスティングしているので、裏話のネタも多いのです。
そうしてこの連載を続けるうちに、いくつかの出版社から「書籍化しませんか?」とお声がけいただきまして。最終的にエージェントからご紹介を受けた朝日新聞出版にお願いすることになりました。
───本書は、角田さんがバラエティプロデューサーとして、日頃どのように企画を生み出し、それを実現されているかを、「バラエティ企画術」として紹介されています。
人気バラエティ番組の制作秘話やキャスティングの裏話なども満載で、大変興味深かったのですが、角田さんは本書をどのような方に読んでもらいたいと思われますか?
角田:テレビ番組制作への興味ある・なしに関わらず、あらゆる職業の人に読んでもらいたいですね。
バラエティ企画術としていますが、クリエイティブな職種についていなくても、企画立案・実行する仕事をしている、これからそういう仕事をしたい、という方々にもぜひ。
───これまで数多くの人気バラエティ番組を生み出してこられた角田さんですが、本書で「自分の企画が会社に採用されたことが、ほとんどありません」とあり、とても驚きました。
本書にもありましたが、採用されなかった企画を実現するために、角田さんが大切にされていることは何でしょうか?
角田:もともと僕は企画が採用されるように会社を説得しようと思ったことはないんです。むしろ、採用されなくても実現すればいいと思っていて。
本書にも書きましたが、企画の採用・不採用にとらわれず、実現できる環境から作り上げようと。
例えば、「オトナの!」もそうですね。視聴率を取ることがテレビでは最重要課題というなかで、自分が会いたい人だけをゲストに呼ぶ。そんな番組って普通に考えたら作れません。視聴率度外視ですからね(笑)。で、どう実現したかというと、リアルなイベント(「オトナの!フェス」)を開催するなどして、番組スポンサーをつけず、自ら制作費を稼ぐ仕組みを考えました。
ほかにも、アイデアや夢をカタチにするために、僕がバラエティ的に考え、実行していることはあるのですが、それはぜひ本書をチェックしてください(笑)。
───バラエティプロデューサーとして多忙な日々を送りながら、書籍を執筆するのはとても大変だと思うのですが、角田さんにとって文章を書くことは、本業にどのような影響を与えていますか?
角田:正直、いい影響しかないと思います。まず、書くためにはネタが必要なので、普段からネタになる事例を頭の中にストックするようになります。すると、根拠のある事例や、それに基づく自分独自の考えが蓄積していくため、取引先やクライアントとの会話で、「おもしろい」と言われることが増えました(自慢話のようで恐縮ですが……、ほんとにおもしろさは増しているのです!)。
また、文章を書いて気づいたのが、執筆は孤独な闘いであり、自分のメンタルがすごく影響するものだということ。だからこそ、日頃から精神的に安定した生活を送ることが必要だと実感し、意識するようになりました。ここだけの話ですが、今、太極拳を習っています。そこで肩の力の抜き方を覚えたので、それを実践しています。
───書籍執筆にあたり何か苦労されたことはありますか? その際、編集者やエージェントからはどんなアドバイスがありましたか?
角田:執筆よりタイトルやテーマ設定において、客観的にアドバイスしてもらえたのがありがたかったです。
例えば、本書は「オトナの!キャスティング日誌」が元になっていますが、書籍化するにあたり「企画術」をテーマにしようと提案してくださったのは、エージェントの方です。自分では企画術の本になるとは思っていなかったので、新しい視点で章立てを考えることができました。
タイトルや表紙も、分厚い本は翻訳本しか売れないとアドバイスをもらったので、わざと翻訳書のようなテイストにしてあります(笑)。
───原稿内容を多くの方に理解していただくために、ご執筆の際に注意していること、気をつけていることはありますか?
角田:一つのテーマの中に、いろんな事例を入れて、予想外に展開することを意識しています。
本書でいうと、尾崎豊さんの例を入れたら、項羽と劉邦の例も混ぜてみるとか。全然関係ないAとBの話がどうつながるかというところに、おもしろさがあるんですよね。
また、この本の構成もバラエティ的な展開を意識しました。
読んでもらったらわかるんですけど、1章の最初に夢を叶える方法として、いきなり“神頼み”というテーマを持ってきています。「企画術の本なのに、神頼み!?」という意外性から、本題に入る。
これは、番組を作るときも一緒で、めちゃくちゃくだらないことをやっているけど、実は神話の一説に基づいているとか(笑)。そういうのが好きなんです。
───今後、手がけたい書籍のテーマがあれば教えてください。
角田:本書はバラエティ的企画術でしたが、バラエティ的勉強法、バラエティ的時間整理術など、バラエティ的◎◎シリーズは今後無限に登場します(笑)。
実はもうすでに、バラエティ的世界史という本を書いているので、お楽しみに!
最終的には、2年くらいかけてダイエットし、痩せた方法をバラエティ的ダイエットとしてまとめたいなと。なんだかんだ、ダイエット本が一番売れたねっていうのが僕の著作活動のオチです。
───最後になりますが、著者デビューを目指す読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
角田:まずは、僕の本を一冊買って読んでください。読んでみて、こんな本ダメだと思うのもありだし、すごく感動したと思うのもあり。これくらいなら、自分でも書けるとかね。何にせよ、この本がビジネス書を書く最初の一歩に繋がればと思います。
───角田さん、ありがとうございました!
ブログをお読みの皆さんで、本にしたら絶対売れる!!という企画・原稿をお持ちでしたら、弊社あてにご応募ください。
くわしくは企画原稿検討の要項をご覧ください。検討させていただきます。
ご意見・ご感想は(info@appleseed.co.jp)までお願いいたします。