書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:発想法の使い方
アイデア出しで大切なのは、数!そして、量産を強力にサポートしてくれるのが発想法です。本書では、広告会社で日々企画に取り組みつつ、ワークショップで発想の魅力を伝えている著者が、数ある技法から厳選した10種をご紹介。アイデアを出すための作法から、チームでの発想技法まで、サンプルを交えて詳しく解説します。
あなたに必要なのは技法を知ることと、ささやかな練習だけ。読んですぐ実践できる発想法トレーニングを、『考具』の著者がナビゲート!
著者:加藤 昌治(かとう・まさはる)さん
博報堂勤務。
多数の民間企業の新商品発売・新事業開始などのマーケティングPR領域と、M&A・事業統合・社名変更などのコーポレートPR領域の戦略・企画立案、実施を担当。
2005年度に日本PR協会主催の『PRアワード』でグランプリを受賞するなど、多数の受賞歴を持つ。「考える」「アイデアを出す」技を鍛える実践的なワークショップも展開している。主な著書に『考具』(CCCメディアハウス)、『アイデア会議』(大和書房)ほか多数。
著者サイト『考具Web!』
───加藤さんはこれまで多数のご著書を出されています。あらためて、博報堂に勤務しながら、著者としてもご活躍されるようになった経緯を教えてください。
加藤昌治さん(以下、敬称略):2002年の初夏だったと思います。一緒に働いていた方のご紹介で、アップルシード・エージェンシーの鬼塚さんにお引き合わせいただいたのが始まりでした。
本を読むのは大好きでしたけど、自分が書くなんて1秒も思ったことがなくて。なので「本を書きたい!」と思ってお目にかかったわけではなかったのですが、「書けるとしたらこんなことでしょうか?」が『考具』の目次β版でした。
それ以降、気づけば12年が経っています。活躍している、とはとてもいえないですが、一冊目が好評いただいたことで、その後も書くチャンスを頂戴できているのはありがたいことです。自著だけではなく、いろいろとお話をもらっていますし、ワークショップの機会も。
あれやこれやの結果として、03年の『考具』刊行以来今日まで、サラリーマンをしているだけでは知り合うことのなかった方々に会うことができたのは財産ですね。物書きの活動で知り合った方とお仕事もご一緒させてもらっています。
───今回、「発想法の使い方」についてご執筆されようと思われたのはなぜでしょうか?
加藤:正直、最初にお話をいただいたときは、かなり消極的でした。本好きな自分にとって「日経文庫」のタイトルはそれなりに重たいです。そこに私のようなヘナヘナ文体が混じってもよいもんだろうか……と逡巡しました。
結果、ヘナヘナのままで刊行にいたっていますが、やることを決めた大きな理由のひとつは、アイデア創出支援の専門家である石井力重さんがチームに加わってくれたことですね。
自分自身の体験だけでは日経文庫には立ち向かえないと思っていましたので、石井さんが持っているアカデミックなバックグラウンドに支えられています。
その上で、「私の文体で本当にいいんですか?」と何度も聞きましたが、編集さんが「よい」というので、まあいいかと。
───加藤さんが考える、「アイデア」を生むために大事な姿勢、考え方とはどんなものですか?
加藤:「考える、はスポーツである。非常にフィジカルなものである」という主張が基本にあります。
スポーツは競技ごとに特有のルールとカラダの動かし方・さばき方があります。考える、というスポーツも同様。それらを体得すれば「考える」はとっても楽チンになる、と思っています。
このコンセプトは『アイデアパーソン入門』(講談社)あたりから意識し始め、『企画のプロが教える「アイデア講義」の実況中継』(サンマーク出版)で本格的に言い始めたのですが、まあこれが書籍の内容としては非常に受けが悪いようです。
ワークショップのような体験を通じてですと、とってもすんなり受け取ってもらえるのですけれども。この辺、書籍というメディアのむつかしさをつくづく感じています。本を読んだだけではカラダのさばき方を身に付けることはできない、ということを本で言っている訳なので。
───その時に手助けとなる「発想法」とは、どんな存在でどう活用すればよいのでしょうか?
加藤:発想法は、あくまでも道具です。アイデアを考えやすくするための、アイデアの数を増やしやすくするための道具。
道具ですから、使う人との相性があります。自分にピッタリ、しっくりくる発想法もあるし、半面なんかちょっと違うなぁと感じる方法もあります。だから自分で何回かは試してみるしかないと思います。
で、使っているうちに慣れてくる。最終的には発想法を使っていることを意識しなくなる状態になるんじゃないでしょうか。
───加藤さんご自身がアイデアを出す時には、どんな流れ、方法で発想法を活用されていますか?
加藤:最初のとっかかりアイデアを作るために使います。それからアイデアの種類、ジャンルを大きく変えたい時にも有効です。
───本書はどのような方に読んでほしいと思われますか?
加藤:まだご自身の中で、ピタッとくる方法を見つけられてない方にはぜひ。本書に採録した発想技法は、“加藤のおすすめ方法集”ではありません。目指したのはスタンダードなラインナップ。正直、私自身にとってはあまり相性のよくない発想法も取り込みました。
石井力重さんご協力のもと、理系でも文系でもまずはお試しください、の構成になっています。また、非常に簡単にできる手法ばかりを収録したつもりです。
───本書執筆にあたり、内容の構成や文章の書き方など、何か苦労されたことはありますか?
その際、編集者やエージェントからはどんなアドバイスがありましたか?
加藤:私の場合、構成=目次が確定するまでに時間がかかります。編集さん、石井さんと合宿もしましたが、その後も七転八倒しました。最後に「これだ!」にたどり着いたのは、本当にギリギリで、ご迷惑をかけました。
───本書の発売後、周囲やネット上などで、どんな反響がありましたか?
印象に残る感想や意見などがありましたら、教えてください。
加藤:「読んですぐ、使ってみました」と言われて、莞爾(にっこり)でした。読書というインプットから、実際に使ってもらえる=フィジカルなアウトプットに結びつけてもらえると嬉しいです。「考えるというスポーツ」の競技人口が増えたわけですから。
───加藤さんは原稿内容を多くの方に理解していただくために、ご執筆の際に注意していること、気をつけていることはありますか?
加藤:文章を仕上げる際に、書き言葉と話し言葉の間、どれくらいに位置させるか? でしょうか。実際には最初はとことん話し言葉でキーボードを打って、その後いくぶんか書き言葉に戻し打つ作業を行っています。それから、どうしても同じ言葉の繰り返しが出てきてしまうので、言い換えることはやっていますね。
───最後になりますが、著者デビューを目指す読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
加藤:相談を受けた際によく言っているのですが、120分ぐらいしゃべれたら、本一冊に足るだけの情報量はあります。自分がそれなりに時間とお金とを費やしてきたテーマや対象って、おそらくそれぐらいはしゃべれるんじゃないでしょうか。
量として十分あるなら、あとは構成するだけ。自分がすでに持っている情報をパーツに分解して、並べ直す作業をしてみる。そのとき頼りになるのは紙とペン。落書きモードであれこれスケッチを描いてみると、発見があると思います。
───加藤さん、ありがとうございました!
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