書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:お金をドブに捨てないシステム開発の教科書 ~なぜ、要件定義がうまくいっても使えないシステムができてしまうのか?
お金をドブに捨てないシステム開発の教科書 ~なぜ、要件定義がうまくいっても使えないシステムができてしまうのか?
技術評論社
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編集者:傳 智之さん(技術評論社)
───最初に今回の企画の企画書をご覧になったときの印象はどうでしたか?
どんな点に魅力を感じて、書籍化しようと思われましたか?
傳 智之さん(以下、敬称略):著者の中川さんの「システムコンサルタント兼公認会計士」というプロフィールに注目しました。どちらかの肩書をお持ちの方はよくいらっしゃいますが、両方というのはめったに見かけないので。
そして、企画書に「要件定義で使えるシステムは作れない」というメッセージがあったのが印象的でした。要件定義というのは「こんな機能のものを作る」といったことをまとめる作業のことですが、既存の類書では「要件定義が大事」という話ばかりであることに加え、システムの現場の方から「要件定義以前のところが大事なんですよ」という話を耳にしていたという背景があり、「既存の類書とは一線を画する本にできる」と期待が膨らんだのが大きかったです。
──本書は、システム開発前にやるべき「システム構想」に特化しており、これほどまでに経営や会計の視点に踏み込んだ類書はないと思います。
なかでも、傳さんが一番おもしろいと思われたのはどの部分でしょうか?
傳:P.119に出てくる「亀のコウラ」です。複雑なシステムの基本構成をわかりやすく図にしたものなのですが、まさに亀のコウラのよう形で、全体像が一目でわかるユニークなものです。最初にテストで見たときは「なんのことだ?」と思ったのですが、実際に図を見ると、非常にシンプルかつ一目瞭然で「おお、なるほど!」と、思わず声を出してしまいました(笑)。
───改めて、中川さんの著者としての魅力を教えてください。
傳:ベンチャーから中堅企業まで50社以上、業務設計・改善から会計監査さらにIPO支援まで20年近いコンサルティングをされてきたという実績に裏打ちされた、ユニークかつ実践的なコンテンツをお持ちなのがまず魅力です。
文章力も素晴らしく、こちらで直す要素がほとんどありませんでした。
そして何より、お人柄がとても素晴らしく、日々のやりとりの中で、こちらのやる気を引き出していただきました。なかなかいらっしゃらないタイプだと思います。メールへの返信がとても早く、的確で、仕事をさせていただくのが本当に楽しかったです。
───タイトルや構成、デザインなど、類書と差別化するために工夫された点を教えてください。
傳:タイトルについては、「システム開発の教科書」という定番感のある言葉をメインにしつつも、「お金をドブに捨てない」というインパクトのある言葉を持ってくることで、差別化を図りました。
元の企画書にあった「要件定義」をメインにした案も考えたのですが、あまり訴求しないのではないかという考えに至り、サブタイトルに入れるにとどめました。
また、カバーデザインは、類書にあまりない写真を使うことで読者の目を惹きつつ、理知的な雰囲気が出るようにしました。本文デザインは、しっかりした中にも親しみやすさを感じていただけるよう、ゴシック体を適宜用いつつ、図も多用しています。
さらに、内容面では、「経営」「会計」「業務」「システム」という大事な4つの視点をすべて網羅しつつ、あまり深掘りしすぎないことで、敷居が高くならないよう配慮していただきました。
───本書はどのような方に読んでもらいたいと思われますか?
傳:「自社を強くしたい」と考えているすべて経営者の方、経営企画部門の方に読んでいただきたいです。昨今、システムを導入していない会社はほとんどありませんし、システムとの付き合い方が競争力の源泉になるくらい、非常に重要なテーマだと考えています。
システムには難しい話も多いですが、本書は全体像を最も手軽に、手早く理解できる手段になると思います。
───普段企画を考える際、どんなことを大事にされていますか?
また、今後手がけてみたいテーマがあれば、教えてください。
傳:ほかにはないコンテンツをお持ちの方とご一緒できるかどうかを大事にしています。著者の方の実地に即した問題意識やノウハウが本の価値の源泉だからです。
テーマについても、自分から設定するというよりは、著者の方の個性から設定するほうが圧倒的に多いです。タイトルの付け方については編集者の力量に負うところが大きいですが、著者の方の個性があってこそ良いものができることが多いと感じています。
───「一緒に本をつくってみたい」と思う著者はどんな人物ですか?
逆に、「こんな著者とは一緒につくりたくない」と思うのは、どんな人物ですか?
傳:同じ問題意識を共有でき、本を通じて社会に価値を提供しようとする熱意をお持ちの方と一緒に本をつくりたいと思っています。
逆に本を出すことが、手段ではなく目的になっている方とは、あまりご一緒したくありません。
───本作りにエージェントが関わることのメリットにはどのようなことがあると思われますか?
傳:自分の目が届かない範囲から魅力的な方を発掘してくださることが最大のメリットだと思います。
また、自分の考えに対して、客観的な意見をくださることもありがたいですね。
───最後になりますが、ビジネス書作家を目指すメルマガ読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
傳:どんなに良い編集者であっても、著者の方の熱意や良質なコンテンツがそろっていなければ、良い本は創れません。著者としてふさわしい実績を作るのはとても大変なことですし、その実績を本の形にするのはさらに困難なことが多いですが、やり抜いた先には必ず得るものがあるはずです。
いつか著者としてご一緒できることを楽しみにしています。
───傳さん、貴重なお話をありがとうございました!
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