雨が降るごとに涼しい風が吹いていますね。三味線にとって過ごしやすい季節になってきました。今年はたくさんの三味線を酷使した鬼龍院花枝です。
三味線を始めるにあたり、三味線と一口に言っても色々な種類があることに気付かされます。そしてその種類の違いにも伴い、三味線にも様々なジャンルがあります。
今回はその三味線の形状の違いやジャンルそして三味線の流派について、少し掘り下げてご紹介いたします。
三味線の種類は一種類だけにあらず
私が自己紹介の時に
「三味線をやっています。」
と言いますと、高確率で帰ってくる答えナンバーワンは「吉田兄弟(あるいは高橋竹山)みたいな津軽三味線ですか?」です。最近だと「あ、あの桐谷健太が弾いてるやつ?」と言われ、最初意味がわからなかった私はYoutubeでその答えを知るのでした。桐谷健太さんが弾いているのは、沖縄の三線だったのです。
さて、そのように三味線と一口に言ってもイメージされるものが大きく違ってくることに気づきます。私の三味線は津軽三味線でなく、もちろん三線でもありません。中棹三味線と言うものを演奏しています。
三味線は大きいものから津軽三味線、太棹三味線、中棹三味線、細棹三味線、三線と大きく5つに分けることができます。(他にも厳密には三味線ではありませんが…南九州地方にはゴッタンという、三味線によく似た楽器があります。)
それぞれ種類が違い、もちろん音色や演奏される曲も変わってきます。三味線の種類の多さに驚いた方も多いのではないでしょうか?
種類の違いが音の違い演奏曲の違いにつながっていく
実際に三線の音と津軽三味線の音を比べてみると、音色の違いが分かるのではないかと思います。それぞれの土地の条件や風土風俗に合わせ、三味線や三線も変化を遂げてきました。
私は一番最初に中棹三味線を使った常磐津節と小唄を習い始めました。
ですが、これは私が選んで始めたわけではなく、お稽古に行ったお師匠様がそれをされていたからでした。
ですので三味線のお稽古を始めたのち、津軽三味線や三線の存在を知り驚いたものでした。同じ三味線のような形をしているのに、これほどまでに音や演奏スタイルが違うのか…と。
ちなみに、私がお習いした三味線と、津軽三味線の弾き方は全く違います。そもそも最初の姿勢や構え方から違いますので、機会があれば演者の姿を見比べてみて下さい。
流派とはなんぞや!?一言で洗わずのは難しい世界
同じ三味線なのに演奏方法などが全く違うことも驚きでしたが、さらに驚いたのは津軽三味線や私が習っていた常磐津節、小唄以外の「流派」があるということでした。
長唄に清元、義太夫、地唄…その中でもさらに細分化された三味線の世界があったのです。
流派というのは、もしかしたら日本舞踊などで耳にしたことがあるかもしれません。有名な流派では坂東流や花柳流などが挙げられます。
三味線の流派で有名なものが長唄や清元。歌舞伎や日本舞踊の伴奏などに頻繁に使われています。演目も非常に多く、目にする機会の多い流派です。常磐津はそれにもう少し浄瑠璃のエッセンスが入り、重厚な語り口で物語が展開されます。これらは三味線が最も栄えた江戸時代に、多くの曲が作曲されました。
小唄や端唄は短い時間で楽しめる芸事として、長唄や清元などのエッセンスを取り入れたものです。明治時代頃から流行し、現在に至ります。
いろいろ種類はあるけれど、最終的には巡り会わせ
最後は少し難しい流派の話になりましたが、芸事は「人」が習い継承し次へ繋げていくものです。教えるのも人ならば、習うのも人です。そして人を繋ぐのは巡り会わせやご縁なのだと私は思います。
私がたまたま巡り会わせたお師匠様から常磐津節をお習いしたように、これを読まれたどなたかも不思議な巡り会わせで三味線や何かしらの技芸を習うことになるやもしれません。