初めて三味線を耳にする方は、たまに私はこのような質問を受けます。
「三味線の音でドレミって弾けるんですか?」
もしくは
「三味線の楽譜は五線譜ですか?」
三味線というとどうしても古典の曲や民謡など、最近の曲とは遠いイメージを持たれるかもしれません。ですが、ズバリお答えすると三味線で弾けない曲はありません。耳慣れない音ですが、実はどんな流行歌でも弾くことのできる三味線のお話を、今回はお届けします。
「ちりとてちん」と「ドレミ」の関係
クルーズのお仕事などで、最近は街中で三味線を教えたり演奏する機会を頂いております。街中ですから、海外のお客様や観光客、地元の方にもたくさん耳に入れて頂けるところが嬉しいところです。
さて、そんな多くの方の目に触れる三味線ですが、合間に色々と質問を受けることもございます。その中で多い質問が
「三味線の音で、ドレミは弾けるのですか?」
という質問。
これに対しては「はい!」とお答えした後、三味線でドレミファソラシド♪と目の前で弾いております。
これを聞いて、ピンと来た方はとても勘がよろしゅうございます。そう、ドレミが三味線で弾けるということは、ある程度の曲は三味線で弾けるということです。(理屈上は…と一言添えておきます…。)
ですので、三味線とは縁遠そうなヒットチャートを駆け抜けた名曲だって、三味線で奏でることは十分に可能なのです!
では、その三味線の譜面ってどう書くの??
先ほどの質問に対して、さらにこのような質問を受けることが多くあります。それは
「じゃあ三味線の譜面って、どうなっているのですか?」
三味線の譜面は、実はお師匠様によって書き方が異なります。
市販の三味線の楽譜は、一般的には「三線譜(さんせんふ)」と呼ばれるものを多用しております。三線譜とは三本の横線にアラビア数字で勘所を示したもので、独特の記号が出てきますが基本的には五線譜の楽譜と同じように読むことができます。今は三線譜のデータを無料で配信しているサイトもありますし、楽器屋さんで売られている三味線関連の本はほとんどこの三線譜です。
私が初めてお習いした時は、三線譜というものは使いませんでした。お師匠様が使われていた楽譜の書き方をそのままそっくり覚え、その書き方で採譜しておりました。
お師匠様が使っていた譜面は「縦譜(たてふ)」と呼ばれたいたもので、かなり独特な書き方をする譜面でした。この楽譜の読み方に慣れるのは少し時間がかかり、譜面の読み方を覚えるだけでも一苦労…という方も少なくありませんでした。
どう書いていた?かつての三味線の楽譜
これはまだ三味線を始めた頃、お師匠様から聞いた話です。
少し前まで三味線の楽譜というものはあまりありませんでした。今は市販の三味線の楽譜がありますが、それはほんの最近の話。
その昔、三味線は譜面として記録を残していなかったそうです。それは三味線のお稽古方法に理由がありました。
三味線は基本的に一対一でお稽古し、ICレコーダーやカセットテープがない時代はお師匠様の伝えることを必死で覚えて暗記していたそうです。
同じ曲を演奏しても、お師匠様によって若干弾き方が違うこともしばしばあります。譜面という形で残すことはなく、「譜面はメモ書き程度」と考えるお師匠様ばかりだったとか。
三味線ひとつで民謡からヒットソングまで!
一番初めに書いたように、三味線である程度の曲なら弾くことができます。先日教え子の高校生たちが文化祭で「世界にひとつだけの花」を演奏しましたが、これも市販の楽譜をアレンジして作ることができます。
三味線と聞くと、どうしても民謡や古典の曲しか演奏できないものだ。と思われている方は意外と多いのですが、その方たちには是非三味線で演奏された現代曲の数々を聞いて頂きたいものです。
耳慣れた曲を三味線で聴くと、「あ、こんな曲も弾けるんだ!」と三味線との距離がぐっと近くなること…もあるようです。