書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:『絶対に負けない交渉術 やってはいけない35のルール』(ソフトバンククリエイティブ)
ソフトバンククリエイティブ
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著者:植田 統(うえだ・おさむ)さん
弁護士、国際経営コンサルタント、名古屋商科大学教授。1957年生まれ。
東京大学卒業後、ダートマス大学経営大学院にてMBA取得。成蹊大学にて法務博士取得。
東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)、ブーズ・アレン・ハミルトン、野村アセットマネジメント、レクシスネクシス・ジャパン代表取締役、世界最大の企業再生コンサルティング・ファームであるアリックスパートナーズでライブドア、JALの企業再生を担当し、弁護士、国際経営コンサルタントとして独立。
著書に『45歳からの会社人生に不安を感じたら読む本』(日本経済新聞出版社)など多数。
───「交渉術」というと、社外の取引先とのやりとりをイメージしますが、本書の交渉術を身につけると、たとえばどんな場面で役に立つのでしょうか?
植田 統さん(以下、敬称略):“交渉”というと、ビジネスの相手方との交渉を思い浮かべるかも知れませんが、「奥さんとお小遣いをいくらにするか」「どこへ旅行に行くか」を相談するのも交渉です。
つまり、人生はあらゆる交渉で成り立っているので、交渉術はどんな場面でも使えます。
───「交渉術」の類書は数多くありますが、そのなかで本書の特徴、類書との違いはどんな部分になりますか?
植田:交渉術の本の多くは、いかに相手から譲歩を引き出すか、そのために相手を脅かしたり、相手の虚をついたりする方法が書かれているようです。
私は、交渉とは「相手と利害を公平に調整する場」と捉えているので、胸を張ってできるWin- Winの交渉を目指しています。
───本書では、「交渉のボールを相手に投げさせる」「交渉後にデザートをつける」など、ユニークかつシンプルなルールが具体例を交えて紹介されていましたが、植田さんが考える、「交渉で大切にするべき要素」には、どんなポイントがありますか?
植田:交渉は利害対立を公平に処理する場ですから、お互いの利害状況を正確に理解しておくことが一番大切です。
自分と相手がこだわるポイントが違えば、自分が重視するポイントで相手に譲ってもらい、相手が重視するポイントで自分が譲ることで、お互いの利害を均衡させることができます。
───執筆にあたり、内容の構成や文章の書き方など、何か苦労されたことはありますか?
その際、編集者やエージェントからはどんなアドバイスがありましたか?
植田:今回はライターさんの協力を得たのですが、いかにわかりやすく書くか、という点で非常に勉強になりました。
また、打ち合わせに長時間をかけたのですが、それでもプロのライターさんになかなか理解してもらえなかったこともあり、自分の考えを相手に伝える難しさも学びましたね。
───本書はどのような方に読んでほしいと思われますか?
植田:やはり、バリバリと仕事をしているビジネスパーソンに読んでいただきたいと思います。とくに、ハーバード流交渉術とかで、交渉とは相手を打ち負かすことと考えている人には、この本を読んで考えを変えてもらいたいと思います。
───本書の発売後、周囲やネット上などで、どんな反響がありましたか?
印象に残る感想や意見などがありましたら、教えてください。
植田:「なるほど、植田さんは交渉をフェアな利害調整と考えているのですね」と友達から言われました。私が本書で一番言いたかったポイントだったので、それがしっかり読者に伝わっていると実感でき、大変うれしかったです。
───植田さんはこれまで多くの著書を出版されていますが、原稿内容を多くの方に理解していただくために、ご執筆の際に注意していること、気をつけていることはありますか?
植田:わかっていただけるように書くこと。
独りよがりでなく、論理的で、誰もが「なるほど」と思える文章を書くこと。
これに尽きると思います。
普段自分で考えていることでも、文章に書いてみると論理的でないということがあります。
また、前日書いた文章を翌日読み直してみると、わかりにくいということもあります。
そういうときは、自分の頭をもう一度整理して、書き直しています。
───企画のテーマを考えるうえで、どんなことをヒントにされていますか?
また、次回はどんなテーマについて執筆したいと思われていますか?
植田:企画のテーマは、やはり自分の日常の体験ですね。自分で「これはおかしい」と思ったこと、「ああすればうまくいったはずだ」と思ったこと、それを頭の片隅に留めておき、それが膨らんでくると、本の企画書に落とします。
次回は、「45歳からの勉強法」について書くつもりです。これも自分が45歳を過ぎて司法試験を受け、弁護士になった経験に基づいています。
───本作りにエージェントが関わるメリットにはどんなことがあると思われますか?
植田:私自身は、自前で4冊の経営書を出していたのですが、弁護士として独立するにあたって、法律書を出すチャネルがなく、エージェントに頼みました。
著者個人の持っているネットワークは狭いものなので、エージェントにお願いすると、色々な出版社にコンタクトしてくれるところが助かります。
───最後になりますが、ビジネス書作家を目指すメルマガ読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
植田:ビジネス書というと、いわゆるハウツー本で、たくさんの本を読んだり、大量の知識を仕入れれば書けそうな気がしますが、読者が求めているのは、著者独自の経験に基づく考え方、意見です。
したがって、ビジネス書を書くことだけを目指しても本にはなりません。
自分自身でビジネスで幅広く活動し、特殊な経験を積みあげることが、ビジネス書を書く前提になると思いますよ。
───植田さん、ありがとうございました!
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