前回インタビューしたけいろーさんに紹介していただいた、チェコ好きさんにお話をうかがいました。
(文/池山由希子)
───ライターになったきっかけを教えていただけますか?
チェコ好きさん(以下、敬称略):社会人になった2012年にはじめたブログがきっかけでした。大学院でずっと論文は書いていたので、文章を書くという行為はずっとしていたんですけど、コラムみたいなものを書いたのはそのときが初めてでした。
───最初は趣味としてブログを書いていたんですね。
チェコ好き:はい、当時仕事は違うことをやっていたので。周りのライターの方でも、趣味として書いていたブログがきっかけでライターの仕事をもらったという方は結構いますね。
───ご自身のブログは、いつごろあたりに読む方が増え、話題になりましたか?
チェコ好き:初めの一年くらいは全く読まれないブログだったんですよ。たぶん調子のいい人は開設3ヶ月で30万PVみたいな人もいると思うんですけど、わたしは月に1,000PVぐらいのところをずっとうろうろしていて。
開設してから1年くらいたって、カズオイシグロの『日の名残り』という小説の感想を書いた記事が全くの偶然でいっぱい拡散されて、それがきっかけで、たくさん読んでもらえるようになりました。
「正直、人生ちょっと後悔してる」そんなあなたが読むべき本はこの1冊! – チェコ好きの日記
───ブログでは、映画や本・美術などについての記事を多く書かれていますが、ライターとして得意なジャンルもこういった芸術関係のものですか?
チェコ好き:そうですね、私の得意としているジャンルは芸術なんですけど、芸術のみに特化した媒体というのがまだたぶんないので、例えば、芸術と20代後半の女性の心情を掛け合わせる、みたいな、自分の得意分野を生かして、その分野に興味がある人だけでなく、もっとたくさんの人に読んでもらえるような切り口と結びつけるようにしています。
芸術に興味がある人だけに読まれる記事にはしたくないと思ってるので、全然興味がない人でも読んでもらえるように、かつ、興味をもってもらえるきっかけになるように、というのは意識して書いてますね。
───旅行についての記事もよく書かれてますよね。今まで行った国の中で一番気に入っている国はどこですか。
チェコ好き:ハンドルネーム詐欺になってしまうんですが、モロッコです(笑)モロッコは一週間くらいいたんですけど、まったくいい思い出がないんですよ。なのにどういうわけかまた行きたいと思っている、不思議な魅力がありますね。
こっちの常識が全く通用しないので、理不尽なことが起こってとても疲れるんですけど、そうやって予想外のことが起こるのがすごく楽しいです。
───現実的な条件をすべてとっぱらって、好きなところに住めるとしたらどこに住みたいと思いますか?
チェコ好き:イスラエルは住んでみたいですね。イスラエルは、テロが起きたりして、物騒な国ってイメージがあるかもしれないんですけど、実際に行ってみると、物騒なことは確かなんですけど、すごい街自体がきれいなんですよ。インフラとかが整ってますし、発展的で、人も親切で。雰囲気が自由な感じがして、住むとしたら住みやすいんじゃないかなと思いますし、いい意味でイメージを裏切られることがあるので、長期間いたいです。やはり、意外なことを求めてますね。
───予想外なことや意外なことを求めている、というのが旅行をする理由なんですか?
チェコ好き:そうですね、旅行に何を求めるかは、そのときどきで変わっているんですけど、20代前半のころは、美術を勉強してたので、美術館に行きたいっていうのがあって。今は、自分の知らないところを見たいっていう気持ちが強いです。
旅行がきっかけで、最近はイスラム圏にも興味がいってますね。日本人にはなじみが薄くて、でも、いま世界的にすごく存在感が強い、イスラム教ってなんなんだろうって。
───何かを知りたいという欲求が、旅行することや芸術に触れることにつながって、そしてそれが記事を書くことにつながっているんですか?
チェコ好き:そうですね、知らないことってまだまだ世の中にいっぱいあるので、それを自分が知りたいという欲求がまずあって、で、知ったことをみんなに報告してるっていうのがブログのイメージです。わたしがみつけてきたおもしろいものをみんなみてくれ、みたいな感じで書いています。でもやっぱり、みんながもっと共感するような内容を書いたほうがいいのかな、とか、もっとわかりやすく役に立つ記事をかかないとだめなのかな、みたいな葛藤も自分の中ではありますね。
───その葛藤はいつごろから抱えているんですか?
チェコ好き:ブログが多くの人に読まれるようになってからですね。人の目線を意識しだすと、このままこうやって書いていていいのかな、とかたまに悩んだりしますね。
───そういったときは、自分が書きたいことを書くのと、人を意識して書くのと、どちらを優先させるんですか?
チェコ好き:そうですね、その中間をとるというか、うまくバランスをとろうとしています。ブログでも、思いっきり自分の趣味に走った記事を書いた後には、身近な話題について書いたりとか。
でもあんまり読み手を意識しすぎると、私もう書けなくなって、最終的にはやっぱり自分の好きなものしか書けないので、じゃあもう葛藤するなよ、っていう話ではあるんですが、でも、自分のやりたいことと、みんなに求められていることのバランスを常にとってよろよろしてる、みたいな感じですね。
───マニアックな記事とキャッチ―な記事、それぞれの反響はだいたい予想通りですか?
チェコ好き:だいたい予想通りですね。だけど、かなり自分の趣味に走った記事は、人数は少ないけど、強烈に好きになってくれる人がいるんですよ。100人に軽く接触しにいくか、3人くらいに深く刺しに行くか、みたいな話なんですけど、両方のテイストの記事が書けるほうがいいとは思っています。
───今までで特に印象に残っている案件はなんですか?
チェコ好き:SOLOという、20代後半から30代前半の独身女性のためのメディアで連載をしているんですけれども、それは自分の中で大きい存在ですね。対象とされている読み手を考慮して、どうやって書いたら女の人に共感してもらえるんだろう、と悩みながらも、すごく勉強になっています。まあ私も女の人なんですけど(笑)
SOLO チェコ好きさんの記事一覧
───対象とされる女性たちが考えていることを知るために、どんなことをしているんですか?
チェコ好き:雑誌やツイッターをみてヒントを得たり、直接話を聞いたり、あとは電車での会話を盗み聞きしたり(笑)一般的な女性はどういうことを考えているんだろうな、と日常的に考えるようになったんですが、では、一般的な女性の定義とは、とか考えだして、出口がなくなってしまって(笑)
よくよく考えてみるとみんなやっぱり個性的な部分があったり、みんな違うので、あんまり一般的な女性っていないんですよ。では、わたしも一般的なんて無視して自分の好きなことを書いていいだろう、と振り切るときもあれば、やっぱり一般的な方によらなきゃいけないのでは、とか思う時もあって、そこは何年も何年もぐるぐるしてますね。
───もし、いまライターをやっていなかったら、何をしていたと思いますか。
チェコ好き:なかなか想像するのが難しいですね。ただ言えるのは、私は以前、一か月ほど旅行したいという理由で会社をやめて、その旅行からかえってきたあとに、いま働いているニュースアプリの会社に入ったんですが、ライターっていう仕事で首の皮をつないでいなかったら、そういう行動はしなかったと思います。ライターの仕事からの収入が精神的なセーフティーネットになるので、わりと思い切った決断ができるというのはあるかもしれないですね。
───このお仕事をほかの人に薦めたいと思いますか?
チェコ好き:そうですね、楽観的というか、あんまりこんつめて考えない人のほうがいいんじゃないかなと思います。私は、「イスラム教とは何か」みたいなことについてはすごい深く考えるんですけど、自分の人生とかキャリアとかになるとまったく考えないで行動するので(笑)
やっぱりライターは不安定な仕事ですし、先が読めない部分があるので、すごいまじめで、将来を考えて、みたいな人がやると、精神的にやられちゃうかなって気がするので。将来設計をきちんとしたい人はすればいいし、あんまそういうことを考えたくないって人がいたらそれはそれでいいと思うんですけど、どっちにしろ予想外の事は起こるので、偶然みたいなのはあるんだと思ってたほうがいいかもしれないですね。
───チェコ好きさん、本日はありがとうございました!
次回はチェコ好きさんにご紹介いただいた、タナカユウキ(@y_tanakarchi)さんにお話を伺います。