前回インタビューした戸田江美さんに紹介していただいた、小松崎拓郎(@takurokoma)さんにお話を伺いました。
(文/池山由希子)
───ライターになったきっかけを教えていただけますか?
小松崎さん(以下、敬称略):大学3年生の頃に、ピースオブケイクという会社で1年間、インターンをしたんです。「cakes」というメディアで編集のお手伝いをさせてもらったのですが、そのインターンで、自分は編集が好きで、それがやりたいことだと気付きました。
そこからいろいろな媒体でお仕事をさせていただき、大学卒業と同時に、いま所属している株式会社waseiに入社しました。代表の鳥井にひろってもらった、という感じです。今は、ウェブメディアの「灯台もと暮らし」などに携わっています。
───編集のインターンをはじめたきっかけは何だったんですか?
小松崎:大学3年生のときに、学校を1年間休学したんですね。そのときすでに、就職活動をして内定を頂いてはいたんですが、そこでの仕事は本当に自分のやりたいことなのか、という疑問があったんです。その疑問がふつふつとたまり、ここで仕事を始めるのはまずいと思って、休学しました。
自分が好きで、そして自分に向いていることって何だろうと思って、休学中にはいろいろな会社さんやNPOなどで、短期バイトやインターンとしてお世話になりました。
「cakes」は、読んでいて心地よい記事が多くて、いいなあと思って興味が湧いたので、その編集のインターンに応募したんです。「cakes」に携わっていた方たちも、すごく面白い方たちで。素敵で、知識量も多くて、そして良い意味ですごく変な人たちでした(笑)。周りの人に惹かれて、自分もそういう風になりたいなと思って、そこでのインターンを1年間続けました。
───ライターとして得意なジャンルを教えていただけますか?
小松崎:得意ジャンルは、どうだろう、悩みますね……、これといってないです(笑)。
自己評価ってきっとあてにならないので、周りの方から得意だと言ってもらえることを挙げるとすれば、人間関係を表す、ということです。例えば「灯台もと暮らし」では、対談系の記事などを任せてもらっています。
───普段からそうやって、ご自身が思うことよりも周りの方の意見を尊重されることが多いですか?
小松崎:完全にそうです。例えば、前にこの連載にも登場されたタナカユウキさんと、奥さんのユウカさんを「ふたり暮らしに学ぶ」というテーマで取材させていただいたんですね。
僕自身が去年の7月に、彼女と一緒に暮らし始めたので、この「ふたり暮らしに学ぶ」という連載を始めたら面白いんじゃないかと周りの方が言ってくれて。
自分の事情をさらけ出して書くことに抵抗があったので、最初はやりたくないと思ったんです。でもみんながやりなよと言ってくれて、それを優先してみようかなと思って始めました。意見は変わりやすいですね(笑)。
【ふたり暮らしに学ぶ #1】初めての同棲|家具の選び方やお金の管理、どうしていますか?
http://motokurashi.com/our-learning-tanakayuki-yuuka/20161003
───私も拝読しましたが、ご夫婦のあたたかさが伝わってくるとても素敵な記事でした。取材の際にはどんなことに気をつけていらっしゃるんですか?
小松崎:取材に限らず、企画を立てるときにはいつでも、「三方良し(さんぽうよし)」ということを念頭に置いています。つまり、読み手・取材先・そして自分たちという、三方全てにとってためになるものか、ということですね。
あと取材させていただく方に失礼のないように、話すときも書くときも言葉遣いに気を遣ったりとか。
書くときには、どんな世代の人にもきちんと伝わるように書く、ということも念頭に置いています。
───今までに印象に残っている案件は何ですか?
小松崎:夫婦で「アタシ社」という出版社を設立して、『髪とアタシ』という雑誌をつくっている、ミネシンゴさん、三根加代子さんご夫婦に取材をさせてもらったんですね。そのときに、パートナーと一緒に仕事をしながら暮らす、という生き方を教えていただいたのが印象的でした。
僕は「暮らし」というのを軸にお仕事をさせてもらっているので、こういう風に暮らし方を学んで発信できた、ということは自分にとって響いています。
またこの夫婦対談をきっかけに、紙媒体も含めていろいろなところで、お二人の夫婦としての暮らし方・働き方が取り上げられるようになったんですね。
そういう意味では、お二人を応援する着火剤になれたのかもしれないと思っています。ご本人からも、最初に取材してくれたのが僕でよかったって直接メッセージを頂けて嬉しかったです。
───まさに先ほどおっしゃっていたような「三方良し」の企画だったんですね。もし今、ライターをやっていなかったら何をしていたと思いますか?
小松崎:僕は大学生のとき写真部だったので、写真関連のことを仕事にしているかもしれません。以前のタナカユウキさんのインタビューの答えと被ってしまうんですが(笑)。
写真部の展示会に行ったときに、素敵だと思った作品を撮った方がオダギリジョーさんみたいな感じのかっこいい方で。それで写真部に入るのを決めました(笑)。写真を撮る技術を生かすことが出来るっていうのが、ライターになったきっかけのうちのひとつでもあります。
───「cakes」での編集のインターンを続けた理由といい、写真部に入ったきっかけといい、周りの方に惹かれて、ということが多いんですね。
小松崎:確かにそうですね。今も取材などでいろいろな方にお会いして、お話を伺って、本当に毎回勉強させてもらっています。僕自身、大学を思い切って休学して、ある意味レールを外れたことで、やりたいように出来るようになったんですが、取材ではいつも、こういう暮らし方・生き方もあるのか、という新しい発見があります。
───最後に、ライターの仕事を他の方にもすすめたいと思いますか?
小松崎:ライターを仕事にするかしないかは、その人次第だと思うんですが、物事を正確に相手に伝える技術は、他のどの仕事にも転用できると思います。
あとライターの仕事は、書くことだけじゃなく聞くことも結構大事で、ちゃんと聞いてそれをアウトプットするという能力が養われると思います。
例えば、ジーンズの聖地と言われている岡山県倉敷市児島で、「EVERY DENIM」というジーンズブランドをやっている方々と、僕たち「灯台もと暮らし」が、シナプスというプラットフォームでオンラインサロンをやっていたんですね。
今の時代において、自分たちにとって必要なデニムとはどんなものか、というテーマのものです。
そのオンラインサロンの運営に僕も携わっていて、EVERY DENIMさんとやりとりしながらFacebookの非公開グループの中で、サロンメンバーの方々に向けて文章を投稿していました。
参加している人たちに正確に物事を伝えたりとか、イベントをするために文言をしっかり作ったりとか、細々したことなんですけど、しっかりとライティングをしてきたからこそできることだなと思っています。
───今日はありがとうございました!
次回は、小松崎さんにご紹介いただいた、小林香織さんにお話を伺います。