前回インタビューした小松崎拓郎さんに紹介していただいた、小林香織さんにお話を伺いました。
(文/池山由希子)
───まず、ライターになったきっかけから伺いたいと思います。小林さんは、ライター養成講座に通われたあとに、デビューなさったんですよね?
小林香織さん(以下、敬称略):はい。当時アニメ関係の仕事をしていたんですが、どうしても好きになれなくて、一生続けたい仕事を探していたんです。いろいろと模索するうちにライターに興味を持って。2013年12月から、宣伝会議の編集・ライター養成講座に通い始めました。
そのときは「絶対にライターになりたい」というより、「どんな職業なのか知りたい」といった気持ちでした。ライターに興味を持ったのは「世の中に強いメッセージを届けられる仕事」だと思ったからなんです。
デビューのきっかけは講座を卒業したあと、2014年11月に「しらべぇ」というニュースサイトのライター募集コンテストに応募して、合格したことでした。
───養成講座に通ったり、「しらべぇ」で執筆したりするうちに、ライターが好きでやりたい仕事だと思ったのですか?
小林:養成講座に通っているときはそれほど思わなかったんです。授業には出ていましたが、課題はきちんと提出していないくらいだったので(笑)。
「ライター最高!」って思えたのは、「しらべぇ」での執筆経験があったから。読者に向けてプロとして書くことを覚えていくなかで、とある記事がヤフートピックスに掲載されたんです。担当編集さんに「ヤフトピ載ったよ!」とメールをもらって、震えました(笑)。
当時話題になっていたニューヨークのカフェの取材レポだったのですが、シェア数が5,500を超え、知り合いからも「おめでとう」と言ってもらえて、嬉しすぎて泣きました。旅行ついでに立ち寄って取材したんですよ(笑)。
そこからだんだんと人脈を広げるなかで、お仕事をいただけるようになって、2016年の頭に「エイッ!」と勢いで、フリーランスライターになりました。
───先ほどおっしゃっていた「読者に向けてプロとして書く」というのは具体的にどういうことか教えていただけますか?
小林:まず、「読み手の気持ちを想像して書く」ということです。想定している読者の方々に誤解なく伝わるように、構成を工夫したり、かみくだいて表現したり、必要であれば注釈を加えたり。
あとは「主観を入れずに客観的に書く」ということも学びました。ニュース記事がメインの「しらべぇ」では、記事に私の気持ちは必要なかったので。
それと細かい言葉遣いですね。「でも」ではなく「しかし」を使ったほうがプロっぽいとか。
もちろん記事のテーマや媒体の色によって、求められるものはさまざまですが、こういった客観的な書き方を最初に教えていただけたことで、私のライター人生は開いていったと思っています。「しらべぇ」に拾っていただき、本当に幸運でした。
───ライターとして得意なジャンルを教えていただけますか?
小林:人物インタビュー、働き方を含めたライフスタイル、旅、あとは体験記です。
人物インタビューでは、取材相手の人生ストーリー、赤裸々な想いなどを伝えられることにやりがいを感じます。
理論的に何かを説明したり、ノウハウ などを書いたりするよりは、人生ストーリー、体験、気持ちなどを伝えるほうが熱量の高い伝わる文章になる気がして。人生ストーリーを書くと、取材相手の方に喜んでいただけることが圧倒的に多いんです。
───インタビューのときは、どんなことに気をつけていらっしゃるんですか?
小林:読み手を意識して、想定読者の方々がどんなことを知りたいか、さらに読み終えたあと読者にどんな行動をしてほしいかまでを考え、事前に質問リストを作ります。
その際は世に出ている取材相手の情報を極力取り込むようにして、そのなかで素敵だなと思ったことは、取材中にお伝えします。
逆に疑問に思ったことは素直に質問して、なるべく知ったかぶりをしないように(笑)。
あと私は結構、お話を聞いて素直に納得してしまうタイプなのですが、別の視点や反対意見についてもお聞きしようと意識しています。「こんな視点の意見についてはどう思われますか?」とか、「それができない人もいると思うのですが」などと聞いて、厚みのある記事になるように。
───今までに印象的だった案件を教えていただけますか?
小林:直近だと、バレエ界のトップダンサーさんのインタビュー記事です。新国立劇場バレエ団所属の米沢唯さんというダンサーで、タイトルにも含まれている「声が出なくなるほどの試練を乗り越え、バレリーナの夢をつかんだ」というエピソードを、このインタビューで初めて話してくれました。そのおかげで反響が大きくて。
バレエ団の方々、ファンの方々、そして掲載媒体にも喜んでいただけたし、バレエの魅力、米沢さんの魅力を少しでも世の中に届けることができたかなと思います。
───他にも印象的だった案件はありますか?
小林:しらべぇに次いで、ヤフトピに掲載されたインタビュー記事ですね。「戦略的ワーキングマザー」として大活躍中の女性起業家・小田桐あさぎさん(記事掲載当時:宮本アサギさん)を取材したんですが、「結婚はいいことしかない」と強烈なメッセージを放ったことが、ヤフトピに掲載された要因だと思っています。
Yahoo経由の記事として転載されたため実際のPV数まではわかりませんが、相当数読まれていて、きっと多くの方の感情を動かせたと思います。それは、とても大きな自信になりました。
ただ欲を言えば、記事を読んで感動したり、シェアしたりするだけでなく、もう一歩先まで行ってほしい。例えばこの記事だったら、結婚をポジティブなものと捉え、何かしら結婚に向けて踏み出してほしい。でも現状は読者の行動まではわからないので、「一歩踏み出してみて!」といつも祈っています。
印象的だった案件、まだあるのですがいいですか(笑)?
───ぜひ教えてください(笑)!
小林:まだ掲載はされていないのですが、島根県の山奥でワサビ収穫体験をした取材が印象的でした。
匹見ワサビの美味しさを伝えたいと、民泊・レストランの運営と、ワサビ収穫体験を提供している方がいて、その方と一緒に断崖絶壁の山を登ったんですが、時にマムシが出ると聞いてビビリまくりで(笑)。
でも「ここまで来て引き返すなんて、そんなカッコ悪いことできない!」と急勾配をずり落ちそうになりながら、どうにかこうにかワサビ田まで行き、無事に収穫しました。
その場で擦って食べたわさびの美味しさは、今でも忘れられません。わさびって3年の年月とものすごい手間暇をかけて収穫されるんですよ。だから余計に感動しました。
───先ほども、体験や感動を伝えるのが得意とおっしゃっていましたよね。
小林:そうですね。自分で体験したり感動したりしたことだと、より熱量が高い文章が書ける気がします。
あと2月に3週間、福岡県柳川市で移住体験をしました。地元の方々と交流したり観光したり、その移住体験を記事化するお仕事なのですが、これも一生忘れられないような財産になりました。
<参考>
予約5か月待ち!移住体験超人気の「柳川市」にさすらいワークしてみた~その1~
https://lohai.jp/yanagawa/kaori-2/
───ライターの仕事をしていなかったら、何をなさっていると思いますか?
小林:うーん……。おそらく、メッセージを世の中に伝えられる別の仕事に就いていたんじゃないかなぁ。それは幼い頃からブレない私の芯なんだと思います。
だから、ライターだけをこれからもずっと続けるかはわからないですね。形を変えてメッセージを伝える方法を見出すかもしれないし、書くことを通じて得たスキルを誰かに教えることもあるかもしれない。
私が目指しているのは「誰もが使命感を抱き、自由なライフスタイルを選び取れる世界を創ること」、「人を愛する豊かさを伝染させていくこと」なんです。
───ライターの仕事を他の方に勧めたいと思いますか?
小林:なかなか難しい質問ですね……。私自身はフリーライターを始めて、天職に出会えたと思っています。魅力的な方々への取材や、さまざまな初体験を通して、世の中にメッセージを伝えることができるのは何よりもやりがいを感じます。
ただ、「短期間で多くの収入を得たい」とか「安定を求めたい」という人には向いていないかもしれません。受注ライターの場合は一気に単価をUPさせるのが難しかったり、急に媒体の体制が変わって仕事がなくなったりすることもしょっちゅうです。もちろんその方の素質や努力にもよりますが。
その代わり、理想のライフスタイルを築きやすいという一面はあります。私自身、3週間にわたってホームではない福岡に住みながら仕事をやりくりできましたし、昨年はプライベートの旅と取材を兼ねて、石垣島や島根、九州へ自由に出かけました。
旅先や新天地で仕事を生み出すことも夢じゃないですよ!
24時間を自分でカスタマイズしたい方、そして世の中に熱いメッセージを届けたい方にはオススメします!
───本日はありがとうございました!
次回は小林さんにご紹介いただいた、小松田久美さんにお話を伺います。