酒と泪と女と女

“自分の壁”を越えてゆけ! 結婚の最大のメリットは人生の“共同経営者”ができること
桐谷ヨウ(ファーレンハイト)× 福田フクスケ × 川崎貴子対談(第5回)

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「なぜ、男性は結婚にコミットしないのか?」元外資コンサル出身で人気恋愛コラムニストの桐谷ヨウ(ファーレンハイト)氏と、非マッチョ・文系の“くすぶり男子”代表であるフリーライターの福田フクスケ氏をお招きし、その謎を紐解いていきます。

(文/福田フクスケ

 

他人にコミットしないと越えられない壁もある

川崎貴子(以下、川崎):今まで、結婚に感じる“負担”の正体や、男性にかけられた“呪い”、自己開示できる屈託のない人が理想、といったことを話してみて、あらためて2人はどう思う? 子供が欲しいわけでもないし、シェアハウスに住んでいれば孤独でもない。でも、将来を考えると危機感を感じて結婚したいと思っている女性も多いんだけど、男性にはそういう気持ちはないの?

 

福田フクスケ(以下、福田):自分が困ったときや辛いときにそばにいてくれる人がいたり、老い先のことを考えたときに支え合える人や、残せる子供がいるのって安心だなとは思います。でも、それってある意味、妻や子供を老後の保険にしてるみたいだよな、とも思ったり。

 

川崎:それ以外では、あんまり危機感は感じない?

 

福田:それが結婚じゃないと満たせないのかと考えると……。ヨウさんは?

 

桐谷ヨウ(以下、桐谷):その話で言うと、僕は彼女とはもう5年くらい一緒に住んでいて、僕がもう遊んでいないことを彼女は知ってるし、すでにお互いが安心材料のような存在になっていて、だったらなおさら同棲や事実婚でよくない? とずっと思ってました。

でも、周りの人は、結婚をしないと2人の関係性が着地したと思わないんですよ。「この先はどうするの?」みたいな雰囲気がどうしても付きまとう。それを考えたときに、“彼女を大事にする”という行為の延長として結婚する選択肢もありかな、と最近はやっと思えてきた感じです。

 

福田:そうか。ひょっとすると、結婚の大きな動機やメリットってそこで、単純に“自分が大事にしたい人を安心させてあげられるから”ってことしかないのかもしれないね。

 

川崎:私もずっと結婚という制度の意味が良くわからなかったのね。愛という結びつきを法律で縛られるなんて息苦しいと思っていたし、血縁が増えることもわずらわしいとしか思えなかったの。だって、もしも嫁業務をちゃんと務めろとか、長男を産めとか言われるような家に嫁いじゃったら、私なんて逃げるしか術がない(笑)。

でも、今の夫のご両親は全然そんなことなくて、むしろ家では「貴子さん、仕事で疲れてるでしょう?」ってお酌されてるくらい(笑)。子育ても手伝ってくれるし、応援団というか、「愛あるステークホルダー」が増えたみたいな感じなの。自分の親以外に大好きな家族が増えるという、想像していなかったメリットがあったんだよね。

 

桐谷:あー、そういうメリットは想像できてなかったな。

 

川崎:それに、家族が増えると、視野が広がるんだよ。自分だけの成功じゃなくて、一族の幸せを考えるようになるというか、華僑みたいな考え方になる(笑)自分が守るべき範囲がはっきりすると、ブレない理念みたいなものができて、すること/しないことの覚悟が決まるようになるの。

 

福田:ある程度歳を重ねたら、自分のためだけに生きるのは限界で、そこから先はパートナーや子供のためといった守るものが必要だってよく言いますよね。そういう感覚に近いんですか?

 

川崎:うん。それに、夫や娘に対して恥ずかしくない仕事をしようって気持ちも芽生えてきたから「社会的に意味のある仕事がしたい。」という欲が出てきた。それに、以前なら、投資でも儲かりそうと思うことは、先物もFXも全部やってたけど、家族を持つようになってから、変なギャンブルを打たなくなったんだよね。

 

“共同経営者”ができるのも結婚のメリット

福田:ただ、今の俺は自分一人だけでも生きていくのがいっぱいいっぱいなのに、その上さらに他人と生活や人生をシェアする責任なんて負えないな、とも思っちゃうんですよね。

 

川崎:わかるわかる。私もそうだったけど、それはもうやってみて実感するしかないんだよ。自分の裁量だけでやっていたら超えられない壁って、キャリアの中でもあったでしょう?

 

福田:ああ、それはそうですね。フリーになったばかりで仕事がなかった時期って、週に1本の〆切だけでヒーヒー言ってたけど、何本も抱えてやらざるを得なくなれば、できるようになっていく。なんであの頃はあれで忙しいと思ってたんだろうって(笑)。

 

桐谷:あるある(笑)。

 

川崎:うん、その原動力って、自分だけでは出ないと私は思うんだよね。

 

福田:そうかも。人って結局、外部要因によって決められたり、他者にコミットしてみないと、自分の壁を突破できないんだろうな、って思います。

 

桐谷:たしかに。僕、年末年始に彼女を実家に連れて帰ったんです。そのときに先に決断ありきで、後から現実の帳尻を合わせるのもありだよな、とやっと思えました。

それは決して無計画なわけじゃなくて、それを前提にがんばろうと思えば、”がんばり方の質”が変わるよね、という話なのかなって腑に落ちて。

 

川崎:それからもうひとつ、結婚のいいところは、家庭の“共同経営者”ができて、2人で物事を決めたり助け合ったりできるということ。「魔女のサバト」と「キャリ婚」のパートナーである金沢悦子さんは、結婚してからのほうがやれることが増えたと言ってるの。

それまでは、結婚が足枷になってやれることが狭まると思っていたけど、実際は夫が「やりたいことはどんどんやりなよ」と言ってくれて、子供の世話を見てくれたり、会社が不調のときは夫が就職してくれたり、大事な局面では夫の稼ぎをあてにローンを組ませてもらったり、やれることの幅が広がったって。それはすごく嬉しい誤算だったと言ってた。

 

福田:そうか、“共同経営者”という考え方はすごくいいですね。自分が大黒柱や稼ぎ頭にならなきゃいけないと考えると不安だけど、共同経営者ができると考えれば、今は一人で食っていくので精一杯だけど、結婚すれば単純にそれが2倍になって、身動きが取りやすくなる。

 

川崎:そう。だからキャリ婚では、「共同経営者」になってほしいから、共働きを推奨しているの。ただ、パートナーによっても違うし、パートナーの家族によっても違う。そこは、相手を見極めたり、話し合ったりしなきゃいけないとは思うんだけど。

でも、一度離婚を経験した身からすると、やってみてダメだったら別れたっていいのよ。「絶対に失敗できない!」なんて思ってたら慎重な人は一生結婚できないし(笑)。周囲に迷惑はかけるかもしれないけど、ちゃんと謝ってお金のこともきれいにすれば別れられるし、そんなに怖がることはないんじゃないかな。

 

桐谷:僕は、年末年始に事態も気持ちも少しずつ動きはじめた感じだけど、フクスケさんはどう? なんとなく結婚にコミットする気は出てきた?

 

福田:うん、人生の選択肢のひとつとして、考えてみてもいいなと思った。“共同経営者になれるか”という視点があると、パートナーとの向き合い方も変わりそうだしね。

 

(了)

 

・桐谷ヨウ(@yohkiritani

・福田フクスケ(@f_fukusuke

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川崎貴子

リントス株式会社代表。経営者歴21年。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女のプロ」の異名を取る。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚。8歳年下のダンサーと2008年に再婚。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(大和書房)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(ベストセラーズ)、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、二村ヒトシとの共著に『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(講談社)等がある。

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