書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:『英語は恥ずかしいほどゆっくり話しなさい!』(ダイヤモンド社)
ダイヤモンド社
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著者:長野 慶太(ながの けいた)さん
株式会社ネヴァダ・ジャパン・コンファレンス代表。対米進出コンサルタント。1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。米国ウォーデン大学院修士(MBA)卒。三井銀行(現・三井住友銀行)にて約10年勤務後、ラスベガスで最も信頼される法律事務所Woods Erickson Whitaker&Mauriceへ。その後、対米進出のためのビジネスコンサルティング会社、ネヴァダ・ジャパン・コンファレンスを設立し、同法律事務所をパートナーとして日本企業の対米進出をサポート。15年間、日米のさまざまな商談を指南し、クライアントは2000社以上。会社設立の支援コンサルティングは300社以上の実績がある。
株式会社ネヴァダ・ジャパン・コンファレンス:http://usjapan21.com/usjapan_j/
───英会話をテーマにした本が数多と出版されているなかで、あえてこの分野で本を出されようと思われたきっかけを教えてください。
長野慶太さん(以下、敬称略):日本人が英会話を勉強するのに、いつまでもネイティブや帰国子女の言うことばかりを聞いていたのではどこかで息が詰まります。
32歳でアメリカに渡り15年経ちますが、私のようにずっこけながら、不恰好をさらしながら、失敗から学んできた人間が、その経験をあたかもリレーするようにして同邦人にそっと手渡しする。
これが今の英語学習の出版にないものだと気がつきました。
本書は、英会話の参考書ではありません。
あくまで勉強の“戦略”の本。
「英会話にも戦略がある」のです。
そうでなければ、私に書く資格はありませんし、私だから書けることかもしれません。
───世の中の英語学習のゴールは「ペラペラ話すこと」に重きがおかれています。
そんななかで、あえて「スロー・イングリッシュ」をすすめたのはなぜですか?
長野:自分自身、長年の日本での英会話習得の苦い経験からしても、日本人が目指す英会話は「かっこよさ」に重点が置かれすぎていると思います。
たとえば、「ネイティブの人ならこういう言い方をするよ」という、いわば精練で洗練された言い方を日本人が懸命になって習得する意味がどれだけあるのか、という問題意識です。
ビジネスコンサルタントである私にとっては、まず英会話は美しさやかっこよさよりも、「どれだけ会話の本来の目的を達成できるか」という目的意識が大事。
すべてはそこからの逆算であるべきです。
その時に、スロー・イングリッシュは、英語脳の回転のスピードに英会話のスピードを合致させることができるので、とても有効なツールになると考えました。
───本書では「スロー・イングリッシュ」に必要なスキルやテクニック以外にも、英会話学校はこまめに変えるべきなど、英会話の勉強を挫折してしまう理由とアドバイスも満載です。
なかでも、英語を話せるようになりたいと思って何度も挫折している読者がまず最初にやるべきことを教えてください。
長野:たくさん話せば上達も早く、英語がおもしろくなってくる。
問題は、どうしたらたくさん話せるようになるか、ということです。
実は、たくさん話せる英語力になるまで待っていると、必ず挫折します。
とにかく学力とか単語力ではなく、「人よりもまず先にしゃべりだしてしまう」という戦略が大事です。
日本語の会話を思い出してください。
“しゃべり”の上手い・下手、頭のいい・悪いに関わらず、会話を制しいちばん話す人は、「人よりまず先に、『ええと』とか『そこで』とか、他人が話すより前にまず言葉を挟みこむ人」です。
なのでそういう観点から、本文では具体的なノウハウを解説しています。
たとえばThat節や関係代名詞の使い方、抑揚の活用、会話に「フックをかける」という手法、「枕詞」、「慣用語」、「会話の逃げ道」、「フラッフ」などを参考にしていただければと思います。
繰り返しですが、他人がしゃべるより前にまず言葉を挟みこむ。
そして、あとは英語脳があなたの気持ちについてくるまで、上記のワザを使ってゆーーーっくり話す。
これが大切です。
───本書の執筆にあたって苦労されたことはありましたか?
また、それについて編集者やエージェントからはどんな指示・アドバイスがありましたか?
長野:英会話を戦略でやった本はほかにないので、“新しいものを生み出すこと”が苦労でした。
もともと私が企画としてあげたのは「英語勉強術」でしたが、編集者とエージェントとの協議のなかで、本書のようになりました。
例文ももっとたくさんありましたが、やはりみんなで相談し、例文は暗記するものではなく戦略を理解しやすくするためのツールという位置づけにして最低限に止めました。
───本書の発売後、周囲やネット上などで、どんな反響がありましたか?
印象に残る感想や意見などがありましたら、教えてください。
長野:日経BP社で、作家の奥野宣之さんが書評に取り上げてくださいました。
「英語公用語化”時代に生き残りたければ「自分の英語」を話せ」
このご意見、感想がとてもありがたかったです。
───ご自身の原稿内容を多くの方に理解していただくために、ご執筆の際にいつも注意していること、気をつけていることはありますか?
長野:書き直して、書き直して、また書き直し。
そしてようやく最後の書き直しにきたら、自分の魂を込めることでしょうか。
これは比喩ではなく、本当に魂を込めるんですね。もう、祈っちゃうんです。
「1ページでも読者の役に立ってくれ!」と。
そこでベストセラーになれなんて祈ったらだめです。
そういう作者の態度は、行間にすべて出てきます。
読者にはすべて見えています。
───次回はどんなテーマで執筆したいと思われていますか?
長野:大きく括れば執筆のテーマはいつも一貫して、「お世話になっている日本とアメリカ、この両国民の違いの中から両国民が学べるもの」です。
次は日本の若い女性に参考にしてもらいたいと、アメリカで働く女性の力強さについて書きたいんですが……。
エージェントからいつも「長野さんは男だから…」と敬遠されています(もう5年もの間!)。
でも、「YES」と言っていただくまで口説き続けるつもりです(笑)。
───最後になりますが、ビジネス書作家を目指す読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
長野:世の中の編集者はいつも“いいコンテンツ”を探しています。
そして、皆さんはすでに“いいコンテンツ”をお持ちなのではと思います。
ポイントは“料理の仕方”。
それについて、エージェントの方々にご相談されることは本当に尊いことだと思います。
本書は、作者の考えていた料理方法が、協議によってこんなにも変わったといういい事例です。
本は、皆で作るものだと思っているので、最後に付け加えさせていただきました。
今後とも、よろしくお願いします。
───本日はどうもありがとうございました。
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