書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:『英語は恥ずかしいほどゆっくり話しなさい!』(ダイヤモンド社)
ダイヤモンド社
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編集者:加藤 貴恵さん(ダイヤモンド社)
───英語に関する類書は数多く出版されていますが、今回、改めて英語をテーマにした本を手がけようと思われたのは、どんな理由があったのですか?
もともと英語や語学の分野にご興味があったのでしょうか?
加藤貴恵さん(以下、敬称略):私自身、英語はとても苦手でして(笑)。
英語に対し拒絶反応というか、難しいものだという固定概念がありました。
でも、長野さんからいただいた企画書を拝読し、実際にブレストをするなかで、私が今まで思っていた「英語とは難しいもの」という概念が、いとも簡単に崩れていったのです。
これは面白い本ができるなぁと確信しました。
───今回の企画を最初にご覧になった際、どんな点について、数多い類書との差別化が可能だと思われましたか?
また、今回初めて英語に関する本を書くことになった、著者の長野慶太さんについては、どんな印象をお持ちでしたか?
加藤:まず、日本人に「ゆっくり話す」なんて発想はなかなかできないですよね。
長野さんご自身が米国で苦労し、そして体感した中で編み出したオリジナルの手法というものにすごく興味を持ちました。
「これだけ覚えれば英会話は大丈夫」「耳を鍛えればОK」と謳う本が多い中、「英語はそんなに簡単なものじゃない」というご自身の考えをベースに、「それでもこれだけのコツさえつかめれば、英語はもっと楽しくなる」と解く長野さんの真摯な姿勢にも感動しました。
本を読んでいただければ、長野流の軽快な語り口のなかに、そんな心配りが散りばめられていることを感じていただけると思います。
───長野さんが初めに出した企画は「英語勉強術」だと、ご本人に伺いました。
それが、担当エージェントと編集者の加藤さんとの打ち合わせを重ねることで、最終的に「英語を話すための戦略術」になったそうですね。
その背景を編集者の視点から教えてください。
加藤:そうですね。最初にいただいた企画書は勉強術でした。
しかし、それじゃ類書との差別化が難しい。何か新しいインパクトが必要です。
今回の企画は、最初のミーティングで長野さんが「日本人は英語を早く話そうとするからダメだ、もっとゆっくり話したほうがわかりやすいのに」とおっしゃったことがはじまりでした。
そのとき長野さんが例として話してくださった英語が、本当にびっくりするぐらいゆっくりで(笑)。
でも米国では「ごく普通だ」と聞かされたとき、「じゃあ、それ1本で行きましょう」ということに。
「そんな本、これまで見たことがない。面白い!」と思ったのです。
───本書の「スロー・イングリッシュ」というスキルは著者の長野さんオリジナルの新しい考え方ですが、その内容を書籍のなかで紹介するにあたって、工夫された点や苦労された点、執筆にあたって長野さんにアドバイスをされた点があれば、教えてください。
加藤:正直、編集者として苦労した点はありません(笑)。
著者として長野さんが苦労した点はたくさんあったかと思います。
というのも、今回は第1稿を頂いてから、大幅に文章を削除したり、並べ変えたりしています。
読者はまずタイトルの「英語は恥ずかしいほどゆっくり話しなさい」のインパクトで、「何?」となるわけですよね。
で、本を開いたときに、即その答えが知りたい。
だから今回は極力肉をそぎ落とし、ノウハウ満載の本にしようと思いました。
即座にその趣旨を理解してくださり、執筆してくださった長野さんの著者としての懐の深さに本当に助けられました。
───数ある英語学習本は横書きや例文が多いのが特徴ですが、本書はあえて、“戦略本”として縦書き、例文は少なめです。
表紙のデザインなども含め、編集者としてこだわった点を教えてください。
加藤:これは正直、私の好みが多分にあると思います。私のように“超初心者”の場合、書店で本を開いた瞬間に、英語の例文がたくさんあったり横書きだったりすると、その時点でもう「難しい本だ」と判断してしまうんですね。
ただ、縦書きか、横書きにするかは最後の最後まで迷いました。
でも、長野さんの語り口は横書きよりも縦書きのほうがすんなり入ってくるんです。
縦書き、横書き、両方プリントアウトして読み比べても、長野さんの文章には、縦書きが合う。
確かに、英語の本としてはかなり挑戦でしたが、そのぶん読み物としても面白い本になったと思っています。
───タイトル、書店での売り方などは、どのような工夫をされましたか?
また、この本を告知していくにあたって、どのようなことを実施されていますか?
その反響なども併せて教えて下さい。
加藤:タイトルは、そのままずばり!です。本の主旨を変にこねくりまわすのではなく、伝えたいことをストレートに伝えることに。
その思いをデザイナーさんに伝え、装丁のイメージも余計な飾りはなく、タイトルが瞬時に目に飛び込んでくるデザインにしてもらっています。
書店の売り場に何度も足を運び、数ある英語本の中で目立つためにどうすればいいか悩んだ結果、あのカタチになりました。
先日、実家に帰省した際、本棚に置かれていたこの本を、たまたま手にして読んだ従兄弟が「すごく面白い!」と。彼も会社で英語を使わなければいけなくなったようで、すぐにAmazonで買うと言ってくれました。
「こんな本があるって知らなかった、もっとプロモーションするべきだ」と叱られたばかりです(笑)。
───加藤さんは、普段企画を考える際、どんなことを大事にされていますか?
特に今回のように類書の多いテーマの場合はどんなことに気をつけていますか?
また、今後手がけてみたいテーマがあれば、教えてください。
加藤:企画を考える際に大事にしていることは“自分が知りたいこと”でしょうか。
いま興味のあるのは“健康”や“ダイエット”の分野ですね。
やっぱり知りたいんです、自分が。自分が知りたいことは、他の人も知りたいと思っていると、勝手に思い込んでいます(笑)。
───「一緒に本をつくってみたい」と思う著者はどんな人物ですか?
加藤:「伝えたいことがある人」と、一緒にお仕事をしたいと思います。
以前、ある著者と話しをしているときに「私は伝えたいことがいっぱいある」とおっしゃったんです。
それを聞いて、編集者の仕事はそれを本という形にして読者に届けることだなぁと思いました。
そんな著者さんはいろんなアイデアがあるし、こうしましょう、これはどうですか?と前向きなご意見をいただくことが多いです。
───本作りにエージェントが関わるメリットにはどんなことがあると思われますか?
加藤:仕事がスムーズに運ぶということは大前提ですが、著者と編集者だけでは思いつかないアイデアや方向性を、エージェントの方々からいただくことも多いですし、たくさんの本を見ていらっしゃる分、引き出しも多い気がします。
それで助けられていることも、多々ありますね。
───最後になりますが、ビジネス書作家を目指す読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
加藤:人とは違う方法、人生、考え方がある人ならどんな人でも作家候補だと思います。
あとはそんな素敵な素材を、どういう形で料理するか。
今はどんな人にもトビラが開かれている時代。
伝えたいことがあって、それが1人でも多くの人の人生を変えることができると思われるなら、どんどん行動に移すべきだと思います。
あとはエージェントや編集者という料理人と出会い、化学反応が起これば、ベストセラーも夢ではないと思います。
がんばってください!
───本日はどうもありがとうございました。
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