書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:『だから、僕らはこの働き方を選んだ』(ダイヤモンド社)
だから、僕らはこの働き方を選んだ 東京R不動産のフリーエージェント・スタイル
ダイヤモンド社
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著者の1人:林 厚見(はやし・あつみ)さん
株式会社スピーク共同代表、「東京R不動産」ディレクター。1971年東京生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。マッキンゼー・アンド・カンパニーにて経営戦略コンサルティングに従事した後、コロンビア大学建築大学院不動産開発科修了。不動産ディベロッパーを経て、2004年に吉里裕也氏と株式会社スピークを設立、現在共同代表。「東京R不動産」では、主に事業面のマネジメントを担い、ほかに不動産の開発・再生における事業企画・プロデュース、新規事業開発、カフェ・宿の経営などを行う。
株式会社スピーク:http://www.speac.co.jp/
東京R不動産:http://www.realtokyoestate.co.jp/
───「東京R不動産」は、“東京で一番「面白い」不動産屋”という評判もある、ユニークな物件紹介サイトですが、今回、「働き方」についての本を執筆しよう、ということになったのはどうしてですか?
林 厚見さん(以下、敬称略):アップルシード・エージェンシーの鬼塚さんから、「東京R不動産」のユニークな組織やビジネス、ワークスタイルについての本を出したらどうかと言われたのがきっかけでした。
本業自体の話ではなかったので実は少しためらったのですが、ビジネスマンや若い人たちに伝えられることもあると思ったこと、そして僕らにとっても新しい出会いにつながれば、という思いもありました。
───サブタイトルにある“フリーエージェント”といえば、ダニエル・ピンクの著書、『フリーエージェント社会の到来』を思い起こす人も多いと思いますが、みなさんが実際に実践し、そこで得られたこの働き方のノウハウや経験を「書籍」の形で伝えることで、読者にどんなメッセージを伝えたいと思われましたか?
林:実はダニエル・ピンクの定義と我々のスタイルは少し異なります。
我々のはフリーランスと組織人の間、チームとして連携する自由なる個人というイメージ。
この本ではそのあり方とともに、仕事に対するスタンスや、僕らなりの人生観のようなものも織り交ぜて伝えようとしました。
───帯にある「やりたいことを、好きな仲間とおもしろく。自由で、充実していて、ちゃんと稼ぐ」という理想の働き方を実現するにあたって、みなさんが感じている大事なポイントはどんなことでしょうか?
林:「志を明確にすること」です。
それがあってこそ、好きな仲間が集まるし、壁にあたってもやりたいことを続けていける。
思いの根っこが共有できていれば、自由なチームでも回っていく、と考えています。
また、やりたいことや好きなことを仕事としてやっていくのは大変なことなので、たくましさや戦略も必要であるという信念もあります。
───不動産物件紹介サイトを運営する著者の「不動産本」ではなく「働き方本」をつくるにあたって、どんな点に気をつけられましたか?
また、その点について編集者やエージェントからはどんな指示・アドバイスがありましたか?
林:僕らはついつい建築や不動産の話に寄ってしまったり、「東京R不動産」のメインビューワーであるクリエーターたちに向けての話に偏ってしまいがちでした。
執筆途中で繰り返し、「誰に、何を伝えるのか」という問いに立ち戻るようにしましたが、それでも偏ったようで…。
よく指摘を受けました。
───「東京R不動産」のサイトは、デザイン面でもとてもこだわりを感じられますが、今回の書籍のデザイン面について、著者のお三方からはどんな希望がありましたか?
また、最終的に今回のデザインに決まったときの感想はいかがでしたか?
林:シンプルで美しく、それでいてどこかにエッジが立つようなデザインを希望しました。
具体的なイメージやアイデアは、スープデザインの尾原史和さんを信じお任せしました。
最終的には、全員一致の素晴らしい提案をいただきました。
───今回、3人の著者の共著というスタイルでの執筆にあたって、どんな点が難しかったですか?
共著という面以外での、制作中の苦労についても合わせてお聞かせください。
林:3人共著は、正直、すり合わせにかなりの手間がかかりました。
構成はスムーズにいきましたが、具体的な言葉やフレーズのレベルで「違和感がある!」「なぜだ!」といった会話は散々しました。
編集サイドの皆さんには本当にご迷惑をおかけしました。
ただ僕らは3人それぞれに別の視点を持っており、それが合わさることで今の働き方や仕事ができているので、必要なプロセスでした。
───本書の発売後、周囲やネット上なので、どんな反響がありましたか?印象に残る感想や意見などがありましたら、教えてください。
また、とくにどんな方に読んでもらいたいと思われますか?
林:就職の応募は増えましたね。
「サイトのことは知っていたけど本を読んで背中を押された」とか、「本を読んでまず仕事のスタンスに共感した」とか、さまざまな形で。
また、Facebookでの反響は身近でリアリティがありました。
───最後になりますが、ビジネス書作家を目指す読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
林:ふだん考えていることをより深く考えるいい機会になりました。楽しかったです。
本日はどうもありがとうございました。
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