書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。
書籍:『小さな会社と小さな自分を大きくする51のスキル』(アスペクト)
アスペクト
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編集者:小村 琢磨さん
───タイトルに「小さな会社と小さな自分を大きくする」とありますが、今回の企画は、読者のどんな悩みや問題を解決するような内容になっていますでしょうか?
小村琢磨さん(以下、敬称略):大きくくくると「いまのままじゃダメだ」という危機感をいつも抱いている人、小さくくくると、本書の51の項目の意味をひっくり返した悩みを持つ人です。
たとえば「1・半年で、名刺を1000枚配る。」という項目は、「半年で、名刺を1000枚も配れない。配ったことがない」という“悩み”に対する答えとなっています。
───今回紹介されている“51のスキル”のなかで、小村さんご自身が特に響いた、参考にしたい、と思われたものは、どのスキルになりますか?
またその理由はどうしてですか?
小村:「おすすめは何ですか?」と問われれば「全部です」と寿司屋の主人のような答えになりますが、たとえば「3・『ウィンブルドンをめざす』はウソにならない。」。この項目で著者の安藤竜二さんは「大学でテニス部に所属していた」という経歴を「ウィンブルドンをめざしてテニスに没頭」にすればいいと言います。
ウソではないし、大げさでも相手の目をひく、これが自己ブランディングだとも言っています。
このような「ささやかだけど、役に立つこと」が散りばめられているところが、この本の真骨頂だと思っています。
───本書の製作過程で、いちばん苦労した点、気をつけた点はどんなところですか?
小村:安藤さんの人柄、考え方がなるべく具体的に反映できる本づくりを目指したつもりです。
───著者の安藤さんは“ブランディング・プロデューサー”という肩書きでお仕事をされていますが、今回のテーマにおいて、安藤さんのどんなご経験やそこからのメッセージが読者に響くと思われましたか?
小村:たとえば「10・アポは、2週間後に入れる。」という項目で安藤さんは、忙しい人はなかなか会ってもらえないと言っています。
私などアポイントメントを断わられるとすぐ落ち込んで諦めてしまいますが、安藤さんは、ここからが違います。
断わられて落ち込みながらも、同時に「どんなに忙しい人だって2週間後の予定ならあいているんじゃないか?」とも考える。
しかも、その発想の転換でほとんどの人のアポイントメントを取ることができた。
つまり、諦めるな、へこたれるなと”高説”をふるうのではなく、ダメならこうしよう、落ち込んだらああしようと、どこまでも具体的なメッセージが込められているところが、この本のすばらしいところです。
───本書は表紙のデザインで、タイトル(「小さな会社と小さな自分を大きくする51のスキル」)が、その意味に合わせるかのように、文字が大きくなっていくのが印象的でした。
また、白地にタイトルのみでとてもシンプルだったのですが、このデザインにした背景を教えてください。
小村:デザインは、寄藤文平さんと北谷彩夏さん(文平銀座)です。
ビジネス書の棚は、カラフルで文字の大きな装丁の本が多いので、タイトルは内容と同じように「読み進むにつれて大きくなるように」、色使いは「まわりの本から目立たせるために、むしろシンプルに」を心がけました。
といっても、デザインはすべてお二人にお任せでしたけど。
───タイトル、書店での売り方などは、どのような工夫をされましたか?
また、この本を告知していくにあたって、どのようなことを実施されていますか?
その反響なども併せて教えて下さい。
小村:タイトルは「何もない」ところから仕事を始めた安藤さんのたたずまいを、ぎゅっと濃縮させたものです。
大言壮語ではなく、小さな会社にいても、小さな自分でも、明日から、今日から、いまからでも始められることがあるんだということが伝わっていれば本望です。
書店での売り方は、なるべく派手なビジネス書の横に並べてもらって目立たせたということでしょうか。
───普段、著者の発掘方法、企画のテーマを考えるときのポイント、アンテナの張り方、情報の集め方について、どんなことを意識されていますか?
小村:今回の企画は、アップルシード・エージェンシーの清水浩史さんが提案してくれました。
で、普段は、地道に著者を探しているだけです。
安藤さんの本をつくっておきながら申し訳ないですが、これといったスキルも近道も王道も、持ち合わせていません。
───本が売れないと言われて久しいですが、ご担当される本に関して、類書との差別化や店頭でのアピールなど、制作~販売において常に工夫されている、もしくは気をつけていらっしゃるポイントなどはありますか?
小村:書店の人たちにおもしろがってもらえる本をつくるようにしています。
───小村さんは普段どういったテーマの本を手がけていらっしゃいますか?
また、いま一番「つくってみたい」と思っているのはどんなテーマの本ですか?
小村:テーマというか、姿勢は「来た球を打つ」です。おもしろいものであれば、なんでもやりたいと考えています。
つくってみたい本は、できるだけ「しょんぼりした本」です。
わかりにくくて、すみません。
───「一緒に本をつくってみたい」と思う著者はどんな人物ですか?
逆に「こんな著者とは一緒につくりたくない」と思うのは、どんな人物ですか?
小村:おもしろい本ができるのなら、どんな人でもかまいません(そうでもないときもありますが、商売柄、それは内緒です)。
「つくりたくない著者」も、おもしろい本をつくる以上、一人もいません(そうでもないときもありますが、商売柄、これも内緒です)。
───本作りにエージェントが関わることのメリットにはどのようなことがあると思われますか?
小村:さっきから同じことばかりで恐縮ですが、私の想像を超える、おもしろい企画を出してくれることに尽きます。
───ビジネス書作家を目指す読者の方へメッセージをお願いいたします。
小村:私のように「小さな会社」で「小さな自分」のままでも、焦らず、無理せず、がんばってください。
本日はどうもありがとうございました。
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