PRと言っても、メディアリレーションやSNSやオウンドメディアやプレスリリース……、どんな手法を選んだらよいか分からない。そう悩む企業のPR担当者さんは多いのではないでしょうか。
2001年より「ネットPR」を提唱し、日本ではじめてニュースリリース配信サービスを作った、株式会社ニューズ・ツー・ユー。大手企業から起業したての小さな会社まで、数多くの会社のPRにおける課題を解決してきました。
ウェブを使ったPRのパイオニアとして豊富な知見を持つ、ニューズ・ツー・ユーの代表取締役社長 増田彰さんに、PR初心者がやるべきPRについて、伺いました!
今回の記事は、PRライター・ふじもとめぐみがお届けします。
部署を越えた協力を。PRとマーケティングの違い
───「PRとは」を検索すると、いろいろな答えがでてきます。貴社では「PRとは」どのようなものだと考えていらっしゃいますか?
増田彰(以下、増田):検索すれば出てくるようなこととは違うかもしれませんが、私たちが考えるPRは「より良い信頼関係を築いていくための姿勢」です。
PR本来の目的は、注目を浴びることではないんです。そのあと何が起こるのか、全体像を考える必要があります。ただ注目を集めても、会社のブランドの方向性とズレが生じていれば、マイナスになりかねません。
エッジが利いた広告を出したり、芸能人を起用したイベントをするのもいいのですが、「本当に会社の信頼につながるかどうかを考慮しましょう」という意味で「姿勢」と表現しました。
現場のマーケティング担当者が、代理店からの提案に対して「おもしろいからやりましょう」と採用したことが、社長に却下され、怒られるという話をよく耳にします。それは、社長のポリシーや会社の方針に沿った姿勢を示せていないことから起こっている問題ですね。
───マーケティング担当者としては、数字が求められるので、より注目される案を採用したくなってしまいますよね……。
増田:そうですね。マーケティングは、お客さまや売上など、しっかり数字を追っていかなければいけない部署です。一方で、PRでは「信頼」という数値化しきれないものを扱います。だからこそ、マーケティングとPRは、互いに協力し合って双方をアップしていくべきだと思っています。
例えば、PVを稼ぐためにいかがわしいサイトへ広告を載せたとします。マーケティング的には成功と言えるかもしれません。数字だけを追うのなら。でも、それを取引先が見たら、やはり信頼を損ねてしまいますよね。PR的には失敗と言えそうです。
一度マイナスになった信頼は、回復するのが難しいもの。さまざまな部署が、デジタルでいろんな施策を行える時代だからこそ、各部署で情報を共有して、大きなズレや間違いが生じないようにしてほしいですね。
デジタルPR時代、社員全員がPR担当者になろう
───デジタルといえば、ニューズ・ツー・ユー創業者の神原弥奈子さんが会社を立ち上げたのもインターネットの普及がきっかけだったと伺いました。PRの手法は溢れていますが、何から手をつければよいのでしょうか。
増田:そうですね。創業時は、まだインターネットが普及し始めたころでした。テレビや雑誌が売れている時代ですね。
当時、日本と海外のコーポレートサイトには明らかな違いがあり、それを分析した神原が「日本では情報発信をマスコミに任せすぎている」ということに気づきました。
海外では毎日自社で情報を更新していたんですね。そこで、自分たちでニュースを発信できるウェブ上のプレスリリースを作ろうということで、ニューズ・ツー・ユーができました。
今ではデジタル化がどんどん進み、手法の選択肢も広がっています。従来型のマスメディア、ウェブで情報発信をするニュースリリース、ソーシャルメディア、オウンドメディア……。
選ぶ際のポイントは、PRの根本となる「信頼」を「誰から得たいのか」を考えてしぼり込むことです。例えば、一言でSNSといっても、LINE、Facebook、Instagramなどいろいろありますよね。
すべてやるというのは、会社の規模が小さいほど難しいです。だからまずは、自分たちが信頼を得たい人がいるところで発信していきましょう。
───PR担当者は、やるべきことが多くて大変だと、よく聞きます。
増田:そうなんです。だからこそ、先ほども言いましたが、部署を超えて発信をするとよいですよね。広報部だけが情報発信するのではなく、現場のスタッフがそれぞれPRしていくのが理想的ではないでしょうか。
もちろん、その場合は全員が「会社としてどういう発信をしていくべきか」という統一された方針を把握していなければいけません。
今は、誰でもソーシャルメディアなどを使って発信できるので、たったひとりの個人が悪く言うだけで信頼を失いやすい環境になっています。一方で、みんなが統一して使えばよい情報が広まりやすいんです。
例えば、広報部が出した正式なリリースに対して、現場のスタッフがリツイートやコメントを入れて拡散するというのは、すごくいいことだと思っています。
「こういうことを始めました」「僕が担当しています!よろしくお願いします」など、お知らせしておくと、気になった人は声をかけやすいですよね。どんなきっかけでお仕事につながるかが分からない時代になってきていますから。
大手の真似はしないで! 小さな会社がやるべきPRとは
───まだPRをはじめたばかりの小さな会社では、どんなことをすればよいでしょうか。
増田:まずは、出せる情報をどんどん発信しましょう。大きなサービス開始などの情報でなくてもいいんです。例えば、社員旅行などで遊びに行った話が、採用につながることもあります。
「何かにつながる」かつ「プラスになる」と思えるものであれば、積極的に発信したほうがいいですね。
また、競合する企業がやっている施策の中で、問い合わせが多いと耳にしたものは、やってみましょう。一方で、根拠がなく事務的にやっているものなど、プラスになるかどうかわからないものは、止めたほうがよいと思います。
他にも、情報発信の際には「どういった面で信頼されたいのか」を考えるとよいですね。
人財が集まっているという部分なのか、CSRに力を入れているという部分なのか、クライアントの売上にこれだけ貢献しているという部分なのか……。それを考えてみてください。
───最後に、企業PRで大切にするべきことを教えてください!
増田:PRにおいては、「事実」いわゆる「ファクト」がすごく重要だと思っているんです。つまり、嘘偽りや誇張など、事実と異なることはダメですよねということです。
そのうえで、オリジナルのコンテンツであることが大切ですね。他社と同じこと言っていても意味がありませんから。だからこそ、部署を超えた情報発信をおすすめしているんです。
担当している部署のこと=自分の得意分野のことを、発信するのが一番いいですよ。現場の人が書くからこそ、熱量を持って伝えられる部分がありますから。
くり返しになりますが、PRで大事なのは「信頼」です。小さな会社のPR担当者さんなら、あまり大手の真似をせず、今まで付き合ってきたお客さんの信頼を増やすことを考えた情報発信から、まずは始めていってください。
インタビューを終えて
今回、インタビューを担当したふじもとめぐみです。
増田さんのお話を聞いて、PRが上手な企業が多くの人から愛される理由がイメージできました。
「あらゆる人からどう見えるのかイメージして、信頼を築くための行動をとる」
時代の流れによって手段は移り変わっても、そういったPRの根底にあるものが企業の長期的な成長に繋がっているのだと感じました。
わたしも、自社のサービスをPRするために地道な発信からコツコツと積み重ねていこうと思います。みなさんも、ぜひ実践してみてください!
(取材・執筆:PRライター ふじもとめぐみ)
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