趣味が仕事になったらいいな……なんて、叶わないと決めてしまっていませんか?実は、そんなにむずかしいことじゃないのかもしれません。
いまでは、趣味から始まったネイルを仕事にして、日本ネイリスト協会認定講師としてネイルサロン業務・講師活動をされている細野あいさん。
短期大学在学中にネイルスクールへ通学、当時はそれが仕事につながるとは思っていなかったそうです。
「好きなこと」を仕事にしていくためにどんなことを意識すればいいのか、そのコツをお伺いしました。
趣味からプロへ。海外生活を通して気づいた「日本なら何でもできる!」
───フリーランスのネイリストとして独立するきっかけについて教えてください。
細野あい(以下、細野):もともとネイルは趣味で、プロになろうと思っていなかったんですよ。ネイルスクールには通ったものの、語学を活かした仕事をしたいという想いでハワイへ2年間留学したんです。
でも、ハワイ留学中に息抜きで友だちにネイルをしてあげたり、ネイルが癒しだったんです。さらに、現地でネイルの先生と出会い、アメリカのネイル文化にも興味がわきました。
ハワイにいてもネイルはわたしにとって欠かせない存在だったんですよね。だから、「やっぱりネイルをやりたい!」と強く想うようになりました。
ハワイ留学もひと段落し、次の進路を考えるころには、ネイリストを仕事にしようって決めていました。そこで、そのままアメリカでネイルのライセンスを取ろうと思ったんです。
でも、外国人がライセンスを持てるのがニューヨーク州しかなかったということもあり、思いきってニューヨークへ移住しました。
ニューヨークでは無事にライセンスを取り、約2年を過ごしました。インターンで培った経験はもちろん、日本人として海外で活躍している人たちとのつながりを築けて、充実した毎日でした。
帰国後、大型店舗に就職したのですが、自分がやりたいことの方向性がハッキリ見える良いきっかけになりましたね。
それに、1人ひとりのお客さまに使える時間が限られるため、予約内容の変更や追加に対応できないことが歯がゆくて。そこでの経験が、以前から視野に入れていた独立に向けて前進する第1歩でした。
───フリーランスとしてやっていくことに不安はなかったのでしょうか?
細野:実は、不安はあまりなかったんです。わたしは直感ですぐに行動するので、不安を感じるよりも前に動いていましたね。
そもそもは、ニューヨークでそのまま働くことも考えていましたし、実際にフリーでの仕事も始めていました。
海外での仕事も経験したからこそ、日本人として日本にいるのであればなんとでもなる!と思えるようになりました。だから、日本での独立には不安が少なかったんです。
日本を選んだ大きな理由としては、海外での経験と語学を活かして、「アメリカと日本の良さを合わせたネイルを日本でやりたい!」と思ったからなんです。
それに、海外にいたからこそ、日本のネイルの素晴らしさを痛感していました。
アメリカではネイルは手先をケアするという身近な感覚ですが、日本はアートとしての要素がとても強いんですよね。
アートとしての丁寧さ、技術の繊細さ……日本のネイルは世界の中でもトップレベル。わたしがネイルを通して表現したいものは、日本にあるなって。
妥協しない、一緒に楽しむ。それが広告・宣伝いらずのヒミツ
───フリーランスになるための準備としては、どんなことをされましたか?
細野:まずは技術を磨くこと。特に、日本国内のネイル検定資格は種類が多く全部取得するには何年もかかるんですよね。受かるまでは何回でも受け続けると決めて必死で練習していました。
振り返ると、努力というより夢中で好きなことに取り組んでいたので、「苦労した」という感覚ではないんですけど。仕事としてやる以上、中途半端なことはしたくないという気持ちもありました。
今では、その甲斐があったと思っています。というのも、わたしは、お客さまに来てもらうために、広告や宣伝をとくにしていないんです。
ありがたいことにお客さまからのご紹介がほとんど。それから、リピーターのお客さまばかりなんです。
それは、技術や資格のおかげでもあるし、妥協しないネイルへの取り組み方、お客さまへの心遣いが伝わってくれているからだと思っています。
やっぱり趣味だけでは、お客さまはこない。お金をいただいている以上、絶対に満足して帰っていただくという意識を持っています。
お客さまとの信頼関係もすごく大事にしています。いろんな話をして、リフレッシュして帰ってもらえるとうれしいですね。
デートや結婚の話、会社の愚痴など、友だちに言えないようなことも、こういう場所でなら話せるという方もいて、それがすごくうれしいんです。
───お客さまと深い信頼関係を築いているんですね。何か工夫していることはあるのでしょうか?
細野:まずは、カウンセリングに時間をしっかり取っていることでしょうか。
お客さまがイメージしている色やデザインと、仕上がりが違うということがないように、お客さまの要望とこちらからの提案を実際に試して比較したりして、丁寧に対応しています。
わたしがネイルサロンに行ったときに、たとえば「ピンク」と言ってネイルしてもらったら、仕上がりのピンクがイメージしていた色と違って残念だった……というようなことが、何回かあったんです。
そんな経験をしているからこそ、お客さまがイメージしている色、デザインの伝え方に違いがあることを認識した上で、しっかりカウンセリングをして、満足して帰ってもらえるよう心がけています。
ネイルって毎日見るものだから、納得のいく仕上がりのネイルじゃないと!お気に入りのネイルだと、気分が上がりますよね!きれいなネイルを毎日みて喜んでほしいんです。
あとは、お客さまとの時間を大切にすること。ただネイルをするだけでなく、一緒に楽しむことも大事です。
ネイルの仕上がりを「かわいい!」って一緒に感動したり。恋愛話を聞いていたお客さまのウェディングネイルを受けるときなんかは、特に感動しちゃいますね!
好きなことは仕事にしない方がいい、なんて思わないで!
───ネイルが本当に好きなんですね!「好き」を仕事にしたいと思っている方へのアドバイスはありますか?
細野:好きだからこそ、努力もできるはず!わたしは子供のころから、好きなことに熱中するタイプだったんですよ。
やらないで後悔するより、「まずは何でもチャレンジしてやってみよう!」と思っているんです。だから、「好きなことを仕事にしたい!」と思ったらとにかく始めること。そして諦めず続けてほしいですね。
そもそも、ネイルのような美容業界は下積みや努力の時期が長いので、好きでないと続かないんですよね。
好きという気持ちがあってこそ、技術や知識を高める努力ができますから。わたしは、今でもセミナーや勉強会に参加して新しい知識を入れるようにしています。
だから、フリーランスになりたいと相談されると、「安定の保証はないし大変なこともあるよ」ときちんと伝えています。
ネイルで独立するといっても、働き方はいろいろ。どんな働き方を選ぶとしても、お客さまとの信頼関係はもちろん、技術を学ぶことがとっても大事なんです。
日々の努力が必要ですが、「好き」という気持ちと、諦めない強い心があれば絶対にできますよね!
───あいさんは、今でも努力されているんですね。今後の目標はありますか?
細野:これからもサロンにきてくださるお客さまに満足してもらうことですね。
それと、日本ネイリスト協会認定講師としては次のステップの本部認定講師試験を次回受験予定なんです。また、ネイルの楽しさと、正しい知識をもっと伝えていきたいという気持ちもあります。
ネイルだけでなく、物作り全般が好きなのでいろいろなことに興味を持っています。
今、フリーランスのネイリストとして使っている屋号が「ランタナート」なのですが、咲き始めてから色が変化して何色もの花が咲く「ランタナ」と「アート」を組み合わせたものなんです。幅広く創作できる「アトリエのような場所」にしたいと思ってつけた名前です。
なので、最近はアクセサリー販売もしています。これも趣味から始まっていますが、いまではハワイのお店に置いてもらったり、オンライン販売も始まったんです。
好きなことを夢中で追いかけて、突き進んでいればチャンスは巡ってくるんですよね。
「自分はこうするんだ!」と決めたときから運命は動き始めるはず。新しいことを始めようとしている方がいたら、迷わずチャレンジしてほしいですね!
インタビューを終えて
こんにちは。今回インタビューを担当させていただいたPRライターの山崎春奈です。
あいさんのお話を伺って、好きなことを仕事にしてもいいんだと背中を押された気がします。
自分の「好き」を仕事にするためには、趣味のような楽しさを持ちつつ、プロとしての意識や努力を人一倍することが大事だと感じました。朝まで熱中して作業してしまうくらい好きなことを仕事にして、フリーランスとして独立できたらとっても幸せですよね。
みなさんも夢中になっていることを仕事にするという道、諦めずに進んでみてくださいね!
(取材・執筆:PRライター 山崎春奈 / 編集:吉川実久)