数あるPR・マーケティング手法の中で「電子書籍」が、今、とても有効だということをご存知でしょうか。
Kindle日本参入以前より、いち早く電子書籍プロデューサー&マーケッターとして活動してきた梅田 憲嗣(うめだ のりつぐ)さん。2016年までに手掛けた書籍は100冊以上で、配信後1~10万ダウンロードを記録。
電子書籍の出版プロデュースで、さまざまなクライアントのファンづくりや長期的な売上アップに貢献されています。
電子書籍の第一人者として、雑誌などでも取り上げられている梅田さんだからこそ語れる「電子書籍を活用したPR」について、PRライター NATSUMI KOBAYASHIがお話を伺いました。
100人よりも「1人に」響くコンテンツがPRにつながる
───電子書籍を通した「PR」とは、どういったことなのでしょうか。
梅田憲嗣(以下、梅田):僕が、電子書籍を通してのPRで意識することは「読者とよい関係をつくる」ことです。
そのために、著者の方には「100人に好かれる言葉を使うのではなく、そのうちの1人を口説き落とすような感覚で書いてください」と、常々お伝えしています。
ラブレターを書くような感覚ですね。そうすれば、その“1人”に当てはまる読者に届いたとき、かならず著者のファンになりますから。著者からすると多くのお客さまの1人かもしれませんが、読者からすると著者はたった1人なんです。
無数にある本のなかから読者が自分の本にたどりつき、読んでくれる確率は奇跡的だと思うし、さらにそこからファンになってくれるのは本当に恵まれたことです。
それを忘れずに電子書籍も書いてほしいし、その後も、たとえばメルマガを登録してくれた方がいるなら「1人のためのメッセージ」を考えながら定期的に情報発信をしていってくださいと、著者の方には伝えています。
───「1人の人」に向けた書籍とは、どのように作り込んでいくのでしょうか?
梅田:まずは、著者の商品を求めているお客さまはどんな人なのかを深ぼりします。これまでのお客さまはどういう悩みをもっていたのか、その悩みをどう解決してきたのかなどを聞いていきます。
そのお悩み解決までの流れを本のメインコンテンツにするのです。読者が悩んだり迷ったりしたときに、書籍を手に取って「これこそ、わたしの求めていた情報だ!」と思ってもらうことを目指して、読者設定を細かく決めます。
それが読者からの信頼につながるポイントなんです。読者が満足してくれるからこそ、著者のサービスの売上アップにつながります。
すると、僕たちもまた著者の方から依頼してもらえるんですね。そんな風に、読者・著者・僕たち、三方よしの関係をつくっています。
雑誌やテレビ取材にもつながる。紙ではなく電子書籍ならではの特長
───電子書籍は、ファンづくり以外にどんなことが期待できるのでしょう。
梅田:電子書籍は「最短でブランディングできるツール」でもあります。電子書籍でファンが増えれば、口コミから雑誌やテレビから取材オファーがきたり、Webメディアに取り上げられたり、さらにチャンスが広がるんです。
僕たちのサービスは「読者視点」を大事にしています。読者が本当に求めていた“情報”を届けるからこそ、読者がファンになってくれる。
そして、ファンになった読者が継続的にポジティブな口コミを自然と発生させてくれます。そうしてファンのSNSなどで話題になっていると、メディアも取り上げやすいんですよね。
すると、広告費を最小限に抑えることができるし、長期的な売上アップにもつながりますよね。つまり、電子書籍が著者の事業を長続きさせる「入口」の役割をしているんですね。
───なるほど。電子書籍は紙の書籍とどう違うのでしょうか。
梅田:紙書籍は、しっかりと「知識」を与える役割ですが、電子書籍は、情報への「興味」を与える役割として考えています。さっき伝えたように「入口」の役割が大きいでしょうか。
電子書籍って、スキマ時間にスマホやタブレットで読むものなので、読者は小さい画面でたくさんの情報を読むと疲れてしまいますよね。
だから読者にとっての手軽さを追求して、1章はだいたい5~10分で読める長さにします。通勤中の電車1駅分以内に読めるくらいですね。
本全体のボリュームについても、だいたい30分~1時間で読めるように、2万文字程度のライトなものが効果的です。
「もっと情報が欲しい」と思った読者の方には、ブログ・YouTube・メルマガなどに登録してもらうよう促すことで、中長期的なPRに大きく貢献してくれます。
YouTubeなどに比べて、まだまだ競合が少ないのがポイント
───個人と企業、それぞれどのように「電子書籍」を活用すればよいのでしょうか。
梅田:僕が手がけた著者の中には「電子書籍をきっかけに、テレビ局からの取材をうけた」「出版社からのオファーをもらって、紙書籍を出版できた」といった方が多くいらっしゃいます。
個人で活用するなら、格段に信用が上がることで次の仕事につながる可能性を秘めているので、とても魅力的なツールだと思いますよ。
企業の近年の活用事例としては、政府の機関や大手のゲーム会社なども電子書籍を出しています。電子書籍は、ブログやYouTubeなどと比べて、まだまだ活用している企業が少ないので、競合相手が多くありません。新しい市場として、注目されているフェーズだと感じていますね。
会社を立ち上げたばかりの起業家の方や、新サービスを広めたい、もしくはよいPR手法を探しているような広報担当の方など、どんな状況の方にもおすすめです。
───より成果を出すために、どんなことをすればよいでしょうか。
梅田:新しい読者と出会いたい場合は、ランキング上位を狙うのもひとつの手ですね。その場合は、時代のトレンドを読み、市場にあわせた企画を提案します。
また、ランキングではなく検索経由で見つけてくれた方は、ほかの書籍と比較して、しっかりと選ぶはずなので、その方が求めているものにマッチしている内容であることを伝えるため、書籍の説明文にしっかりと情報をのせるのも大切です。
1冊だけではなく、いろんな切り口で何冊か発信していくのも大切です。
読者が「この著者の本、面白かったな。ほかの本も読んでみたい!」となったときに、種類が豊富なほうが、たくさんの情報にふれることができます。読者と接する時間が長ければ長いほど、ファンになってもらえますから。
このように、電子書籍は個人や企業のPRの入口として、とても活用しやすいものなんです。ぜひ、なかなかPRの成果があがらない個人の方にも、企業の担当者の方にも、検討していただきたいですね。
インタビューを終えて
ファンづくりの入口としてだけでなく、長期的にファンで居続けてもらうためのツールとしても活用ができる、という電子書籍の魅力を余すことなくお伝えいただきました!
梅田さんの、PRの本質である「長期の信頼関係をつくること」に対する強いこだわりが、著者さんの事業拡大に大きく貢献されているカギなのだと感じました。
これから事業やサービスを始める方だけでなく、もっとお客さまに口コミをしてもらいたい!ファンを増やしたい!という個人や企業担当者の方、ぜひ電子書籍を1つの選択肢として取り入れてみてはいかがでしょうか。
(取材・執筆:PRライター NATSUMI KOBAYASHI / 編集:PRライター Erina Jenna.H)