仕事を行う上で信頼関係を築けるかどうかで、仕事の進めやすさ、アウトプットの質が変わってきます。
信頼関係を深めるために、私が心掛けているのは、当たり前ですが、スキルの向上とホウレンソウ(報告・連絡・相談)といった基本をしっかりと行うこと。そして自分に何が求められているのかを知り(立ち位置も含む)、日々のやり取りに反映するようにしています。
何を求められているのかは、相手に素直に聞くのが一番ですね。でも本音が見えないことも……。そんなときは、ちょっと心に引っかかった言葉、褒められた内容に注目してみるのはいかがでしょうか。3つの例をご紹介します。
「外注を使う」という表現をどう解釈し、仕事に活かすか
フリーランスに仕事をお願いしていることに対して、クライアントにより使う表現が「外注を使っている」「外注さんにお願いしている」「○○さんにお願いしている」と少しずつ違います。
こうした言葉が自分に対して直接向けられることは、あまりないと思いますが、意外と耳にする機会があるものです。自分以外のフリーランスに対してだったり、複数人での打合せのときだったり、Webサイトでの言葉、資料の中での表現であったり……。
これらの言葉は、潜在的な意識の差が出る表現の一つのように思います。一方で相手のスタンスの問題ですから、それに対していろいろと考えたり、傷ついたりするよりは、こういった言葉をヒントに相手とのかかわり方を考えるのが得策です。
個人的な印象として次のように解釈しています。
外注を使っている
「使う」という表現から、立場的に優位に立ちたいのかなと感じます。
だから相手を立てて仕事を進めると、スムーズに事が進む傾向があります。上から目線の意見は禁物。同じ伝えるにしても、相手のプライドを保ちつつお願いする形がベターです。
外注さんにお願いしている
「使う」から「お願い」になると、対等な立場で仕事を進められそうだと感じますね。
ただ「外注さん」という表現を使うあたり、社内の人間と社外の人間を大きく意識されているのだろうと推測します。踏み込んではいけない領域がありそうなので、境目をしっかりと意識した上で仕事を進めていくのがいいでしょう。
○○さんにお願いしている
パートナー的な立場を期待してもらえているのであれば、嬉しいですね。
相手の様子を見つつ、自分の考えも積極的に伝えていきます。信頼関係が深まってくると、社内での進め方を相談されるケースも。物事が進まない原因が内容ではなく、上司の説得にあるなんて話が出てくることもありました。自分は社内の人間ではないので、一歩引いたところから客観的な視点を持って、考えを伝えるようにすると喜んでいただけることが多いです。
仕事で成果を出すためには、相手とのコミュニケーションが欠かせません。できるだけ話を聞きたいですし、本音を聞きたいです。だから話をしてもらいやすい人になりたいと思っています。そのために自分ができるコミュニケーションの工夫が、相手にとっての自分の立ち位置を見極めて対応していくといった方法なのです。
求人票にあった「主婦の方歓迎」の本当の意味
求人を出すときに必ずといっていいほど、「主婦の方歓迎」と入れる方がいました。募集しているのは、経理や秘書。主婦かどうかは関係なさそうに思えます。でも雑談をしているときに、主婦を求めている理由に気付きました。
「どんなに髪を切るのが上手なヘアサロンでも、予約が多すぎて自分が行きたいときに行けないのは嫌だ」とおっしゃっていたのです。
とてもお忙しい方なので、打合せなどのスケジュールを自分に合わせてくれる方を求めているのでしょう。だから時間の融通がつきやすいであろう「主婦の方歓迎」だったわけです。
そういう意図が分かると、自分が相手に打合せのスケジュールを連絡する際に複数の候補日をお伝えしたり、長期で不在にするときは早めに伝えておき、前後で打合せを設定できるようにしたり、当日にスケジュールが変更になっても対応できるように心づもりしておいたり、できることがありますね。
同じ「主婦の方歓迎」という言葉であっても、求めているものはクライアントによります。他にも「初心者歓迎」とかも似たような感じで、クライアントによって真意が異なるでしょう。こうしたクライアントさんに聞くほどではないけれど、何かひっかかるなと思ったことがあれば、ちょっとメモしておくと、あるときに「こういうことか!」と気付きがあると思います。
褒められたこと、感謝されたことを繰り返す
お付き合いが始まって浅いうちは、どうやって関係を深めていくといいのか難しいですね。そんなときは、相手に褒められたこと、感謝されたことを、とにかく意識します。大なり小なり、相手の役に立てたことであり、自分の魅力なのだと思うから。
「分かりやすい文章ですね」と言われたら、その点に特にこだわる、「メールの返信が早くて助かります」と言われたら、いつも早めの返信を心掛ける、といった感じです。そういうことをやっていると、徐々に信頼関係が深まっていくように思います。
あとはもう一つ。クライアントもさまざまで、いつも褒めてくださる方もいれば、そうではない方もいます。
褒めないタイプの方の場合は、相手の行動を真似るのもおすすめです。自分がやっていることを相手に求める方は多いような気がします。チャットでのやり取りでも「○○様 お世話になっております」と始める方には、自分も同じようにしたり、返信が早い方には早めの返信を心掛けたり。メールの書き方も箇条書きを好む方には自分もそのようにしたり。
そして、たまにこのタイミングなら失礼にならないだろう(急ぎの返信が必要なときなど)といったタイミングで、例えば「○○様 お世話になっております」の定型句を外してみるのです。それで相手から定型句が消えたら、そのままにちょっとラフなやり取りを進めますし、やはり入れたほうが良さそうでしたら、入れた形で進めます。そんなことをしながら、相手との心地よい関係を探ることが多いです。
お付き合いが始まったからには、好き嫌いとか、自分への態度がどうかとかよりも、今回紹介したようなことも含めて、自分にできることをコツコツと取り組み、成果につなげていきたいですね。