網目よりも小さいものが流れ、大きなもののみが残る「ザル」。
一方で、大きなものは転がり落ち、小さなものだけが吸い込まれ、何かのきっかけがあると溢れ出す「スポンジ」。
フリーランスとして歩んだ私の30代は、まさに「ザル」から「スポンジ」に大きく変化した10年間だったように思います。
30代前半までは「ザル期」
学生を終え、そのままフリーランスになり、「仕事をしたい!」一心で過ごした20代。長女が生まれ、プライベートは充実していたものの、求めているほど仕事がなく、自分はどう生きていくのか不安や焦りの方が大きかった時期です。
マネジメント業務が増え、仕事にやりがいを感じた時期が30代前半。とてもやりがいのある大きなプロジェクトのマネージャーを担当させていただきました。これまで経験したことがないほど大所帯のチーム。
ザルでキャッチした一番大きなものが、この業務です。これまでの実績をかっていただいての抜擢というよりも、運が大きかったと私は思っています。
身の丈以上すぎる業務に取り組めたのは、やはりザルだったからでしょう。
能力が足りないわけですから、細かいところにこだわっていたら、パンクしてしまいます。本当は気付かずに流しては良くないのですが、流せたから無事に務め上げることができました。ザルからこぼれ落ちたものを拾い上げ、必要に応じて投げ返してくれたり、フォローしてくれたりといった素晴らしい仲間が傍にいてくれたのは大きかったです。
この時期は、仕事そのものだけでなく、インプットの方法もザル方式。
インプットは、仕事仲間からと書籍が主。技術的なことはもちろん、「リーダとは」「チームで成果を出すには」といった仕事上での役割に関することまで、よく本を読んでいました。知りたいことがあると、
似たような分野の本を3冊ほど買ってきて、一気に読み解を見つけるといった読み方です。1冊の本からだけだと、得られる情報が少なく量を求めていたのだと思います。
小さな気付きはザルの目から落ち、大きなものだけが引っかかるといった状態だったのでしょう。
30代後半は「スポンジ期」
ちょうど35歳ごろ、私は燃え尽き症候群のような状態になり、立ち止まっています。
結局1年以上かけて、特定のクライアントとばかり仕事をする状態から、新たなクライアントと出会いを作り、ひとりのフリーランスとしてしっかりと自立できるよう動いた時期です。
そして、この頃から、さまざまな面で気付きが増えました。スポンジに一滴の水が落ちる、そんな感覚。
本はもちろん、ツイッターをはじめとしたSNSからの学び、クライアントとのやり取りの中での学び、どれも大きな何かというよりは、「こんな考え方もあるだ」といった気付きばかりです。
また本を読むスピードが遅くなりました。少し読むと、自分の過去の経験が呼び戻され、こういうことか!と気付くの繰り返し。
昔は、本は1回読めば十分と思っていたのが、今は、読み終わったときに「もう一度読みたい」「今度はノートを片手に読みたい」と思うことが増えました。
気付きのどれもが、それ一つで行動を大きく変えるものではなく、あるとき、貯まったものが合わさりグーっと絞りだされるといった感じです。
日々コツコツ取り組んで、スポンジにいっぱい貯めておくと、「こんなことやってみない?」と誘われたり、何かきっかけがあったりすると、ドワーっと中身が噴出します。
逆に、身の丈以上のものが落ちてくる感覚は少ない30代後半でした。
ザルもスポンジもどちらが偉いなんてことはない!
本をたくさん読めなくなった時期、これも老いなのかなと正直思いました。徹夜が堪えるようになりましたし、気力で押し切るパワーがなくなってきたのも感じていましたから。私はまだ半人前なのに、「どうしよう」と不安もありました。
でも、40代突入まで2カ月を切った今、振り返ると、ザルの状態の自分も、スポンジの状態の自分も優劣つけがたいと思います。成功への近道はどちらというのもないような気がします。ザルも悪くない、スポンジも悪くない。
むしろ、ザルとスポンジは自分で積極的に選ぶものではなく、今はこういう時期なんだと知ることが大事なのだと思います。
今、ザルだと思えば、積極的にザルの目に引っかかるものを拾いにいくことが必要かもしれません。
一方、スポンジのときは、日々コツコツと気付きを貯めていく時期。そういうときは焦ってしまうこともあると思いますが、貯めたものが融合され、何かのきっかけで一つの大きな塊となり出てきます。だから気付きを貯めることをやめないでほしいです。
40代は変化を恐れず、しなやかに生きていければと思います。